見出し画像

ファイナンス(企業財務)の基本㉗:「事業価値評価に関するトピックス」を軽く紹介してみた その1

前回までは「企業価値と資本構成」について書きました。
今回からは、事業価値評価について「知っておくと良いかも」ということを、トピックス的にいくつか書いていきます。

その一発目として、まずは「リスクフリー・レート」について書いてみたいと思います。

リスクフリー・レートとは?

まず、これまでの記事で「リスクフリー・レート」は「(ファイナンス的)リスクが(ほぼ)ゼロと見られる資産に投資した場合の利率」と説明しました。

そして、実務的にはリスクフリー・レートとして用いるのは「10年満期の国債利回り」であることが多いそうです。

10年満期のような、一定以上長い期間の債券利回りを「長期金利」と呼びます。(通常、期間1年以上を「長期」と呼びます。1年未満のものは「短期金利」と呼びます。)

それでは、理解を深めていくという意味で「この長期金利の水準は、どのようにして決まってくるのか」について、書いていきたいと思います。

まず、日常的に市場でやり取りされたり、新規発行される国債の利率や預金金利として発表されたりするときの金利は「名目金利」といいます。上記でリスクフリー・レートとして参照される国債利回りの値も「名目金利」に該当します。

「名目金利」から、インフレーションの影響を差し引いたものが「実質金利」であり、以下の式が成り立ちます。

名目金利 = 実質金利 + 期待インフレ率

実質金利について

ここで、実質金利の水準は「広い意味での市場」で決まります。
「広い意味での」とは、国債市場や社債市場などの個別の商品市場に留まらず、一国全体でみて、おカネの貸し手の供給と借り手の需要が均衡するところで決まるという意味です。

そして、その水準は「長期で見ると、その国の実質経済成長率(の期待)とほぼ等しくなる」と考えられます。

借り手からすると、借入金利が自分が投資して得られるリターンよりも低いと思えば、借入れをもっと増やそうとします。すると、借入需要が増え、金利は上昇 します。

一方、貸し手からすると、貸出金利が自分で事業をして得られるリターンより高いと思えば、も っと誰かに貸そうとします。すると、資金供給が増え、金利は低下します。

このようにして、金利は「大方が将来このくらいの経済成長をするだろうと見なす値(=期待実質経済成長率)に近付いていく」ということになります。

期待インフレ率について

インフレ率とは、「ある期間に物価水準がどの程度変化したかという変化率」を指します。

よって、 期待インフレ率は将来の物価上昇(下落)がどの程度になりそうかという「予想値」のことです。市場参加者の予想値なので、「こうなる」という公式があるわけではなく、過去のインフレ率や日銀の金融政策に左右される度合が大きいそうです。

補足)デフレとリスク

日本では、バブル崩壊以降、世界の先進国でも米国のサブプライム問題以降、金融危機への対応のため、各国の中央銀行が政策金利を大きく引き下げる事態になっています。

名目金利がゼロに近づき、上記式に当てはめてみると、実質金利がマイナスになってしまいます。また、特に日本では、期待インフレ率もゼロ前後からマイナス(= デフレ)という状況が続いています。

仮にデフレだとする と、上記式では名目金利が実質金利より低いことになり、市場でついている金利がデフレでない時の金利の感覚から乖離している可能性がある、という点だけ、現実の事象として補足しておきます。

今回は、ここまでにします。
次回は、トピックスとして「マルチプル法」について書いていきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?