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【一日前の物語】 #531


今日
僕が死んだ
その事を
昨日の僕は知らない



朝7時に目覚ましが鳴った

朝かぁ…


7:15AM
起床

カーテンを開けた

よし
良い天気だ

インスタントの珈琲を飲みながら
ネットでニュースの確認

毎日同じような内容だ
東京の感染者数
あおり運転
芸能人の不祥事


7:57AM

身支度完了し
家を出る

地下鉄の駅までは歩いて数分


8:13AM

地下鉄に乗車

普段は自転車で移動するが
今日は遠出するのから
公共の移動手段を利用


8:25AM

待ち合わせの駅に到着

ホームには彼女の姿が

何度見てもトキメク


笑顔で挨拶したら
すぐに電車が来た


8:40AM

乗り換えの駅に到着

まだ早いので
2人でモーニングを食べることした

トーストとサラダとゆで卵
それとホット珈琲

目の前に大好きな人がいる

今日こそ告白しようと思う

高鳴る思いはまだ始まったばかりの今日
今はしまっておこう


9:18AM

駅中の喫茶店を出た

これから
私鉄に乗る

ここ始発の駅なので
余裕で座れた


9:25AM

駅を出発

なんだか喋ったが
何を喋ったのか分からない


9:55AM

下車
ここでまた乗り換え

ここから少しだけ歩いて
ロープウェイに乗る

僕は正直言って
これには乗りたくない
いわゆる高所恐怖症というヤツだ


10:27AM

途中で道に迷ってしまい
思った以上に時間がかかってしまった

次の便まで
まだ15分以上ある


10:45AM

定時にロープウェイは動き出した
沢山の親子が乗っている
おばさんのグループも1組

男女のペアは
僕たちと
もう2組

他の乗客は外を見て楽しんでいるが
僕は見れないので
このように乗客を観察していた


11:02AM

山頂付近に到着した

面倒だが
まだここからバスに乗らないといけない

不親切なコトに
ロープウェイ同様
バス停まで少し移動しないといけない


11:23AM

バス停に到着

時刻表を確認
後10分くらい待たないといけない


11:37AM

定時を少し過ぎた頃
バスはやって来た

結構待っている人が多い
全員乗れるのかしら

僕たちは前列の方だったので
余裕で乗れたが
やはり全員は無理のようであった

このバスを下車したらもう目的地だ


12:07PM

目的地に到着

ちょっと疲れたかも

山の上にある牧場

沢山の羊がいるコトで有名だが

他にも馬やロバ
ウサギなんかの小さいのもいる

園内に入ると先ずは
園のデカい地図で
現在位置と目的地の確認する

まわるコースも決め
園内を楽しんだ

というか
彼女といるコトを楽しんだ

一緒にいるのが嬉しい

楽しいし
嬉しいけれど
お腹も空いたので
お弁当を食べるという選択をした

今日はお互いに作りっこしてきた

彼女は玉子焼とタコさんウインナー
ポテトサラダと爆弾オニギリ

僕はサンドイッチ
ミックスサンドオンリー
手がこんでいるのかいないのか

それから
ワインも持参

うっかり
ワインオープナー忘れた
とかは無い
その辺りは変にキッチリしている


13:40PM

ベンチで昼食を頂いていたのだが
周りでは
野放しの羊が
ワッサワッサといる

羊は触らない方が良い
見た目はフワフワだが
触るとゴワゴワのネチョネチョだ

アイツらは
瞳孔が縦長で
目が合ってんだか
合っていないんだか
よく分からない

常に口はムシャムシャしている

それより
僕は彼女と過ごすのが
嬉しいんだ

瞬く間に時間は過ぎ
16時を回った

園は17時迄だ
園内にはまだ沢山の人がいる
クルマで来ている人が大半であろうが
来た時の事を考えると
これは早めにバスに乗った方が良さそうな気がした

もう見る所も無いし

バス停に向かった


16:31PM

またバスは10分くらい来ない
もうロープウェイは乗りたくない
幸いにも
次のバスは私鉄の駅前まで行ってくれる
これはありがたい

怖い思いをせずに済む


16:44PM

ギュウギュウのバスに乗り込む


17:26PM

私鉄の駅前に到着

いやホントに疲れた


18:10PM

地下鉄に乗り換える駅に到着

このまま帰るもよし

晩ご飯を食べて帰るもよし

自分と彼女の疲れ具合を確かめつつ
相談しつつ

軽く食べて帰る事となった

色気の無い居酒屋での食事

済まないねぇ

それとは別に
僕は大きく悩んでいる

本来であれば
昼間にいた牧場で
愛の告白をしようと考えていた

それにしては人も羊も多過ぎた
ムードもヘッタクレもない

じゃあ今は?

単なる居酒屋

しかもテーブル席は満席で
カウンター席

高鳴る想いと
萎えるココロ


19:46PM

居酒屋を退出

駅へと向かう

情け無い週末になってしまうのか


20:13PM

地下鉄も始発駅なので
停車中の電車に乗った
余裕で座れる

隣には彼女

2人だけの車両ならば
もちろん告白もできたであろう

この電車が出ると10分後には
バイバイになる

どうする僕

面と向かって言いたかった

僕は
隣にいる彼女にLINEを送った

彼女はできた人で
僕と一緒にいる時は
滅多にスマホを取り出したりしない

だから
今送ったLINEも見ていない

LINEには

『大好きです
お付き合いして下さい

ホントは今日
面と向かって言いたかったんだ』

10分後
僕が先に下車するカタチ
終わった


20:47PM

帰宅

スマホの確認
まだ既読になっていない
 
シャワーを浴び
部屋着に着替えて
缶ビールを
プッシャーと開けた

パソコンをつけ
ハードディスクに保存してある
映画を再生

とても観たい映画では無い

時間を繋ぐ材料

結局その日は
LINEの返信は無かった



0:00AM

ベッドに潜り込み
ちょうど
今日が昨日になり
明日が今日になった頃

僕は
突然の心臓発作で
あっという間に
死んだ

走馬灯や
後悔や
心の準備も無く

そのまま



ほな!

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