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【日本人は含まれていませんか?】 #511


「あなたは何ですか?」


そういう質問があれば
私はこう答えるだろう

「私は人間でした
強いて言うならば
地球人でした」


それはアンドロイドと呼べば良いのか
ロボットと呼べば良いのか

要するに
ほぼ機械でできた箱のようなヤツだった




私は宇宙船の故障のため
緊急にある星に着陸した
エアポートに降り立ち
トラップから建物の中に入った

そこに現れたのがこの箱だった


「ようこそおいで下さいました
船の故障は後ほどこちらの方で
修理しておきます

お疲れでしょうから
先ずはゆっくりお休み下さい」


「ありがとう
僕の名前は田中と言います
君はなんと呼べばいいのかな?」


「私の名前は山田です」


「えっ?
山田?

…日本人の名前だねぇ
作った人がつけてくれたのかい?」


「いえ
元々の名前です
誰かがつけたわけではなく
ホントに山田です」


「元々?
じゃあ君は人間で日本人だったの?」


「はい」


「そうなんだ
日本人の君がどうして
こんな星に
しかもこんな箱に

あっゴメン箱って言ってしまって」


「いえ
大丈夫です
確かに箱ですから

実は私は今から7年前
火星と木星の間で
宇宙旅客機の大事故がありまして」


「その大事故知ってるよ」


「そうですか」


「ああ
地球でも大ニュースになっていたよ

でも確かあの事故
ニュースでは
『日本人は含まれていません』
そう言ってたぞ」


「そうなんです

実は私
密航者でして
あの宇宙船にいないはずの人間だったんです」


「そんなコトがあったんだ
ところであの事故は小惑星と激突と言っていたけど
ホントにそうだったの?」


「えっ?
そうですけど
どうしてですか?
何か疑う余地でも」


「あの後
宇宙船を回収して色々調べたところ
最初の報道では小惑星と衝突したと言っていたが
内部から爆発したことが後の調査でわかったんだよ

あの現場にいたんだろ?

実際はどうだったんだ?」


「実際…ですか
実際はですね
実は私が爆破したんです」


「ええっ
マジかっ

テロか?
自殺か?
なんだ?

君は犯罪者なのか?」


「ウソです」


「ウソ?」


「すみません
ちょっとしたジョークです

実際は別に犯行グループがおりまして」


「ほぅ」


「逃走中だったようで
で彼らは他の乗客乗員には何も告げず
爆弾をしかけて
自分たちは脱出ポッドで逃げ出したんです」


「そう言えば確か脱出ポッドが2機見つからないと言っていたな
じゃあ犯人はその2機のポッドで逃げたということだったんだな」


「いえ違います
1機で脱出しました
もう1機は私が使いました」


「そうか
君が使っていたんだ」


「はい
その後
私はある船に回収され
ここに到着しました

ここは王博士の個人所有の星で
地球から帰る途中
私のポッドを見つけ
救い出してくれました」


「それで
この星に住んでいるのだな
でその博士は?」


「2年前に亡くなられました」


「そうか
それから君はココで一人ぼっちで暮らしているんだ」


「そうなりますね
でも
寂しくは無いです」


「そうかい
俺だったら寂しくって
気が狂ってしまうよ」


「ところで
ひとつ聞きたいことがあるんだが」


「はい何でしょう?」


「あの脱出ポッドに何かなかったか?」


「ありましたよ」


「ほぉ
それはその後どうなった?」


「さぁ
博士が多分使っちゃったんだと思います」


「使っただと?」


「恐らく

博士は追手が来て
ココにこんなもんがあったら
奪い取られた挙句
殺されちまう

そう言って
ギャンブルで使い切ったみたいです」


「ギャンブル?
あれを金に変えたってことか

なんてことしやがる

やっと見つけたのに」


「やっと?」


「そうだよ
あの時の犯行グループの一人だよ

あれから
ずっと探し続けていたんだよ
まさか
船の故障で見つかるとは


君はなぜ箱になったんだ?」


「あまり言いたくありません」


「そうか
じゃあ聞かないよ

早いとこ
あの船を修理してくれ」


「それはもう済んでいます」



するとモニターのスイッチが入り
故障箇所の修理映像が映し出された



「なるほど
助かったよ
山田くん
もう君に会うことはないだろう」



そう言うと
田中は持っていた武器で
山田くんを破壊した


田中は宇宙船へと戻り
この星から飛び立った


そのおよそ一時間後
田中の乗った宇宙船は大爆発を起こし
粉々になった



また
静寂が戻った


彼はそう思った




ほな!

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