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【新しい死に方】 #648


「ねぇ
ちょっと思ったんだけど
自分が生まれる前って
自分は存在しない訳じゃない
それを恐ろしいという人は
なかなか居ないと思うんよ

なのに
自分の死に対して恐怖するじゃない
それはなんでやねんやろ?」

「せやなぁ
それは多分
過去の事やし
皆んなも当然のようにある
真実だからやないか」

「自分が死ぬのは
過去では無くて
未来の出来事やけど
死もまた
皆んなに当然ある
真実やん」

「確かに
言われたらそうやなぁ
あれちゃう
いつ来るか分からんから
怖いんちゃうん」

「なるそどなぁ
いつ来るか分からんかぁ
ほんなら例えば
病死や事故死や自死以外では
人間は必ず法により
90歳で死ぬ事になっていたとしたら
怖く無くなるのかしら」

「そやなぁ
ひょっとしたら
分かってたら恐怖も半減するかもしれんね

そしたらさぁ
亡くなる前の
お別れ会的なセレモニー産業の需要なんかも
新たなビジネスとして出来上がるかもね」

「なるほど
それは面白い所に目をつけたな
全員が90歳までなんだから
寿命産業も不謹慎にはならないだろうね
むしろ歓迎される」

「例えば
君だったら
どんなセレモニーを開きたい」

「せやなぁ
俺カラオケ好きやから
大カラオケ大会みたいな
そんなのがええなぁ

君はどんなんがええねん?」

「せやなぁ
僕やったら
その時の仲間に集まってもらって
食事をし
業者に頼んだ自分の一生を再現した
フィルムを流してもらい
思い出の曲をバンドマンに演奏してもらう
それから
一人一人スピーチで
僕の悪口を言うてもらうんや
これが一番楽しみ

少人数で良いから
めいいっぱい
自分を喜ばせる会にしたいな
最後のワガママになるわけやから」

「なるほどなぁ
最後のワガママ
上手いこと言うやん
ホンマそやなぁ

でもなぁ
実際はそんな法律も無いし
自分の寿命なんて
誰も知らん

せやから
やっぱり怖いんやろなぁ」

「せやなぁ
何歳まで生かさせてもらえんねんやろか?」

「なぁ…」





ほな!

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