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これぜんぶ存在しないカキなんだ

シリーズ・現代川柳と短文 085
(写真でラジオポトフ川柳173) 

 食にはすくなからず野蛮さが宿る。母親は牡蠣が好きで、わたしがこどもの頃、食べ終えた殻を積み上げている光景をよく見た。野蛮な光景だ。海賊っぽさがある。同じく母親が、メザシの頭を食べるのが怖いと言って胴体だけ食べ、食べ残した頭を皿の縁にきれいに並べていた光景も見たことがある。やはり野蛮な光景だ。さらし首である。頭を食べるのが怖いと言うが、わたしはさらし首も怖い。目を刺されたうえにさらし首にされているのだ。生首はいくつもある。魚がなにをしたと言うんだ。

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