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人はピンチの時、そばにいてくれた人を好きになる。

今回、日本に上陸した台風24号の影響により、私が滞在していた離島でも大変な被害が出た。停電により約24時間以上の暗闇、家が壊れるんじゃないかと思うほどの豪雨と風の強さに、初めて台風に「恐怖」を覚えた。

そんな恐怖の中、寮に一人でいた私に「迎えに行こうか?」とすぐに駆けつけてくれたのが、今の私の恋人だ。台風の最中、私は丸2日ほど、彼の実家にお世話になり、彼のご家族と共に過ごした。

ギシギシ、ミシミシと揺れる家の隙間風に怯えながら、「大丈夫かな…」とひとり不安な私に、「心配しても事が起きたら仕方ないよ。心配してもどうにもできないことは、とりあえず考えないでいよう」と言ってくれて、ずっとそばにいてくれた。今の恋人は島の電気を支えているから、台風当日も、翌日も、復旧作業やら倒れた電柱の撤去やら、島の防災整備やらに追われて大変なのに、「残り少ししか一緒にいられないから」と、最後の一週間はほぼ毎日迎えに来てくれて、みんなで一緒にろうそくの灯のもとご飯を食べて、彼のお母さんと、ボロボロになった道を一緒に散策した。

被害の多さに驚くと共に、それでも、こんな時そばにいてくれる彼の事を、心底、ありがたいなあと思ったのだった。


そんなの、付き合ってすぐだから当たり前じゃん


もちろん、そんな声もあるんだろうな、と思う。でも、実際に自分がピンチの時、脇目も振らず駆けつけてくれる人の存在が、自分の人生にはいくつあるのだろう、と思った時、きっと、そんなに多くはないのではないだろうか。

これまで、恋人に「そばにいてほしい」と願った事はなんどもある。けれど、みんなそれぞれの事情や用事がある。だからこそ、自分の気持ちを優先して「そばにいて」なんてことは言えず、「向こうの事情もあるから仕方ない」と、ただ言葉を飲み込んでいた私だった。

長い年月、いろんな事があると思う。だから、今のこの一瞬の出来事で、彼の事を過大評価したり、最高の恋人!えらい!なんていうのは馬鹿げているのかもしれない。けれども、「自分の事情よりも相手も事情」と遠慮がちな私に、「会いたい、寂しい」を言わせてくれる彼のこと、この一瞬の出来事で、私は心底好きだなって思った。本当に。心からありがとうって思った。

逆に言えば、自分がピンチの時の対応で、相手への気持ちなんて一瞬にして変わってしまうのかもしれない。今、どうしても助けてほしいとき、そばにいてもらえないのはやっぱり寂しいから。今、どうしても必要な時、そばにいてくれなくても、その人が出来る精一杯で愛してほしいと思ってしまうから。


恋愛は相手が変われば1からのスタートで初心者

今まで友人だった人も、恋人という関係性になれば、その関係はまた0からのスタートだと思う。だから、どんな恋愛本もテクニックやノウハウも「相手を知る」という根本的なところに立ち返る事には敵わない。でも、その一番大切なところを、しっかり大切にしていけば、関係性はいつからでも作れるのだ、と今回の事を通して実感できた。

好きになる理由が「自分の事を好きでいてくれるから」というだけではダメだろうか。ずるいだろうか。それでも、好きでいてくれる人の事を大切にしたいと思うこの気持ちは、確実に愛に向けたステップであると、今はそう思いたい。

人はピンチになった時、そばにいてくれる人を好きになる。

そしてそのそばにいてくれた人の事を、きっとまた相手がピンチの時、返したいと思うのは、愛なのかもしれないと、今はそう、思いたい。



あなたがくれたこのサポートで、今日もわたしはこのなんの意味もないかもしれないような文章を、のんびり、きままに書けるのだと思います。ありがとう。