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ゼラチンであろうが容赦しませんよ
現代川柳と400字雑文 その99
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予備校講師の関さんは暑い時期になるとよくゼリーを食べる。お気に入りの銘柄があり、ぶどう味とみかん味がとくに好きで、ひとり暮らしの冷蔵庫につねに常備しているという。十年ほど前、その銘柄のゼリーに製造段階で異物が混入したというニュースがあった。ごく小さい金属片らしかった。気になった関さんが冷蔵庫のそれらを確認すると、果たしてみかん味のひとつになにか黒い粒のようなものが確認できた。もし食べても健康被害が出ることは考えにくいと聞いていたが、そうは言ってもやはり怖いので、食べずにそのまま置いておいた。しかし困ったことにある日、泊まりに来ていた当時の恋人がそれを無断で食べてしまった。事情を話すと恋人は逆ギレして「どうしてそんなものを冷蔵庫に入れておくんだ」と関さんを怒鳴りつけた。むろん関さんのほうは「勝手に食べるほうが悪い」と返して言い合いになる。怒りにまかせ部屋を飛び出した恋人を追うこともせず、関さんはひとりぼっちの部屋でぶどう味のゼリーを食べた。自分も悪かったかもしれないが、逆ギレはおかしい。そこに恋人から電話がかかってきた。恋人はおずおずと怒鳴ったことを謝ってから、自分でも異物についてのニュースを調べたことと、そのニュースによれば異物が混入した可能性があるのはみかん味ではなく、ぶどう味のほうだったらしい、と教えてくれた。関さんはどこかで勘違いをしていたらしい。幸いその後、みかん味を食べた恋人にもぶどう味を食べた関さんにも健康被害はなかったが、もし混入したのがはっきりと死に至る毒物だったら、話はまったくちがって、それこそもっとれっきとした実話怪談になっていたかもしれない。
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