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友ノ詩

ビー玉が好きだった

青春小説への憧れなんかを
水色のビー玉みたいに
他の人は理想論で語るけど

それよりも 私は
ビー玉を集めることが好きだった

ビー玉は瓶を割らないと出てこない

割った瓶の破片が刺さると
少し血が滲んで しばらく疼いたけど


私がビー玉を見せると

君はちょっと困った顔で 笑いながら

ビー玉集めなんかもうしないでよって
肌色の絆創膏をくれた

大人のくだらない世界に
嫌気がさして
ひたすら 自転車を漕いで
逃げて 逃げて 逃げたくて

どっか遠くに行こうか

なんて 夜の逃亡劇に憧れることもあった

「友達」なんて言葉を書いた付箋を
誰かの体に 無理矢理貼って
貼った数を競うゲームみたいに
必死な他の生徒たち

ゲーム不参加の私たちは
勝手に実況して 勝手にアフレコしながら
お互いのくだらない台詞に
お腹を痛めながら笑った


当たり前に過ぎる時間を
帰り道を歩きながら

ポケットに入れておいたビー玉を
先に歩く君にあげた

これって愛の告白かなんかなの?

真顔でそういう君に
我慢できなくなって

通り過ぎる人の不思議そうな顔を背に

長い間 涙が出るほど 

私は笑った

        大好き

とは言わないでおこう

そう決めて

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