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炭酸ソーダの水荘|交換日記

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世界の終りと平成ノート・ワンダーランド|平成最後の五月雨が降る日、僕らは遺書みたいに濡れて空を見る。これは、僕らが書く交換日記だ。|ツイッターの文章書き達がnoteで描く珠玉のエ…
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2018年6月の記事一覧

交換日記2(7)宝石の輪郭

交換日記2(7)宝石の輪郭

<2周目のお題「宝石の」>

1周めのとき、私は交換日記には向いていない、と言ったのだけれど。気にしなくてもいい流れにはなっている。ただ、安心しつつも頭を抱えているのが、今であったりもする。

美しいものは美しいものとして、躊躇いも気兼ねもなく憧憬を向けていたい。
それは例えば花であり、それは例えば宝石だ。誰のために咲くのでも、誰のために光るのでもなく。他でもない自身のために美しくある。誇りであり

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交換日記2(4)宝石の反射する鈍角を

交換日記2(4)宝石の反射する鈍角を

<2周目のお題:宝石の>

失う覚悟をなさっていてください。

そんな言葉をつむがれて、ならばしてやるからやり方を教えてくれよ、と思ったのだった。覚悟だなんて、しても仕方ないだろうと思ってしまう。誰かが死ぬための準備なんて、そんなもの。

誰かが消えてしまうのは淋しい、それは何かで補えるわけではなくて、たくさんのものを奪われるだけだ。それなら、覚悟などせずに、いつのまにかぽっかりと奪わ

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交換日記2(3)宝石の夜間飛行

交換日記2(3)宝石の夜間飛行

<2週目のお題「宝石の」>

空を飛びたいと思い続けて三年が経った。
人間の世界では、僕達をパワーストーンと呼ぶらしい。季節の名前がついた、ほっぺにちいさな星の砂を散りばめた女の子に、僕は拾われた。
長閑な田舎の広々とした空、犬を連れて歩く小綺麗な住宅地、この季節の朝には庭に野鳩がやって来てご飯を探す。玄関に飾られた沢山の花達。白い一軒家。女の子の名前は、春子。十四歳。中学生。

春子は学校という

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交換日記2(2)宝石の涙

交換日記2(2)宝石の涙

<2週目のお題「宝石の」>

哀しくて、泣いた。
あなたのように涙は流れなかったけれど。
ころころと転がって、地面に落ちた粒。
拾い上げたそれは、情けないほどに美しかった。
それはどこか、あなたの吐いた花に似ていて、
だからつまり、
哀しさが美しさに昇華される様が、
酷く、切ないのだった。

防衛機制の一つである、“昇華”という言葉。
社会的に実現不可能な、反社会的な欲求を、別の、より高度な、或い

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