連載小説 星のクラフト 8章 #2
「どうして司令長官はフェイクのオブジェを貸してくれたのか」
ランはオブジェの屋根を指先で撫でる。
「本物はもう誰も触れられない場所に置いたのではないかな。次元移動により発生した、重要で、不思議なオブジェなのだから」
ナツはやや冷かした口調で言う。
「どこから、来たんだろうね、あのオブジェ」
「確か、我々地球人の想念上のものが、立体化したと言ったのではなかったか」
ナツはワイングラスの柄を持ってくるくると回し、香りを嗅いだ。
「僕が製作員たちに、旅の目的は《帰還》すること