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【できるだけ会いたく無い】 #524


「大変だったな隔離生活
体調はどうなんだ?」

「心配かけたな
体調は元から無症状だったんで
大丈夫だよ」

「そうかそれなら良かった」

「まぁちょっとだけ味覚障害が残ってるくらいかな
それもほんの少しだけどね」

「まぁ無事で何よりだ
今日からまた一緒に頑張ろや」

「ありがとう」


ヤスは新型コロナのウィルスにやられ
陽性反応と出た
無症状だったらしいが
2週間の隔離生活を行い
その間2度のPCR検査を行い
陰性と出たので
今こうして社会復帰している



個人的に言うと
2週間だかなんだか知らんが
コロナはもう会社に来て欲しく無い
厄介なだよ
病気そのものもそうだが
会社のイメージが下がっちまう

何処でどう漏れたのか知らんが
取引先なんかの連中は皆んなもう知っている

お陰でただでさえコロナの影響で業績は悪化しているのに
感染者がうちの会社から出たというのが知られると困る
実際その影響でもう倒産寸前だよ



「ヤス
復帰第1日目なんだから
無理するなよ
課長からの伝言だ

今日は半ドンで帰りなさい

だとよ」


「大丈夫だよ」


「まぁ
無理すんなって
体力だけじゃなくて
色々あるだろ
今日は半ドンで帰って
明日からまた頑張ろう」


こうしてヤスは午前中だけ仕事をし
半ドンで帰って行った


「やれやれ
バイ菌くん帰ってくれてホッとしたよ」


そう言うと
何人かの同僚もヘラヘラ笑った


「ホントにとんだ迷惑だよ
アイツのせいでコッチはどんだけ大変かって
分かってんのかねぇ?」


人間は共通の敵が見付かると
団結する習性がある

それ以来
会社の皆んなとヤスの間には
なんとも言えない空気が流れ始めた

最初は些細なものだった
しかし時が経つにつれて
どんどんそれは露骨になり
明らかにヤスを差別し始めた

そんなヤスを見て


「他の奴の目なんて気にするなよ
大丈夫だって
ヤスが気にするほどの事は無い
皆んな業績落ちてピリピリしてるだけさ」


ヤスは差別からイジメへと変わりつつあるのを感じ始めた


「なぁ
最近明らかにおかしくないか?
そんなに俺がコロナになった事が悪いのか?
こっちだって好きでなったんじゃない」


「分かるよ
なぁヤス
課長が言ってたんだが
こんな状況だろ?
テレワークに変えてみてはどうかな?」


「テレワーク?」


「そうテレワーク」


「何言ってんだよ
テレワークなんてできないよ
どうやってやるんだよ」


「まぁ
ヤス
なんとかなるさ
とりあえず明日からは
テレワークだそうだ
頼むよ」


これで厄介払いができた

ヤスは次の日から
あり得ないテレワークとなった



ヤスの会社は『チンドン屋』を営んでいる

『チンドン屋』のテレワーク

あり得ない


だがヤスは本当にテレワークをやり遂げた
彼はYouTubeでバーチャル『チンドン屋』のチャンネルをやり始めた

これが変に受けフォロワーも着々と増え
仕事のオファーも増えて行った


会社のリアルな方の
『チンドン屋』は
ほぼ仕事が無い状態だ


業績が落ちたのは
ヤスのせいでは無かったと
その時になって
初めて気付かされた



「あっ
もしもしヤスか
YouTube手伝おっか?」


「大丈夫です」


「あっそっ

あのさ課長からの伝言なんだけど

これからはネット配信の時代なので
会社の皆んなでチカラを合わせて
YouTube発信して行く
だから
ヤスにはテレワークでは無く
出社して会社で全員でYouTube発信にあたるように
とお達しだ」



ヤスがどうしたかは
読まれた方が判断して下さい






ほな!

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