前向きはそんなに砂糖入れるんだ
現代川柳と400字雑文 その86
キッチンに砂糖と塩の容器を並べて置いてあるお宅は多いだろう。Eさんも大学生のころひとり暮らしの部屋のキッチンに100円ショップで買ったケースに入れた砂糖と塩を置いていた。ほとんど料理はしなかったが、初めてのひとり暮らし、そうしたこまごましたものを用意するのも楽しかったのだという。だが、ある日、使ってもいないその砂糖が若干減っているように感じた。おかしい。一日単位ではよくわからないのだが、1週間2週間ペースで見ると、あきらかに減っている。気のせいではないと確信を持ったのは、だんだん減っていたそれが、ある日突然増えていたからだ。誰かが「補充」しているのだ。身の危険を感じたEさんは、その日のうちに電車で3時間ほどの実家に戻り、部屋も引き払ってしまった。
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