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棗颯介
2023年8月7日 12:48
「一体、どういうことなんですか?」 なんとか鈴音を初音さんの車に乗せて家まで戻ってきた。 鈴音の容態は今は落ち着いており、ベッドに寝かせて休ませている。家に着く頃にはあの異常なまでの身体の重さも元に戻っていた。しかし、見た目が変わってもいないのに身体の重さだけがあそこまで肥大化するなんて常識ではあり得ない。今まで旅してきた場所でだってそんな伝説や言い伝えの類は聞いたことがなかった。 初音さん
2023年8月7日 12:34
青い空と白い雲。緑の山を流れる川に、どこまでも続く広い海。 絵に描いたような美しい夏の景色がこの町にはあった。 その代わり、それ以外には何もなかった。何も。「あの、どうかしました?」「………?」 所用を済ませて駅前を歩いていた時、見慣れない男性が町の案内図の前で顎に手を添えているのが見えて、なんとなく声をかけてしまった。都会に住んでいた頃の自分からは想像もつかない行動だ。俺がこの町に