奈良の山

地の山 図の山 / Mountains as Ground and Figure

---------------------------------------------------
This text is Japanese only, but there is an English document summarized on this subject.
If you can not read Japanese, please see the following English document.
---------------------------------------------------

今回のならあそびのテーマは、奈良盆地を囲む山々のうち、奈良市内の盆地東側に位置する3つの山です。

今回この山々を取り上げようと思った理由は、3つあります。

①名前がややこしい

漢字違いで同じ読みの山があったり、一つの山なのに別名があったり、3つとも大きさがほとんど同じなので、どれがどの名前だったか忘れてしまったり、とにかく分かりづらい!

ということで、一度きちんと整理してみたいなと思っていました。

②超いいタイミング

毎年1月の第4土曜日に奈良の山焼きがあります。
今回取り上げる山の一つ、若草山の山焼きです。
イベント前に知っておけば、山焼きをもっと楽しめるはず!ナイスタイミング!と思いました。
・・・なのに作成が間に合わず、山焼きまでに投稿できず、別に何のタイミングもはかれていない投稿となってしまいました。

・・・まあ、過ぎてしまったものは仕方ない。
山焼きの余韻として記事をお楽しみください。( 謎

③山の価値を見直す

実はこれが一番大事な理由です。

普段の生活で、山に意識を向けている人がどれだけいるのだろう、とふと考えました。
間違いなく奈良の景観にとって重要な要素であり、みなさんの思い出の景色の背景にひっそりと存在しているはずです。

こうした暮らしの景観を影ながら支える山は「地の山」といえます。

一方、山焼きや大文字の送り火、ハイキングで山を登るなど、山に注目すると、その地形や樹々の色が感じられます。

こうした意識的に認識される山は「図の山」です。

図の山は、イベントなどの非日常的体験で現れることがあり、思い当たる人も多くいると思います。
しかし、地の山は日常の中に浸透しすぎて、その価値を感じることが少ないです。

でも想像してみてください。
もし、普段見ている景色の中から、建物の向こうに見える山並みが消えてしまったら。
もし、見慣れた深緑の美しい山並みの一部が工事で切り取られ、茶色の地表が剥き出しになっていたら。

きっとものすごい喪失感だと思います。

今住んでいる沖縄で、昨年首里城が焼失しました。
僕自身はまだ住んで浅いですし、首里城も一度しか行ったことがないので、それほどではなかったですが、きっと地元の人たちはとても悲しかったと思います。

価値を知っているからといって、そうした事故を防げるわけではありませんが、知ることで普段からその存在を感じ、ほんの少しだけ大事にしたい気持ちが増えればいいなと思います。

このならあそび自体も、僕が自分の地元を知って、知らないときより少しでも地元が好きになればと思ってやっています。


というわけで、本編いってみましょう!!


1.イラスト

noteさんがシステムを改善してくださったようで、画像をクリックすれば拡大して見ることができるようになりました!
うれしい!ありがとうございます!

■日本語 ver. (size: A4)

200127_奈良の山々_FIN_ol_jp

■English ver. (size: A4)

200127_奈良の山々_FIN_ol_en


2.各山の解説

イラストの中に載せきれなかったことを中心に、各山についてご紹介します。

親しみやすさNo.1;三笠山(若草山)

3つの山のうち、一番北に位置する山です。
先日の山焼きはこの若草山で行われました。

この山、名前の由来がとても単純です。
というか、そのままです。

三笠山は、3つの笠が重なっているように見えるからだそうです。
若草山は、山焼きによって余計な草木が生えず、毎年新しい草が生え、新緑の広がる山だからだそうです。
わかりやすいですね。

地元民(少なくとも僕個人)としては、この山は「若草山」と呼びます。

パッと見で明らかにこの山だけ緑が明るいですからね。
こんな感じです。

画像3

ね、わかりやすいでしょ。

3つの山の中では一番低い山ですが、僕はこの中腹からの景色が最高に好きです。
頂上は車でもすぐに行ける展望台になっていますが、個人的には麓から歩いて登った中腹の景色の方が素晴らしいと思います。

画像4

東大寺から近いこともあり、ちょっとしたハイキングやドライブなどに利用しやすい他、奈良名物のどら焼きの名前が「三笠」だったりと、地元民としてはとても馴染みの深い山です。


世界に誇る原始林;春日山(御蓋山)

続いて若草山の南に位置する春日山(御蓋山)です。

名前の由来としては、春日山は春日大社の御神山だからでしょう。
御蓋山(みかさやま)は、蓋を置いたような形だからなど諸説あるようですが、それだと低めの山がみんな御蓋山になってしまうので、やや疑問です。

ちなみに、この山の背後(東側)には花山という高めの山があります。春日山の奥なので、奥春日とも呼ばれるそうです。

画像5

写真手前のはっきり見える山が春日山、奥の少し霞んでいる山が花山です。

古くからほとんど人の手が入っておらず、原始の自然が現代まで残っているため、1956年に特別天然記念物、1998年に「古都奈良の文化財」として世界遺産に登録されました。

また、御神山として古くから崇められていたこともあり、和歌などにもとりあげられています。
以前投稿した百人一首の回でご紹介した阿倍仲麿の歌が有名です。

画像6

この歌の「みかさの山」が三笠山なのか、御蓋山なのか、もはや奈良ではないのではないか、と議論になっているようですが、僕は勝手に御蓋山だと信じています。


忘れちゃいけない;高円山

春日山の南に位置する高円山。
正直、しょーじき、他の二つの山に比べると影が薄いです。( おい
ただし、山としての知名度はあんまりでも、名前の知名度は全国レベルです。

なぜなら、宮家の一つである高円宮は、この高円山から名前をとって創設されたからです。(三笠宮も三笠山が名前の由来だそうです。)

それともう一つ、奈良の大文字送り火は、この高円山で8月15日に行われます。

山の斜面の角度が比較的緩く、左右のはらいが長いためか、京都の大文字に比べて、のぺーっとした「大」の字に見えます。
これはこれで、僕は割と好きです。

終戦からちょうど三四半世紀が経ちました。
平和な日本で暮らし、戦争を知らない世代ですが、一年に一度くらい、のぺーっとした大文字を見て、この平和が当たり前ではないと再認識したいところです。
だから、この高円山は忘れちゃいけない山なんです。


3.さいごに

いかがだったでしょうか。
それぞれの山の名前の由来や地形や色、位置づけなどを知っていただいたことで、日常のある日、ふと顔をあげたときに見える山が少しだけ皆さんに近い存在になっていればうれしいです。


おわり。

#奈良 , #Nara , #大和 , #yamato , #歴史 , #history , #山 , #mountain , #デザイン , #design , #インフォグラフィック , #infographics , #ならあそび , #naraasobi



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?