ORDINARY LIBRARY 1:図書館の今
5月のある日
TV「東京都は、『新型コロナウイルス感染症を乗り越えるためのロードマップ』を発表し、そのうちのステップ1へ移行することを示しました」
落花「ええ、動き出しちゃうのか。ステップ1ってなんぞや」
TV「ステップ1で再開されるのは図書館……」
落花「ん?」
TV「図書館」
落花「なにぃ!?」
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新型コロナウイルス感染拡大の中、先陣切って再開が発表された図書館。
その他に美術館、博物館などもそれに該当する。いわゆる図書館の類縁施設はトップバッターとなったのである。
自分は図書館について難しいことを書くつもりはない。
そして、綺麗ごとばかり書くつもりもない。
ネット上に載せていい範囲で、図書館のリアルを書いていこうと思う。
ちなみに、図書館が再開することが決まった時、利用者の皆さんはこう思ったことだろう。
「やった! 家にいるのがつらかったからとても助かる!」
実際に開館した際に喜びを伝えてくれた利用者の方もいた。これは図書館員として素直に嬉しい。
が、しかし、図書館員側からすれば、
「おい待て。自分らの健康はどうでもいいんかい。こちとら安い給料で働いているんだから、『コロナ手当』とか出せやコラ」
と思っていたのが現実である(もちろん全員ではないが)。
そんなわけで、再開を果たした図書館の今について、いい面と悪い面の両面から述べていこうと思う。もちろん、これはあくまでいち図書館員の感想である。
いい面その1:図書館はまだ需要があることを痛感できた
正直、コロナで臨時休館からの再開が発表された時、自分は思った。
「いやいや、外出自粛の中、図書館なんて行こうとは思わんだろ」
しかし、蓋を開けてみると、人が来る来る。
「待ってたよ」
「子どもが絵本を読みたいみたいでよかったです」
そんな嬉しい声をたくさんいただけたのは、間違いなく図書館再開のいい面であった。
とはいえ、再開してすぐには書架(図書館用語で本棚という意味)に入ることができなかったために泣き出す子どももいた。
その姿を見た時に心苦しい反面、「図書館は時代遅れと言われることが多いけど、まだまだ需要があるんだな」と本気で思った。
自分の周囲を見ていても、誰よりも図書館員自身が、「図書館に需要なんてあるのか」と疑問に思っていたような気がする。
それを前向きにしてくれた。図書館がこれから変わるための舵を切れた気がした。
もし、これを読んでいる人の中で図書館で働こうか悩んでいる人がいたら、やりがいについては保証する。
いい面その2:清潔感が増した
図書館の資料は、地域の利用者全員の所有物である。
ゆえに、汚くなってしまうのも無理はない。とりわけ、子どもの本などは消耗品といっても過言ではない。
コロナを経て、図書館は本の汚れに対して、非常に敏感になっている。
返却された本は必ず専用の洗浄液で磨いているし、空いた時間には、書架の本も洗浄している。
図書館員一人ひとりは手洗い・うがい・アルコール消毒をしっかりとやっている(はずだ)し、利用者もそれを守っている(はずである)。
その他、飛沫フィルム設置、マスク着用、場所によってはフェイスシールドも着用、開館時間は常に換気など、対策は怠っていない。
確実にコロナ前より、図書館の清潔感が増していると思う。
絶対安心です、とはさすがに言えない(コロナの全てがわかっているわけじゃないから)が、少なくとも図書館はウイルス対策をしっかり行いながら運営していることは保証する。
だって、自分らもかかりたくないもん。
悪い面その1:仕事が増えた
続いて悪い面であるが、図書館員の仕事が確実に増えた。
本や視聴覚資料全てを消毒する必要があるし、ほとんどの図書館では返却された資料を留め置きしている。
WHOが発表した24時間放置すればウイルスが云々……にあやかった対策である。いつ返された資料は、いつになったら書架に並べていいのか、あるいは他の館に送っていいのかという計算が大変である。
これについてはぶっちゃけ単なる愚痴である。
悪い面その2:人間の汚い部分が見えた
接客業、サービス業をやっていれば、人間の汚い部分が見えてくるが、コロナのこの状況においては、より人間の汚い部分が見えた。
多くの図書館は、段階的にサービスを再開する動きを見せていた。
最初はコロナ前の予約資料の受け取りだけ。
次に新規予約再開。次に書架の開放。次に閲覧席の開放。最後におはなし会などのイベントの再開……無論、今現在も全てを開放しているところは少ない。
これは勿論、不特定多数が利用する場所だから、ウイルス感染も回避するための措置である。
にも拘わらず。
「いつまで閲覧席使わせねえんだよ!?」
「(ロードマップの)ステップが上がったのに、なんで本棚に入れないの!?」
「パチンコ屋は再開してんのに、図書館が再開しないのはおかしい!」
というクレームをつけてくる利用者が実際に存在した。
図書館員たちはこういったクレームに耐えて、「すみません」「ご不便おかけして申し訳ありません」と必死に伝えている。
が、図書館員の本音は、
「それでコロナが図書館で蔓延したらどうすんだ!? おめぇみたいなのがいるから(自主規制)」
である(もちろん全員ではなく、あくまでいち図書館員の思うことです)。
資料を綺麗にしながらも、人間の心が汚くなってどうすると思った。そういう利用者に対しても、自分に対しても。
どんな場所もそうだが、いくら税金で運営している図書館だって、当たり前に利用できる施設ではないということを覚えていてほしい。
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上述したのは、図書館の今の日常のほんの、ほんの一部分にすぎない。
今後もこの「ORDINARY LIBRARY」と名付けたシリーズでは、図書館の日常について、のらりくらりと書いていく。
これから図書館で働きたい人や、図書館に興味がある人がほんのちょっとでも図書館のことを知ることができるように。
最後にもう一度書くが、これはあくまでいち図書館員の感想であることをお忘れなく。
立竹落花
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