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【欲望と時代】 #621


「お父さん
私 学校に行きたい」

「何を言ってるんだ
学校なんかに行ったら
皿を洗わなくなる
ダメだダメだ」



またある日

「お父さん
私 ピアノ習いたい」

「何を言ってるんだ
ピアノなんて弾けるようになったら
洗濯をしなくなる
ダメだダメだ」



またある日


「お父さん
私 本を読めるようになりたいの」

「何を言ってるんだ
本を読むようになったら
子育てをしなくなる
ダメだダメだ」



こんな時代が
日本でも
100年もしない昔に
あったのだ

女性は前に出るものでは無い

今からは考えられない世の中だ

だとしたら

これから100年後に
こんな世の中になっていても
おかしくないのかもしれない



「お父さん
僕 学校に行きたい」

「何を言ってるんだ
学校なんて行かなくても
頭をアップロードすれば良い
学校なんて時間の無駄
ダメだダメだ」


またある日

「お父さん
僕 サッカー習いたいんだ」

「何を言ってるんだ
サッカーなんてなもんはな
勝敗があるから野蛮なんだよ
そんな下等なスポーツは
ダメだダメだ」



またある日

「お父さん 
僕 あの本読みたいんだ
買ってくれない?」

「何を言ってるんだ
あの本の内容なら
オマエのデータバンクに入っているだろ
もし入って無いんだったら
図書館からダウンロードすれば良い
本なんて買っても邪魔になるだけだ
だからダメだダメだ」



もっともっと先の未来になると
全て共有と同調の世の中になって
区別も差別も無いかわりに
やる気も野心も無い
単に息をして
生きている
そんな集合体になるのでは

そんな心配をしてみたりするのだが

恐らく
そうはならないだろう
人間は卑しい生き物
どんな未来でも
人種差別
性差別
宗教差別
貧富
もしかしたら
今は無い新しい差別も生まれている
かもしれない

それでも
人間は諦めず
幸福になりたいと
願って止まないのだと思う





ほな!

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