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流域思考は国境を超えて【JOCV Day27】

ヨルダンの英字新聞「ヨルダンタイムズ」にて流域思考に関する記事が掲載されました。

“Water does “not follow boundaries set by humans”..., most water-related information is collected at a watershed or sub-watershed scale,...”
“水は人間の定めた境界(行政区分)には従わない...水に関わる情報は流域、小流域の区分で収集するべきだ(著者による翻訳)”

Water woes pushing Jordan close to ‘Day Zero’ scenario — experts
By Johanna Montanari - Aug 08,2019 - Last updated at Aug 08,2019

「流域思考」についてはほぼ日刊イトイ新聞のイベントレポートを参照いただけると嬉しいです。ここで紹介されている、神奈川県三浦市にある小網代(こあじろ)という地域で、流域思考による自然管理に約2年間、ボランティアとして携わらせていただきました。

イベント「活きる場所のつくりかた」岸由二さんのおはなし
「小網代は、流域思考で自然をまもり、地球の危機も考える」

HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN ホームページより

ヨルダンでの水問題は10日目に紹介しました。首都アンマンでも水道が稼働するのは週50時間。限られた水を有効に活用するためには、大地に降った雨がどこの川に流れるのか、どの範囲内に降った雨がその川に流れるのかを考える、つまりは流域思考で考えることが必要です。大地に降り注ぐ水は重力の法則に従って高いところから低いところに流れ、多くの場合は川に行きつきます。川は上流から下流に流れ、多くの場合は海に注がれます。水の動きに沿った地図、すなわち流域で区分した地図を持って水の管理を考えることが大切なのです。

ところが昨今の水管理の大半は人間が独自に定めた境界、つまり行政区分で考えられています。このため上流の地域行政は下流のことは考えず、下流の地域行政は上流のことは考えない、といったことがしばしば起こります。川に集まる雨が降り注ぐ大地の範囲を眺めながら対策を打つことが最も合理的であるはずですが、人間が独自に引いた境界線がこれを難しくしています。

複数国をまたがる国際河川の多くで上述した困難に直面しています。ヨルダン川の場合、北にレバノン、シリア、東にヨルダン、西にパレスチナとイスラエル、南にエジプトと複数国を流域に含んでいます。水不足が恒常的な中東地域ではこの川が生命線であり、川の利用を巡って対立が起きています。

他国と流域を共有していてない日本も他人事ではありません。むしろ河川の氾濫が毎年のように起きている日本こそ、流域思考が根付くべきなのです。

8月22・29日号の女性セブンで豪雨被害と流域に関するの記事が掲載されています。2015年9月に鬼怒川の大氾濫、大量の雨が降ったのは上流の栃木県ですが、氾濫が起きて被害が拡大したのは下流に位置する茨城県です。栃木県で雨が降っているから茨城県は大丈夫、という話では無いのです。

「ハザードマップは都道府県や市町村といった行政区域単位で出されているが、水害は人間が作った区切りなど関係なく乗り越えてやってくる。」

女性セブン2019年8月22・29日号
豪雨による水害 降った場所だけでなく「流域」も危険

行政区分を超えて、世界中のあらゆる人が流域思考で水の管理を考える。そして水が育む自然の営み、生きもののにぎわいも、流域思考で考える。そんな日が訪れる日を夢見て、来月からヨルダンの水を支える大動脈であり、ヨルダン川の東側最大級の支流である、ザルカ川流域での活動が始ます。


P.S. イードの4連休が始まった。ドミトリーでの夕食は当番制となっているのだが、この連休は各自で食べることになっている。朝は昨日のスープの残りを食べ、昼は卵焼きを作り、ここまでは良かった。どういう訳かジェノベーゼを作ろうと思い立ち、バジルを買ってきたのだが、ミキサーが無かったため、刻むのに1時間近くかかった。一緒に生活している隊員の助けも借りることとなり、甚だ迷惑をかけてしまった。美味しかったのが救い。そしてヒヨコ豆が料理素人にとって強者であることが判明したのであった。


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