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2次元の壁を超えるUIデザイン。アプリは実店舗に楽しさで勝てるのか?

カルディを歩いていて泣きそうになることがある。

一見ごちゃごちゃしてそうで、でも欲しいと思える商品に出会える、この宝探しみたいな感覚。iPhoneの小さい画面上で、どうしたらこの体験を再現できるだろうか。と考え出すと、自分の力不足を感じて悔しくて本気で泣きそうになる。

カルディの楽しさってなんだろう?

たとえば、もっと余裕を持った商品配置で手に取りやすい位置にだけ商品があって、人とぶつからない位の広い通路だったらカルディは楽しいんだろうか。「誰がこれ買うんだろう…」というような謎パッケージの調味料や、聞いたことないフルーツのジュースとかコンスタントに売れなそうなものを棚から無くして、売れるものだけ残したらどうなるだろうか?

効率的に商品を選べて、買い物は楽になるかもしれないけど、それってきっと楽しくない。

蜂蜜を買いに来ただけなのに、入り口でカゴを持ってしまう自分はきっと、今日も何か新しい商品への出会いがあると期待している。別に必要じゃなかったかもしれない、もともと欲しかったわけじゃない商品が、あたかも買わなきゃいけない商品に見えてくるのはなぜなんだろうか。

「そうそうこれ欲しかったんだよね」と、なぜか自分に言い聞かせながら全然買う予定じゃなかったペンネをカゴに入れたり、「急に夜飲みたくなったときにおつまみがないと困るよね」などと理由を作ってから牡蠣のオイル煮の缶詰をカゴに入れている。(今日もまた買ってしまった!)

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これは無駄遣いなんだろうか?もったいない買い物だろうか。
いや、これは毎日の料理を楽しみにするための買い物だ。

商品がどんどん目に入ってくるこの感覚を、アプリ上でまだ表現できていないことに毎日悩まされている。

アプリのUIやUXで、この売場のワクワク感を表現するのって無理なの?

ネットスーパーのUIはつまらないものが多い。と個人的には思っている。実際の店舗に行くとPOPや陳列ディスプレイの工夫などで、楽しい売り場を作れている大手スーパーでも、スマホの画面になると一気にTHEシステムという感じで、つまらなくなってしまう。

私の作っているクックパッドのかいものタブでは、旬食材の提案や特集などに力を入れて楽しい買い物体験を作ろうと努力をしているし、この半年でコンテンツや機能が増えて、ぐっと楽しい画面になってきていると思うが、カルディの売り場のワクワク感には到底及ばない。

こう書いていくと、二次元のアプリは三次元の店舗に完敗しているような気がしてくるが、そんなことはない。お互いに得意不得意があると思う。

例えば「私がいつも買うコーヒー豆がほしい」と言われた時、よっぽどの常連じゃない限り「これですよね」と豆の種類を言い当てるのは難しい。さらに「そろそろ暑くなってきたからアイスコーヒー用の豆に変えたい。私が去年飲んでいたのはどれだっけ?」となると、さらに高難易度業務だ。

しかしアプリなら、過去の購入履歴をすぐに表示することができる。あなたが去年飲んでいたがこのコーヒー豆ですよ!これを3回リピートしていますよ!と。

しかも、お客さんの数が100人でも1000人でも、1,000,000人でも大丈夫。
すべて覚えておける。

得意なことは思いっきり活用して、苦手なことは工夫で乗り切る

購入履歴を例に出したが、このシーンでなによりも大事なのは記憶力ではなく、人感だと思う。カルディのお姉さんに微笑まれながら「いつもありがとうございます!またよろしくお願いします〜」と声をかけられるから嬉しいのであって、リストを見ながら「あなたが去年買ったのはこれです。」と無表情でいわれても嬉しくはない。

それをUIで表現すると、こんな感じ。

商品一覧

履歴の見出しにメッセージ性をもたせてみた。
とても細かい部分だけど、結構人感が出たともう。

正直これは小さなイチパーツで、これだけでは大きく印象は変わらない。理想の場作りにはこういうことを積み重ねて、結果的に集合体になってはじめて「このお店、なんか楽しいね」となるのだと思う。

アプリでのサービス開発には色々制約があるけれど、アイデアや工夫次第でもっとワクワクしたりポジティブな買い物体験をつくることが出来ると信じている。クックパッドの買い物機能をさらに楽しく、便利にしていくためにも、またウルウルしながらカルディを歩こうと思う。

(追記)Cookpad DESIGN MAGAZINE AWARD 2021🏆で、この記事がMVPをいただきました!ありがとうございます🎉


最後に

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