駒木

鉄板を踏みしめる

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最近の記事

もっとゆっくり寒くなってよ〜

正真正銘クソみたいな終わり方をした恋愛でも、自分が大切にされた記憶には他ならない。 (恋愛は総じて「クソ」であり、そうあるべきだ。) 恋愛で人は変わらない。失恋は人を変えない。 恋愛がその後の人生に及ぼす影響など無い。人生の単調な流れに起こる、たまの誤差にすぎない。 とはいえ! その記憶は自分を確実に生かす。 記憶が吹けば飛ぶほど薄らいだとしても、身体を通り過ぎる風の感触をもってしばらくは留まる。 しばらくした後は知らん。 多分忘れてる。 でもオッケー👌 なんかあの風

    • 【表象読解・分析】阿久悠作詞『十九の純情』の歌詞が表象の教科書ですごい

      日本を代表する歌手、石川さゆりの曲にすごい曲がある。『十九の純情』という。今日は『十九の純情』の話をしたい。 作詞は阿久悠、作曲は三木たかし。この二人は、石川をスターダムに押し上げた名曲『津軽海峡冬景色』(1977年発売)を作ったゴールデンコンビでもある。 石川の曲をミリオンヒット『津軽海峡冬景色』を境に初期とそれ以降と区分するならば、『十九の純情』は初期の曲だ。この曲では当時18歳の石川の伸びやかな歌声と圧巻のうなりを聞くことができる。 この曲がすごい。歌詞がすごい。

      • 【エッセイ】怖いもの

        小さい頃は怖いものが無数にあった。 メリーゴーランドの中心に立っていた人面の木。 寅さん記念館の照明がいきなり消える仕掛け。 めちゃくちゃ泣いた。 最悪の気分になって、大きい声で泣くことで目の前の最悪から目を逸らしながら、二度と心の底から安心して過ごせないような気がした。 今考えると、幼少期においてはまだ世の中で起きる事象を十分なパターン数経験していない。 何が身に起こっても大丈夫なことなのか、何が危険なことなのか、経験から判断できないのはこの世における最大のディスア

        • 【創作】かわうそにまぶたをふさがれた

          「宅次の父の葬式のときもそうだった。  厚子は身長の喪服を着て、涙をこぼすというかたちではしゃいでいた。ほうっておくと、泣きながら、笑い出しそうな気がして、宅次は、 『おだつな』 とたしなめるところだった。  おだつ、というのは、宅次の田舎の仙台あたりで使うことばで、調子づく、といった意味である。」 ---向田邦子「かわうそ」『思い出トランプ』(新潮社、1983年)pp.17-18。  いやねえ、私があの子と出会ったのは高校なんですよ。市で一番二番の高校に入学して、初めに出

        もっとゆっくり寒くなってよ〜

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          【日記】初めてお笑いライブに行った日をできるだけ詳しく再現してみる

           先日、人生で初めてお笑いライブに行きました。とてもいい日になりました。今私はこの日の余韻の中にいます。とてもいい具合です。惚けた文章であることです。でも本当にこの日は私にとって、ここ数年の淀みをぶった切るぶっとい句点になりました。この日のことを一粒も記憶から漏らしたくない。何年経っても新鮮に思い出したい。よし、初めてお笑いライブに行った日をできるだけ詳しく再現してみます。 劇場まで 朝から雨が止まない。すでに冬を抜けていたため傘を持つ手はかじかまないし、スギ花粉の季節の真

          【日記】初めてお笑いライブに行った日をできるだけ詳しく再現してみる

          【読書】すばらしい体験

          村田沙耶香の小説を読んだ。 『消滅世界』(河出文庫、2018) すばらしい体験をした。 一人称視点の、ただただ感覚による感想を残しておく。 読んでる最中はその加速するヤバさに不思議と振り落とされない。 これは電車の中で電車の外の景色がすごい勢いで飛んで行くのを見ながら、電車の進む速さを体感してない感覚と似ている。 ヤバさを実感するのは読み終わった後。 電車が止まった瞬間身体ごと投げ出されて、地面に叩きつけられる衝撃が全身に伝わる。 打った頭で現実世界が前より

          【読書】すばらしい体験

          【創作】不在の形で残るもの

          気が狂いそう。 頭上に浮かんだ言葉が一言一句そのまま耳に流れ込んできて、クリームソーダが喉に詰まった。 鮮やかな五色のクリームソーダが目玉のこの喫茶店は普段から行列ができる繁盛店で、平日昼下がりのいまも座席は埋めつくされている。さざめき声と店員が注文を取る声に今どき珍しい有線放送が混じって、なかなか賑やかである。初めて入る店だった。静かすぎる場所は嫌だったから、結果的にこの店は都合がよかった。 目の前に彼女がいる。彼女が僕を見ている。彼女は僕の言葉を待っている。 彼女の

          【創作】不在の形で残るもの

          【レポ】映画「ドヴラートフ レニングラードの作家たち」トークショーイベント

          ◎はじめに  2020年6月20日(日)渋谷ユーロスペースで開催された、映画「ドヴラートフ レニングラードの作家たち」トークショーイベントに参加した。  この日は緊急事態宣言解除後間もない頃で、渋谷には人が街に戻り始めていたものの私自身まだまだ様子を伺いながら足を運んだ。しかし映画やトークショーでは一転、日々の心配や苦痛を少し忘れられるような充実した時間を過ごすことができた。  登壇者は監修の沼野充義さんと、日本語字幕製作者の守屋愛さん。お二人と観客の間にビニールを置いて感

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