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【いつ命を絶つのか】 #802



僕は自分の記憶の中で鮮明に覚え始めた小学生の低学年の頃からずっとずっとイジメられている
イジメられている理由はその時々で変化して行ったがずっと続いた

小学低学年の頃の僕はスゴく太っていたんだ
だからデブとかブタとか言われてクラスの笑い者になっていた
まだ笑われる程度のささやかなものであったけど小さな僕は傷付いた

高学年になるとやや痩せてきたのだが今度は天然パーマをイジられるようになった
チリチリとか黒人とかドリフ(コントで高木ブーが鬼の役をやっていたから)とかの言葉による攻撃にプラスして蹴りとか石を投げられるようになった
女子は笑って見ている
僕は何故かヘラヘラ笑っていた

中学生になった
この時が一番キツかった
チリチリも継続していたが
それよりも蹴りなんかのイジメがエスカレートして行った
教室の後ろにあるホウキなんかを入れてあるロッカーに入れられて扉を壁側にして出られなくされ
外から数人でホウキでバンバン叩かれたり
塾の帰りに狩りの標的にされたり
パシリとかも始まって
休み時間が終わるギリギリにノートとか買いに走らさせられた
お金を払った時にチャイムは鳴り
教室に帰ったら先生がもう居てて怒られたり
修学旅行では布団にグルグル巻きにして押し入れに閉じ込められたり
一番嫌だったのは弁当に死んだゴキブリを入れられ食わされた事

僕はもう精神が追い込まれて行った

お母さんは優しい人
でもカラダが弱く
そんな人にイジメの話なんかできない
妹は年子で僕がイジメられているのを知っていて
それをウザがり家でも学校でも一切口を聞いてくれない


高校生になった
家から遠い私立の高校に行った
もうイジメられないだろうと思っていた
でも1人だけ同じ中学の人が居た
でもクラスも一緒になった事無いし
喋った事も無い
だから安心してたのにその彼が僕の事をバラし
僕のイジメが2学期から始まった
僕は害虫と呼ばれ意味なくありとあらゆる嫌がらせを受ける毎日が始まった

だが不思議な事に辛いのだけど自分の中で回避する方法を編み出した
二重人格では無いが別の自分を作る事にして学校での僕はそういう役割りを演じているだけでもう1人の自分は実は選ばれし人間で世界の危機が来た時に覚醒しヒーローになる
その為にメンタルを鍛える為の訓練をしているともう1人の自分に言い聞かせる
この方法でそれ程苦しくなくなった
ホントは苦しいんだけどね
そうやって回避していた

僕はオタクでもマニアでも無いし勉強ができるわけでも無い
もちろん運動も得意では無い
秀でているのはイジメられる事くらい

そんな訳だから家に居てても何をする訳でも無く
テレビを観たり漫画を読んだりとしょうもない日々を送っていた

高校3年の時に大好きなお母さんが亡くなった
3日間泣き明かし
1週間絶望感に襲われ
高校卒業まで無気力に過ごした

イジメられてもノーリアクションだったので飽きられイジメられなくなった
だからと言って喜んだり安心したり
そんな感情が湧かない

お父さんは僕を心配している
妹は相変わらず話をしていない

就職か進学かお父さんと話し合った
僕はやりたい事や好きな事が何も無かった
そこでお父さんは提案してくれた

「お前に100万円投資する
1年間だけあげるから
何かに向き合ってみよう」


僕は2週間考えて日本を旅する事にした

リュックを買って
シュラフを買って
テントを買って
その他色々買って
家を出た

ルールなんか要らない
歩いても良いし
ヒッチハイクしても良いし
電車に乗っても
飛行機に乗っても
船にタクシーになんでも良い

最初に向かったのは富士山
各駅停車に乗り継いで山梨県に向かってみた
なかなか乗り継ぎが難しく
何時間も次の電車を待たないと行けなかったりでとても時間がかかった

電車に乗ってるだけなのにとても疲れた
駅前のビジネスホテルに泊まった
此処にはありがたい事に最上階に温泉があった
サッパリした気持ちで大浴場の大きな窓から外を見た
多分昼間だったら此処から富士山が見えるだろう


こうやって僕は日本の気になる所に次々と足を運んだ

最初はしてなかったんだけど
日記代わりにYouTubeの投稿を始めた
これは自分の記録とお父さんへの報告を兼ねて配信した

最初は僕とお父さんしか見ていなかった
3ヶ月くらいしたら少しずつ見てくれる人が増えてきた

旅をしていて気付いた事がある
日本には意外と旅人が居る事が分かった
日本人以外にも世界中の人が何らかの目的があって旅をしていた

皆んなフレンドリーだ
誰も僕を気持ち悪いなんて言わない

ホントに僕は気持ち悪かったのか?

高校生の時なんてちょっと僕と触れただけで女子ご悲鳴をあげていた
泣いたフリしてる女子を他の友達が囲み慰め僕を睨んだ

睨みたいのは僕の方だ

何の理由でそんな目で見るのか
どういう意味があるのか

でも旅人は優しい
皆んなハッピーだ
中にはスゴイ人も居た
世界の殆どの国に訪れていて
これからもずっと旅で人生を続けると言っていた

僕はと言えば粛々と気の向いた場所へ行き
YouTubeを投稿

何故かフォロワーが増え続けている
僕みたいな旅人は沢山居るのに


一年半でおおよそ行きたい所には全て行った
すると頼んでも居ないのに
リクエストが入り出した
リクエストに応える形で残り3ヶ月を費やす事に決めた

フォロワーが1桁増えた

どうしてなんだろ?

これも不思議なんだけどリクエストがどんどん無茶振りになってきた
でも僕はこなした
あのイジメに比べたら
狭い洞窟もバンジージャンプも何てこと無い

そろそろ一年が経とうとした
僕は実家に久しぶりに帰った
もう終わりなんだな

次にしたい事も決まらずなのに

残金は意外と多かった
最初は減る一方だったんだけど
色んな人の支援やYouTubeの課金で
持ち直し残金は半分以上残った

久しぶりにお父さんに会った

「旅はどうだった?」

「とても楽しかったよ」

「それは良かった
ひとつ聞きたいんだけど
旅という行動が楽しかったのか
それとも
旅を通して経験した事が楽しかったのか
どっちだ?」


「ううーん
そうだなぁ
最初は場所だったんだけど
途中から人が楽しくなった
新しい場所で次はどんな人に出会えるかなぁって思ってたらワクワクしたよ」


「それは良かったじゃないか
進学も就職もとっても大切だけど
人との繋がり
これがとても大切だと思うよ

あのさぁ
恥ずかしいから言ってなかったけど
お父さんってさぁ
子供の頃イジメを受けていたんだ
でもねぇ
諦め無かったんだ
前を向いて
絶対に楽しくしてやるってね

でお父さんのお父さん
お前から言ったらおじいちゃんだな
おじいちゃんが旅を進めてくれたんだ

でなお父さんはなんて小さな人の中でクヨクヨしてたんだって知ったんだ
だからさぁ
きっとお前も旅で何か感じてくれたらって思ったんだよ

諦めない事
人のせいにしない事
前を向く事

いつでも死ねる
だったら
それは明日でも来月でも来年でも良い
でも出会いはその日しかない
だからもう少し生きてみろよ」


お父さんは僕がイジメられているのを知っていた

いつでも死ねるなら
明日は生きてみようと思えた



また
旅に出よう
今度は世界へ







ほな!

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