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【思い出エッセイ】片想い

小学校高学年くらいになると「女子と遊ぶのはダサい」といった空気が出てくる。
私自身、小学校高学年の時に女子と遊んだという記憶は殆どない。


小学校高学年の時に遊んだ女子と言えば1人しか思い浮かばない。


その女の子は当時自分よりも背が高かった。

女の子よりも背が小さいということを当時の私は相当気にしていたので、その女の子から身長のことをいじられた際は半ば本気で怒っていた覚えがある。


彼女と遊んだ思い出の中で印象深いのが、四葉のクローバーを一緒に探していた時。

私は数十分探しても四葉のクローバーが見つからなかったので半ば諦めていたのだが、彼女は日が暮れて草が見えなくなるまでずっと探していた。


結局その時は、四葉のクローバーは発見されなかった。

もし彼女が発見していたら「ほら!やっぱりあったじゃん!」と勝ち誇った顔を見せてくれていたことだろう。


今思えば小学校時代は、男女を意識する必要なく異性とも同性と同じように遊べて楽だったと感じる。


小学校卒業後、彼女と私は他のクラスメイト同様、地元の公立中学校に進学した。

中学生になってからは流石に一緒に遊ぶことは無かった。


それでも仲は良かったように思う。

私は彼女に恋慕の情を抱いたりはしていなかったが、他の女子とは違い、気を使わずに接することができるといった点で特別な存在だったと思う。


相手が私をどう思っていたかというのは中学卒業を経て、そして高校を卒業した後に判明する。


高校進学を機に連絡も取らなくなっていたので、高校の間は彼女のことは忘れたいた。


ところが、高校3年生の終わりに大学進学のため上京する旨を私がTwitterで呟いた時、彼女からDM(ダイレクトメッセージ)が届いた。


東京に行く前に会ってくれないかという旨だった。


特に断る理由も無かったので私もその誘いにのった。


そしてその数日後の休みの日に約3年ぶりに彼女と再開した。

最初に彼女と会ったときに思ったことと言えば、身長が完全に私のほうが高かったということ。

どうしても彼女は自分よりも身長が高いという印象が強く残っていたので、違和感を覚えた記憶がある。

そして次に思ったのが、単純に彼女が綺麗になっていたということ。
高校3年生とは言っても中学生の頃に比べればはるかに大人っぽくなっているわけで、そのことに私は驚いたのである。


久しぶりだねなどといった会話もほどほどに、近くのパスタ屋さんに入って昼食をともにした。

高校3年間はどんなだったか、中学校時代の思い出など、特筆すべきこともないありきたりの会話をしつつパスタを頬張った。


その後はすぐ近くのゲームセンターに寄り、いくつかゲームをした後、丸テーブルを挟んで向かい合わせになっていた椅子に座って休憩した。


彼女が緊張感を漂わせたのはその時であった。

「あんまり真剣に聞かなくていいんだけど……」という切り出しで始まり何を言い出すかと思えば、私のことが6年間ほどずっと好きであったという話であった。


好きだからどうしろという話ではなく、取り敢えず伝えたかっただけということらしい。

私はパニックになった。顔の表面が急激に熱くなるのを感じた。絶対に顔は真っ赤だっただろうと思う。


私がどのような反応で返したかもはっきりと覚えていない。
ありがとうくらいは言った気がする。


私は彼女の好意には全く、これっぽっちも気づかなかった。

同性の友達と変わらない、たまたま性別が女性であった友達。
そのような関係性の相手からいきなり告白されたのだ。それも数年間ずっと片思いをしていたと。


他の女性から告白された時とは異なるもので、それらとは完全に別物の体験だった。
とにかく嬉しいという気持ちと混乱の気持ちでいっぱいだった。


もう女性から告白されるなどという機会は一生無いであろうが、何にせよあの時の告白はこの先しばらくは記憶に残り続ける気がする。
それほど強い衝撃を受けたものだったのだ。


現在、彼女は平日には仕事をし、休日はバイクに乗ったり、釣りをしたり、動物達と遊んだりして楽しんでいるらしい。

その話を聞いた時、かつて四葉のクローバーを探し回っていた少女が、そのまま体だけ大きくなったみたいだなと思った。

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