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本と映画と、エトセトラ。

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読んだ本・観た映画について気まぐれに。 (photo by tomoko morishige)
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#映画感想文

闘う、ということ

闘う、ということ

「不当逮捕」「サイバー犯罪」「実際に起きた大事件」。ポスターやあらすじに並ぶものものしい単語から、社会派の重たい作品なのだろうと思っていた映画「Winny」。

ノンフィクションの裁判ものなのでシリアスな場面も多かったけれど、鑑賞後の気分はまったく重苦しくなく、むしろ晴れやかさすらあった。それはきっとこの作品が善悪や正義といった作り手側の価値観を押し付けるのではなく、主人公である金子勇さんの生き方

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やり場のない感情に光を与える、柔らかなまなざし

やり場のない感情に光を与える、柔らかなまなざし

いまさらながら、李相日監督の「怒り」を観た。

李監督の作品を観たのは「流浪の月」がはじめてで、その映像の美しさと物語の組み立て方に一気に心を掴まれた。

他の作品も観てみたいと思いつつなかなか時間がとれずにいたのだけど、ひょんなことから「怒り」を観たら、「流浪の月」のときよりさらに圧倒されることになった。

物語のテーマは、タイトルそのままの「怒り」。登場人物それぞれが、やり場のない、どうしよう

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「関係」のなかに、私を閉じ込めないで

「関係」のなかに、私を閉じ込めないで

昔から、人との関係を枠にはめることが苦手だった。

「友達」が「親友」や「恋人」のような、特別な関係に色付けされた瞬間に、もとの関係とは違う何か別のものへと変質していく。その変化のスピードに私はいつもついていけなくて、何かが変わってしまうことが恐ろしくて、いろいろなことを曖昧なままにしてきた。

世間から見れば、名前のある関係の方が圧倒的に正しいのだろう。揺るぎない立場が保証されていて、まわりがみ

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