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【当たり前じゃない日】 #771


ヘッドフォンで音楽を聴きながら
スマホをいじって歩いていたら
カラダが吹っ飛んで宙を舞った
そしてとても長い時間感覚を経て
僕は地面に叩きつけられた

でも実際には記憶が飛んでおり
目撃者の方の証言で後に知った

僕は交通事故に合った
僕を引いたクルマは逃げた
1週間後犯人は見つかり逮捕された


僕はこの事故で右脚を失った
凄いショックだった
何もやる気が起こらない
それまで付き合っていた彼女は僕の元を離れた
本当なら来年辺りには結婚も考えていたのに
友達から言わすとそんな女だと早めに分かって良かったやんと言う
そうなのかなぁ…

頭の中では分かっている
僕みたいに事故なんかで障害者になっても前向きに生きている人が沢山居る事は

でもまだ僕は前を向くという事ができなかった
僕のせいでお母さんが精神疾患になりパートも辞めてしまった
明るかった家がどんよりとにごり
ドブの中で生活をしているようだった
救いだったのは妹だ
妹は変わらず接してくれる
兄貴は元から仲が悪かったので更に口を聞かなくなった
お父さんは僕をホントは元気付けようお母さんをサポートしよう
そう考えていたんだろうけど
寡黙というかおとなしいというか静かな人だったので
なんとかしよう感が伝わって来なかった



右脚を失ってから数年経つと不思議な事に同じような障害者の友人ができ始めた
健常者であった時には出会わなかった人々

昔これによく似た体験をした事があった
学生の頃ヒッチハイクで旅をしていた時になぜかよく旅人と出会った

そんな感覚に近い


友人の中にはパラリンピックに出場した事がある人も居るし
現役のスタジオミュージシャンも居るし
会社社長も居るし
BARのマスターも居るし
ホントに色んな新しい出会いがある

僕は家族に色々と迷惑や負担をかけたけれど今は前向きに生きている

以前勤めていた会社は正社員からアルバイトに変えてもらい
今は障害者でありながらモデルの仕事もしている

それから時々だけれどメディアの取材やお仕事もしている
僕は障害者である以前にLGBTQであるからそれが恐らく彼らにとっては響くのかもしれない


もう下を向いている暇は無いし
ヘッドフォンして歩きスマホは2度としない







ほな!

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