渋沢栄一著|論語と算盤
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今回は、東亜堂書房さんから1916年に出版された、渋沢栄一さんの『論語と算盤』を、道添進さんが日本能率協会さんから2017年3月30日に出版された、現代語訳版をご紹介したいと思います。
本題に入る前に少しお知らせをさせてください。
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それでは本題です。
皆さんご存知、渋沢栄一さんは、明治から昭和にかけての、実業家であり、財界の指導者だった人です。
幕末の青年期には、討伐運動にも参加したり、海外に出て、いろんな知識を吸収して、明治維新の後に大蔵省に入るんです。
その大蔵省を退官した後は、第一国立銀行だったり、王子製紙を始め、たくさんの企業や大学、病院や団体など、600近くのいろんな組織の立ち上げに関わってきたんです。
まさに、今の日本の経済を作ってきた資本主義の父と呼ばれる人なんです。さらに、22024年には新一万円札の顔になることも決まっている、そんな渋沢栄一さんが書かれた「論語と算盤」は、100年以上も前に書かれた書籍で、今でも読み継がれている名著なんです。
本書は、人が生きていく上で必要なものだったり、普遍的なもの、時代を超えた生きる術、それを教えてくれる一冊です。
本書の主張は大きく分けて、2つで、ひとつが「道義を伴った利益を追求せよ」と言うものと、もうひとつが「自分より人を優先して、公益を第一にしせよ」と言うものです。
要するに、お金を稼ぐことと、世の中に尽くすことを、両立させなさいということを言っているんです。
「論語と算盤」は、論語が道徳で、算盤が経済活動を表したものです。
これが、渋沢栄一さんが提唱した「道徳経済合一説」を示しているんです。
論語、つまり道徳と聞いて、何か説教じみたものを説かれるのではないかと、思う方もいるかもしれませんが、本書は、全くそんな事はなくて、むしろそれとは反対のことが書かれていたりするんです。
よくある「『欲を捨てて薄利で満足しなさい』とか『俗な考えを捨てなさい』とか、そういうことを言っているのではない」と、本書では、まずそこを断っているんです。
そうではなくて、論語の精神を用いて、人が本来持っている、やる気だったり、成長を促して、経済を持続的に活性化させようというのが、基本的な思想なんです。
まず、今の時代の、道徳の基盤になっているものが、「論語」と言う書物なんです。
この「論語」と言うのは、中国の春秋時代の学者であり、思想家であり、儒教を開いた、孔子という方の事について、その弟子たちが書いた書物が「論語」なんです。
その「論語」を元に、経済をつくってきた渋沢さんの、「論語と算盤」は、第10章まであるんですが、私がこれは大事だなと思う部分を、3つご紹介したいと思います。
処世と信条
道徳と経済と言うのは、一見かけ離れているように感じるんですけど、お金を稼ぐと言うのは、道徳によってうまく動かされることもあるし、道徳と言うのは経済を用いることで本当の価値が生まれてくるんです。
渋沢さんは「士魂商才(しこんしょうさい)」と言うことを提唱していて、これは、昔、菅原道真(すがわらのみちざね)が、「和魂漢才(わこんかんさい)」という、「和の魂と、中国の学問を併せ持て」ということを、言ったところからとってるんです。
「士魂商才」は、「侍の魂を持ちながら、商人の能力で戦う」と言うことです。
人が自立していくには、強い精神が必要なんですが、お金を稼ぐことをないがしろにしていると、経済的に自滅を招くのは必至ですよね。
だから、士魂と商才のような、「強い精神とお金を稼ぐ力」、その両方が必要なのだと言っているんです。
つまり、道徳とお金を稼ぐことと言うのは、一緒でなければならないんです。
日本にも、賢人と言われる人や、英雄と言われる、偉人がたくさんいますが、その中でも、最も戦い方が上手であり、処世に長けていたのが、徳川家康だと言われているんです。
その、徳川家康が残した教えに、「神君遺訓(しんくんいくん)」と言うものがあるんですが、これは、私たちが世の中と、どう関わっていけば良いのかを、説いている教えなんです。
その、神君遺訓の中には、孔子が説いた「論語」の教えと、同じようなことが書かれているんです。
例えば、「人の一生は重荷を背負って遠い道を歩くようだ」と、家康が言っているのに対し、論語では「指導者の立場にある人は、広い視野と、強い意志を持つべきだ。それだけ責任が重く、道のりも長いからである。そういう重荷を背負って一生歩き続けるのだ。遠い道と言わざるを得ない」だったり、「自分を責めて人を責めるな」と言う家康の言葉に対して、論語では「自分が立とうと思ったら、まず人を立たせよ。自分が何かを得しようと思ったら、まず人に得させよ」と言う、言葉があるんです。
要するに、家康も、孔子の「論語」の教えに影響を受けてたんです。
さらに、「論語」には人間観察法という教えがあって、それが、「視、観、察」。この3つで人を見なければいけないと言っているんです。
どういうことかと言うと、「視」と言うのは、視野の「視」のことで、これは、肉眼でその人の外側に現れた行動を見るんです。「観」と言うのは観察の「観」という字で、さらに踏み込んで外側だけではなくて、その人が、どんな動機によって行動しているのかを、じっくり観察するんです。そして、「察」では、その人が、どんな時に喜びを感じたり、どんなことに満足したり、どんな時に心が安らいでいるのかを、推察するんです。
例えば、会社で自ら進んで掃除をしてくれている人がいたら、すごくいい人に見えるかもしれませんが、もっと深くその人を見たときに、実は、社長が通る時間帯の時だけ掃除をしているだけかもしれませんよね。
そうやって、「視、観、察」で人を見ることによって、その人が隠そうとしていることも全部ひっくるめて、その人のことが分かるようになると言っているんです。
立志と学問
渋沢さんは、人の体は衰えていくが、精神は衰えないようにできると言っているんです。
そのためには、学び続けることだと言っています。
常に新しいことを学んで探求し、時代遅れにならなければ、いつまでも精神が衰える事はないと言っているんです。
それにはまず、自ら進んで行動することが大事なんです。
例えば、何かひとつのことを成し遂げようと思ったら、まずは自ら学んで行動を起こさなければいけないんです。
その上で渋沢さんは、仕事に不平を言って去っていく人や、つまらない仕事だと軽蔑して、力を抜く人は論外だと言っているんです。
なぜなら、どんな些細な仕事でもそれは、大きな仕事の1部なんです。
その些細な仕事も満足にできないのであれば、成功する事はないと言っているんです。
「千里の道も一歩から」と言うことわざがありますが、たとえ自分はもっと大きな仕事をするべき人間だと思い込んでいたとしても、その大きなことは小さなことの積み重ねなんです。
もともと人は、成功を急ぎすぎて目の前のことしか見えなくなってしまう傾向にあるんです。
目の前のことにこだわりすぎて、些細な成功に満足したかと思えば、大したことがない失敗に落胆する人も多いんです。
こうした間違った考え方を改めない限り、些細な仕事を一生懸命こなすことはないんです。
改めるためには、大局を知って、学び続けることが大事なんです。
常識と習慣
皆さん常識のある人とはどういう人だと思いますか。
本書では、常識とは、「知、情、意」の3つが調和した人のことを常識のある人だと言っているんです。
どういうことかと言うと、知恵と情愛と意志の3つがあってこそ常識のある人間なんだと言っているんです。
人として知識が十分に備わっていなければ、物事を識別する能力に支障をきたしてしまうし、自分のことばかりで、人を思いやることができなければ、せっかくの知識を十分に活かすことができないし、意思が強くなければ情に流されてしまうこともあるんです。
要するに、常識がある人と言うのは、「普通の人の人情がよくわかり、世間一般の仕組みや習慣を理解し、状況に応じた振る舞いができる能力がある人のことを言うんです。
この、「知、情、意」の3つが揃っていなければ、「親切がかえって不親切になってしまう」ことだってあるんです。
昔の逸話に、雛がかえろうとしていて、卵の殻が離れずにもがいているのを見た人がいたんです。その人は親切心から殻をむいてあげたんですが、雛は死んでしまったんです。
卵からかえろうとしている雛の殻を、無理矢理むいてしまうと、卵黄が吸収されずに死んでしまうんです。
どれだけ思いやりがあったとしても知識や行動がそれに伴っていなければ親切でやったことがかえって不親切になってしまうんです。
「良かれと思って…」という行為にしても、確かにその人には、悪気があったわけでもないし、相手のことを思っていたのかもしれません。
ですが、しっかりとした知識を持って、相手のことをよく観察し、状況に応じた振る舞いをしなければ、相手にとっては迷惑になることもあるんです。
本書は人が生きていく上で必要な、本質的で普遍的な内容が詰まっている、人生のバイブルとも言える書籍なので、気になる方はぜひ、本書を手に取ってみてください。
今回以上です
最後まで読んでいただき、ありがとうございます
それでは素敵な1日を
読書家のヒデでした
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