見出し画像

愛すべきはラーメンおじさん

あれ???今日はラーメンじゃないんですか?
初めて僕から話しかけた!!
え!!
君は尖った歯を見せてニヤケていたけど、僕には君が驚いてた様子をしているのはわかったよ()
君がいつも、自家製の握り飯とカップ麺を昼飯にしていることは僕にはわかっているんだ。
でも今日は違ったね、
電子レンジでパスタを温めていたね
コンビニで買ったパスタかな
電子レンジの前に立つ君に僕は話しかけた
今日はラーメンじゃないのか?って
僕はニヤニヤして聞いたよね
君も僕のニヤニヤに応え、俄然ニヤニヤし始めたよね
最近ランチタイムのとき、君が僕の隣の席に来てくれることもわかっているんだ
君が僕の薄い反応にもめけず、僕に明るく話しかけてくれた、
うれしかったよ
その努力がようやく実った瞬間だよね、
なんと今回は僕のほうから話しかけた!
君がラーメンが好きなのも知ってるんだ
君が他の人とラーメンについて話している会話を盗み聞きしてたからね
だからラーメンを入口に君に話しかけるのは易しかったんだ。
偶然だけど僕もラーメンは好きだ。
だけど君はまだ僕がラーメン好きなのは知らない、
今回の会話では僕がラーメンに対して好意的なのは伝えてない
あえて伝えてないよ
これから楽しみだなぁ
僕と君とは今度ラーメンについて脂ギッシュに語り合う仲になるんだからね。 
うん、
僕はしつこく聞いたよね、
なんで今日はラーメンじゃないのか?って
そうしたら君は懸念点を僕に伝えてくれたね
沸騰したお湯を出すのに時間がかかるんだって
そうだよね、
お湯が出る機械があるけど、
通常の温度設定は、飲むのに適した少しぬるめの温度になっているんだよね
カップ麺はこのままの温度じゃいけない。
だから、乾麺を柔らかくするために必要な高温度にするには少し時間がかかるんだ。
悲しいことに、温度を上げている間は他の人は使えない。
もちろん、君はわかっている。 
わかっているからこそ!
今回、君は電子レンジを使ったんだ
君は周りのことを気遣える頭の良さと優しさを持っているよね
もしカップ麺にしちゃうと、
君が大好きなラーメンのために、他にランチタイムする人の時間を奪うことになるんだよね
僕は感動したよ
「ラーメンのためには他の犠牲も厭わない」
なんて暴力的な理想は君にはないんだね
君の平和的で善良なる脂求心に僕は胸打たれたよ
ラーメンを食いたいという強欲な人間がそれに勝る他への配慮をするんだから
僕は君の紳士的なラーメンイーターの背中を見て
恐れおののいたよ
全身全霊敬うべき存在と認定したよ
でもニヤニヤしちゃったよ
ごめんね
パスタという麺類妥協をみたからね 
君は日々さ、200円くらいのカップ麺を望んで過ごしていたのに、他人のために500円くらいのコンビニのパスタに変更するんだ。
モチモチとスルスルとしたわかりやすく損する自己犠牲を僕は見たんだよね。
そんな財布が軽くなる損よりも隣人への愛を選ぶ慈愛を君は持っているんだね
君の慈愛の重さは何kgだろう、、、
僕はそんな真心のこもったサクリファイスを感じた瞬間つい君を抱きしめたくなったよ。
だから今回僕から話しかけたんだ、
ラーメン好きですよね!
君はこう言ったね、
俺はビールとラーメンでできてるから!って
そんとき僕はふーん、と軽く受け流したけど、
実は感銘していたんだよ
そんな悠々と人に言えるアイデンティティの一つであるラーメンを、他人のためにやめれるなんて!
僕は君に敬意を表したいよ
僕が君に向かってニヤニヤすると、
君は、何ニヤニヤしてんだ!と
声高にツッコむよね
僕はそのやり取りがとてつもなく温かいんだ。
おそらく君もこのやり取りが不快なものではないんだろう
僕にはわかるよ、
君の尖った歯を見れば
僕はさ今後も君にニヤニヤすることを誓うよ
ここにね、
あーめん

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?