【性と食のアラカルト】 #741
私のパートナーは元AV女優だった
私はそんなに熱心にアダルトビデオなどを利用するタイプでは無かったので気付かなかったし知らなかった
私と出会った時はもう引退しており料理の写真家として活躍していた
私たちが知り合ったのもそんな彼女の仕事を通してであった
彼女は最初雑誌の取材で単にカメラマンとしてライターと一緒に私がオーナーシェフの店に訪れた
名刺交換をし撮影してもらい話は殆どライターとしかしなかった
その撮影から数週間後
彼女は1人で店に現れた
アラカルト数種とスパークリングワインを注文
お一人だったのでカウンター席に座ってもらった
お店は半分オープンキッチンだったので手が空いたら少しお話した
彼女は前回の情報誌の撮影では無く料理の写真家として作品撮りをさせてほしい
そう話して来た
私はふん反り返るタイプでも無かったので快諾した
次の週の定休日に来てもらった
色々と話し合いをしどんな料理にするか決めて行った
撮影自体は次回の定休日に決まった
話し合いの後はまだお互い時間があったので私が簡単なものを作り少しだけお酒を楽しんだ
彼女との会話は心地良く物知りでウイットにも飛んでいた
仕事以外ではあまり社交的では無い僕には丁度良かった
次の撮影の日も順調に進み楽しい時間を過ごした
数週間後に私のスマホに彼女から連絡が入った
出来上がった作品を見せたいからお会いしませんか
今回はお店では無く別の場所で
別の場所かぁ
どこが良いんだろうか
そう悩んでいると
またメールが来た
代々木公園にしましょう
私は快諾した
私は作品を楽しみにしているとあの時はそう思っていたが
きっと彼女に会えるのが楽しみだったんだろう
作品はとれも素晴らしく撮れていた
自分で作った時より美味しそうに見えた
それでいて単なる雑誌用の写真とは違った
それは素人の私が見ても分かる
その日以来気が付けばメールでやり取りをするようになっていた
もう撮影は終わったのに
しかも撮影とは関係の無い内容までするようになった
頭の中の占める割合が増えて行く
また会いたい
そう思ったがそう言い出せない
どう切り出せば良いのか私はそういう事が不慣れで方法をよく知らない
この気持ちが届いたのか
向こうから誘ってくれた
私は気持ちが破裂しそうになっている
バカみたいに2人で映画なんかを観た
どうでも良いコメディー映画を
映画館で彼女はさりげなく私の手に手を重ねた
映画どころでは無い
見終わった後
焼き鳥を食べに行った
出来るだけ汚い店を選んで
結局その日はそれで別れた
キスもしていない
会いたい
それしか思い浮かばない
気が散って仕事にならなかった
私の頭は器用な方では無い
次の週
1週間休みを取った
スタッフやアルバイトにはきちんとお金の保証はした
1週間とこで何をしよう
本当なら彼女と何処かへ旅に出かけたかった
最近あまり連絡が入らない
どうしたのだろうか
仕事が忙しいのだろうか
それとも飽きられてしまったのたろうか
モヤモヤした
結局遠出はせず箱根に滞在した
此処には私が料理の幅を広げる為に日本料理を学ばせてもらった師匠が料理長を務める宿屋
久しぶりに挨拶がてら泊まらせてもらった
やはり日本人は日本料理だなと思う
私のイタリアンなぞは毎日食べるものじゃ無い
和食は良い
久しぶりに彼女から連絡があった
店に来てくれたそうで
休みの張り紙を見て連絡が入った
私がカラダでも壊したのではと心配していた
私の方は単にスネて箱根に来ただけ
私は思い切って電話して言ってみた
「今から箱根に来ないですか?」
そして彼女は現れた
宿には1人増えた事を告げた
その夜に私たちは初めて結ばれた
とてもとても深く結ばれた
そしてこれを機に私たちのお付き合いが始まった
1年後
住まいを世田谷区に移し
私たちは結婚した
結婚後に私はある男からメールがあった別れた元旦那だ
結婚したそうだな山田から聞いたよ
おめでとう
でもビックリだよ君がバイセクシャルだったなんて
しかもこれも山田から聞いたんだが
君のパートナーって元AV女優だって言うじゃないか凄いね
まぁ末長く
どういうつもりでこれをわざわざ送ってくるのだ
山田くんも山田くんだ言わなくても良いのに
アダルトだかなんだか知らないけれど
今の彼女を私は今愛しているし愛してもらっている
もし例え今AV女優だったとしてもだ
幸せには色んな形があるんだよ
日本料理とイタリアンみたいにね
ほな!
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