今、求められている『ストーリー』とは何か
大学進学で上京して以来10年以上テレビを持っていない私ですが、この1、2年はなんだかんだでドラマを中心にテレビを見る機会が増えました。
スマホで視聴できる環境が整い、NetFlixをはじめ有料課金コンテンツが当たり前になったことで、これまでテレビを持っていなかった層が逆にお金を払ってでもテレビ番組を観たいと思うようになってきているという流れは面白いなと我ながら思っています。
特に最近は『半分、青い。』にハマり、何度か朝ドラを観て考えたことを記事にしたりもしています。
そして先週は、縁あって「dele」という新ドラマの試写会にご招待いただき、久しぶりに1時間じっくりドラマを観る機会を得ました。
そして強く感じたのは、今後の店舗空間は映画やドラマのセットをより意識すべきなのかもしれない、ということ。
deleの試写会は普段テレビで観るドラマを映画館で観るという贅沢な体験だったこともあってか、いつも以上に世界観に没入できた感覚がありました。
ただそれは単に大画面だったからというわけではなく、動画の質感や光の入れ方、衣装や小道具の世界観すべてにこだわりがあることで、『リアルに存在していそう』な臨場感があったのだと思います。
この『リアルに存在していそう』という感覚はリアルなストーリーだけのものではありません。
例えば映画版ハリー・ポッターも心のどこかで「魔法の世界は実在しているのかもしれない』と思わせる力がありますし、スター・ウォーズやスパイダーマンも同様です。
リアルなドラマであれファンタジーの世界であれ、自分もその世界に入ってみたいと思わせるためには『リアルに存在していそう』という感覚を喚び醒まさなければなりません。
そうして人が気持ちよく騙されるコンテンツは、リアルの体験においても必ず成功します。
グッズ販売しかり、美術館で開催されるような展示しかり、テーマパークのアトラクションしかり。
つまり、フィクションとリアルの境界線をなるべく曖昧に感じさせるようなコンテンツがいいコンテンツと言えるのではないかと思うのです。
さらに今後店舗の役割がより『体験』に寄っていく中で、こうした気持ちよく騙されたくなるようなストーリーテリングがさらに重要になっていくのではないかと私は思っています。
最近話題になっているエルメスの『彼女と。』も、こうしたストーリーテリングの力を最大限に活用している事例だと思います。
『ストーリーを語る』ということはこれまでも散々言われてきましたが、私はストーリーには3つあると思っています。
①作り手側のストーリー
②使う側のストーリー
③創作としてのストーリー
そしてマーケティングの場で語られる『ストーリー』は、そのほとんどが①についてのことが多いものです。
どれだけ心を込めて、高い技術で、素晴らしいものを作ったか。
情報が少なかった時代には効果があった作り手のストーリーテリングも、誰もが創作できる総クリエイター時代には情報の洪水に埋もれやすくなってしまいます。
だからこそ今後ストーリーテリングで重要なのは、②と③を意識することなのではないかと私は思っています。
まるでオーダーメイドのように、いかに自分のストーリーとして感じてもらうか。または、『自分もこうなれるかもしれない』という成長ストーリーに没入してもらうという使う側視点のストーリーテリング。
さらに、まるでドラマや映画のようにフィクションの中に入り込む、フィクションとの融合としてのストーリーテリング。
今後店舗がメディア化し、体験する場所としてよりテーマパークに近づいていく中で、ブランド側が伝えたいストーリーを押し付けるのではなく、顧客が自分の物語として感じられる環境を作れるかどうかが店舗メディアの価値を左右するのではないかと思います。
先日読んだ久米宏さんの本の中で、『ニュースステーションチームにはとにかくいい絵画を見て勉強してくれと話していた』というエピソードがありました。
いい絵は構図や色使いが美しいので、そうした作品を見ることで映像における美しい画を作るセンスが養われるから、というのがその理由でした。
同じように、今後はいい店舗を作ろうと思ったら映画やドラマの世界観づくりに学び、リアルとフィクションの境目を融合させるために小さな部分にもこだわっていなかければならないのかもしれない、とドラマを見ながら感得たここ最近でした。
世界観づくりがうまい映画やドラマがあったら、ぜひ教えてください。あと、映画やドラマのセットや小道具がどのように設計・コーディネートされているのかも知りたいなと思っています。
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今日のおまけは、ちょっと前の話題ですが『アリババのファッションAIを活用した店舗のテスト版をリリース』のニュースについて。
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