見出し画像

星が降る

2018年9月にスペインのカミーノ巡礼を歩いた。

初めて海外旅行に行ってから1年後のことだった。

身近にいた経験者から話を聞けば聞くほど好奇心が湧き上がり、出発の半年前に歩くことを決めた。それから半年の間馬車馬が如くアルバイトをしまくり、資金を貯めるのに奔走した。働き続けた結果、39度台の発熱に何度も苦しむことになった(笑)
当時のバイトの日々に関する記憶がゴッソリ抜け落ちている。

何とか資金を貯めた私は、9月にパリに降り立った。


登山をしたことがなかったので、初日のピレネー山脈以降1週間は、歩き始めたことをひたすら後悔していた、、

徒歩で25〜30km進むには毎日7時間程度歩かなければならず、しかも10キロ弱のバックパックを背負っている。
肩、背中、腰、太もも、ふくらはぎは筋肉痛でまるで言うことをきかないし、日々宿に空きがあるかがわからない状況と、自分の遅い歩みで不安に苛まれる、まじでつらい日々だった!

そこで私は早起きすることにした。どうせ毎晩疲れて21時には寝ていたし、5時起きの日々は案外スムーズに始まった。

スペインは日没が21時、日の出が8時と遅いため、午前6時はまだ真っ暗闇だ。何もない夜の原っぱをひとりでずっと歩いていた。しかし星を見るのに夢中だったので、暗い夜道も全然怖くなかった。今まで生きてきた中で一番綺麗な星空に、大袈裟じゃなく生かされていた。

巡礼路にはEstellaという町がある。ここはスペイン語で「星」の意味を持ち、星の降る町と呼ばれている。
Estellaだけでなく巡礼路を通して毎日数えきれないほどの流れ星を浴びていて、途中から星のために早起きするようになった。

巡礼の最終目的地、サンティアゴ・デ・コンポステーラが近づくにつれて、この満点の星空が見られなくなることが寂しかった。

日本に帰国して星空を恋しく感じていたある日、夜を照らす日本の夜景と、スペインの満点の星空が自分の中で重なった。

いつかまたあの星空を見たいと思っているけれど、今は夜に煌めく電気に向き合って日々を積み重ねるしかない。

歩き終えてもカミーノ は続くのだ、と言うみんなの言葉をわかったような気になっているけれど、今はすっかり運動不足。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?