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デザイナー以外にも知ってほしい「色覚特性」と「色のユニバーサルデザイン」

こんにちは。
株式会社ラクスのデザイナー、しゅういちです。

今回ご紹介するのは色覚特性色のユニバーサルデザイン(UD)です。

色を識別する能力を色覚特性といい、それには個人差があります。たとえば遺伝によって区別しにくい色の組み合わせがあったり、加齢によって暗く見える色があったりします。
視覚情報に関わるユニバーサルデザインを考えるためには、色覚の多様性を知ることが必要になります。

出典:色彩検定UC級公式テキスト(2022改訂版). 2022, p9.

あなたにとって見えやすい色の組み合わせは、必ずしも他の人にとっても同じとは限りません。
デザイナーだけでなく色々な人にも知ってほしい、色覚特性の概要と色のユニバーサルデザインを簡単にご紹介いたします!

  • 色覚特性
    色を識別する特性

  • 色のユニバーサルデザイン(UD)
    色の側面から視覚情報に関わるユニバーサルデザインを考えること

色覚の多様性

色覚特性にはさまざまなものがあります。

先天性の色覚異常(遺伝による錯体細胞の変異)

※「色覚異常」とは出現頻度の低い色覚タイプを表す医学用語です。
ただしネガティブな印象を与える可能性があるため、そのような印象が生じにくいような用語の検討も進められています。

正常色覚では網膜にあるL錐体M錐体S錐体の3種類の錐体がそれぞれはたらくことにより、多くの色を区別することができますが、 色覚遺伝子の変異によってこの錐体のはたらきが不完全となる場合に先天性の色覚異常と呼ばれ、 色の区別がつきにくくなります。
また、先天性の色覚の特性は、加齢によって変化しません。

先天性の色覚異常の代表的な色覚タイプには、長い波長の光に感度の高いL錯体の異常(1型色覚)と、中波長の光に感度が高いM錐体の異常(2型色覚)があります。

※S錯体の異常(3型色覚)と1つの錯体しか働かない1色覚は極めて稀のため、今回は色覚異常を1型色覚、2型色覚の場合としてご紹介します。

その他には下記のような色覚特性が存在します。

  • 後天性の色覚異常(病気、ケガ、心因性)

  • 加齢による色覚変化(水晶体の光学特性などの変化)

  • ロービジョン(病気やケガによる視力低下と視野欠損)

色覚異常の割合

色覚異常と呼ばれる人の割合は日本人男性の5%(20人に1人)程度います。

  • 日本人

    • 男性20人に1人(5%)

    • 女性500人に1人(0.2%)

  • 黒人男性2~4%

  • 白人男性6~8%

  • 国内男女合わせて300万人

  • 世界男女合わせて2億人

思ったより多くの方が該当すると思われたのではないでしょうか。
あなたの身の周りでも困っている方がいるかもしれません。

不都合を感じる日常事例

色覚異常により日常生活で大きな支障はないものが多いですが、少し不便に感じることはたくさんあります。
下記に代表的なものをいくつかご紹介します。

  • 焼肉の焼け具合がよくわからない

  • 紅葉を見に行ってもどこが紅葉してるかわからない

  • 色数の多い路線図などがわかりにくい

  • Web申込画面など「赤と緑」の状態表示が判別できない

  • 充電の電源のオンオフが「赤と緑」でわかりづらい

  • 黒板に赤いチョークの文字が読みにくい

  • カレンダーの赤字の祝日を見落とした

  • 色名が合っているかわからず、伝える際にストレスに感じる


色覚タイプの分類と改善方法

色覚異常での判別しにくい色の組み合わせ

1型色覚、2型色覚の色覚特性で判別しにくい色の組み合わせになります。
「赤と緑」などは有名ですが、他にも下記の組み合わせなどが判別しにくい組み合わせになります。

色覚異常で判別しにくい色の組み合わせの修正方法

色味を下記のように調整することで、色覚異常の方でも判別がしやすくなります。

光の色の区別

光の色の場合、区別はもっと難しくなります。
なぜならば、例えば物体の色は一般的に赤と黄であれば黄の方が明るく見えるため、2色の区別は難しくありません。
ところが、LEDなどの光の色となると、明るく光る赤いランプも、暗く光る黄色いランプもあるため、明るさが赤と黄を見分ける手がかりにならないからです。
LEDを使うのであれば、「赤・白・青」の組み合わせが最も区別しやすくなります。また、1型色覚の方を考慮して「赤はオレンジに近い色」に変更することも効果的です。
なお、テレビやパソコンなどの液晶画面であれば赤と黄色の区別は誰にとっても難しくありませんん。相対的な明るさが色の区別を助けるためです。


加齢による見え方の変化

高齢者の視覚特性

人間の生理機能のうち、特に視覚・聴覚などの感覚機能と平衡機能は50歳代後半になると著しく低下します。
加齢による視機能への影響を簡単にご紹介します。

  • 黄変(おうへん)
    青い光が暗く見える。

  • 暗順応(暗さに慣れる)低下
    暗い部屋に入った際、周囲の暗さに目が慣れるのが遅れる。

  • 老眼
    近くのものが見えづらいだけではなく、動体視力も低下。
    WEBサイトのスライダー等、動きの速度にも十分な配慮が必要です。

  • 色の弁別機能
    色を見分ける機能が低下。

  • グレア
    眩しさを強く感じる。

加齢にともなう代表的な眼疾患

代表的な眼疾患には「白内障」「緑内障」「加齢性黄斑変性」などがあります。


色のUD(ユニバーサルデザイン)の進め方

ここまで色覚の多様性の概要を見ていただきました。
最後に色のUD(ユニバーサルデザイン)の進め方と修正のポイントをお伝えいたします。

設計と修正のポイント

  1. 多くの人が区別しやすい色を用いる
    色覚異常の人や、高齢者が区別しにくい色をできるだけ使用しないことがポイントです。

  2. 明度差をつける
    明度差をつけることは、色覚タイプを問わず、あらゆる人に有効です。

    • セパレーションカラー
      2色の間にそれらとは異なる色を入れてコントランス感を強調する方法です。
      明度差のあるセパレーションカラーを使って、図や文字にアウトラインなどをつけ、可読性を高めることができます。

    • 赤の使い方
      1型色覚、2型色覚の人は「赤み」が弱く感じられます。
      明暗コントラストをつける、もしくは赤を橙よりの明るい色相に修正する方法などが効果的です。

  3. 色名を表記する
    それがどんな色か名前を表記すれば、安心してイメージしたり、円滑なコミュニケーションができます。

  4. 色以外の要素を活用する
    文字を大きくする、図を大きくするなどをすれば、表示は読みやすく、見つけやすくなります。

    • 形を変える
      グラフを系統ごとに線種を変えたりすると区別が容易になります。
      また、円グラフなどで異なるハッチング(水玉や縦線などの模様)をいれることも効果的です。

  5. 文字に番号を加える、アンダーラインを加える
    対象に読み取りやすい文字や記号、マークなどの表記することにより、色の区別がつきにくい人でも区別が容易になります。
    また、アンダーラインで強調すると色の区別だけでなく、多くの人にわかりやすく伝えることができます。


はい、いかがだったでしょうか。
色のユニバーサルデザインを実際の業務にすぐに落とし込むことは難しいかもしれません。ただ、まずは知識として知っておくことが、大きな一歩目だと思います!

私は「自分の見ている青空は他人が見ている青空と違う」という哲学の色のクオリアに少し興味があり、ちょうど色彩検定UC級のことを聞いて受験してみました。
今回ご紹介したものも、テキストの内容を参考にさせていただきました。
ご興味のある方は是非、調べてみてください!


ラクスのデザイナー達は無意識に特定のオレンジ色に反応してしまいます。
そんなラクスではデザイナー採用を積極的に行っています!
是非ご応募をお待ちしております。


引用

  • 出典:一般社団法人日本色彩研究所 横浜国立大学 岡島克典(第4章 4-4). 色彩検定UC級公式テキスト(2022改訂版). 2022, 111p.


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