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【日記】初めてお笑いライブに行った日をできるだけ詳しく再現してみる

 先日、人生で初めてお笑いライブに行きました。とてもいい日になりました。今私はこの日の余韻の中にいます。とてもいい具合です。惚けた文章であることです。でも本当にこの日は私にとって、ここ数年の淀みをぶった切るぶっとい句点になりました。この日のことを一粒も記憶から漏らしたくない。何年経っても新鮮に思い出したい。よし、初めてお笑いライブに行った日をできるだけ詳しく再現してみます。

劇場まで

 朝から雨が止まない。すでに冬を抜けていたため傘を持つ手はかじかまないし、スギ花粉の季節の真っ只中に雨はむしろ好都合なので、そこまで不快ではない。大学の友人と別れ、大学の最寄駅からいそいそと新宿を目指す。電車内ではひたすら目的地のハイジアV-1へのアクセスを調べる。先達が写真付きで道順を解説した記事を残してくれていてとても助かる。
 雨に風が加わって、ここから先徒歩10分を控える私に新宿が波乱の予感を突きつける。肌寒い。TOHOシネマズのゴジラを真っ直ぐ見据えてひたすら直進。TOHOシネマズの一階に銀だこを発見し、迷わず進入。劇場にお腹の音が響くのは避けなければいけない。温かい。おいしい。ソフトドリンクを飲み干して劇場に向かう。お手洗いはビルで済ませよう。

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明太子のやつ。

トイレ問題

 10分後、お手洗いは済んでいない。ハイジアのトイレはコイン制で、お店を利用しないと使用不可のようだった。ちょっと立ち尽くした。他のどのビルを回ってもトイレはコイン制で、コンビニはトイレを貸し出していなかった。防犯の観点からは当然だけど、尿意と開園時間とお手洗いチャンスの激減の間で激焦った。TOHOシネマズの発券機横のトイレ、ありがとう。(よく考えたら劇場に言えばコインをもらえた。でもまだ開場前だったからズイズイと入っていくのはためらわれた。)

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激焦りしてるのに桜を撮る余裕はあった。

いよいよ入場

 開場時間。すでに入口に人が集まっていたのを見て出遅れた(涙)と一瞬思ったけど、入り順が関係ない受付のようでよかった。受付で電子チケットを提示し、手首で検温を受け、アルコールを手にすり込みながら、地下一階の暗室にすべり込んだ。
 ここが劇場。天井をダクトが走ってる。予想以上に舞台が近くて、予想以上に席数も少ない。着席方法に劇場特有の不文律があるのかもしれない、としばらく様子見したが、特に無いようなので奥寄りの中央辺りに着席。だんだん客席が埋まり始める。それとなく周りを見ると、カメラやメモの準備をしている人が少なくない。なるほど、MCコーナーやエンディングで撮影するのか。メモは出順やネタの概要を書き付けておく用かな。勉強になる。これこそが現場ならではの楽しみ方なんだな。ソワソワワクワクした空気が漂い始める。打ち込み音楽のBGMが非日常感に拍車を掛ける。わわわ〜。暗くなった!はじまる〜!

公演中

 明転だ!暗転だ!ライブ映像で見た感じ!サンパチマイクだ!蓄光性のバミリだ!衣装、靴、かっけー!ネタ中ってどこを見てるんだろう、どこでもないところか?出順は必ずしもフライヤー通りではないようだぞ!芸人さんが客席に降りてきた?!泣き始めた!?!生のお笑いは、お腹や心臓にくる衝撃が段違いだ!!なんだこれなんだこれ、楽しすぎるーーー!終わる?もう2時間?終わらんでくれーー!

公演後

 終わった。劇場全体の照明が点くやいなや、皆スムーズに劇場を出て駅の方に向かい始める様子。ご時世柄、公演後の雑談も出待ちも無いからだろうか。
 やっと客層全体が見えて分かったけど、自分も含めてやはり女性が多い。ランジャタイ国崎さん(お笑い界隈において敬称は客も付ける傾向にあるようなので付ける。比較的客と身近な存在で、SNSでの言及もその人の目に留まりやすいからだろうか。)がどこかの動画で、「女性の方が瞬発力や行動力があるんじゃないですか」とその理由について言及していた。ここに明確な相関関係があるかどうかはわからないけど、すでに誰かが考察していそうな問題だな。(観劇の分野ではものすごく議論が進展していそうだ。お笑いライブと観劇は似て非なるものだと思うが、手がかりは得られそう。)

帰路

 人の流れに乗って雨の歌舞伎町を歩く。自分の体からビシビシと発光している。生のお笑いが身体に効いているのが分かる。いままで音楽コンサートや観劇の経験はあったが、お笑いを生で見にいくのは初めてだった。劇場で見るお笑いには身に迫る熱があった。芸人がネタに熱を乗せて劇場中に放っているのを目の当たりにした。また自分が何に面白さを感じ、どこを刺激されたら笑うのか、真剣に自分の快に向き合う時間でもあった。
 ここからは全て感覚の話で「なぜそう感じられたのか」の部分はまだ一切深めていないが、一応記録しておく。コンサートや観劇とお笑いライブには、内容の外側「ガワ」への意識の向け方に明確な違いがあるように感じる。
 コンサートや観劇の際に湧きあがる感激は、まずパフォーマンスの内容から、つづいて私は今!演者や観客など多くの人と!この場と一度限りのパフォーマンスを共有しているぞ!、と「ガワ」の貴重さについてふと思い当たる瞬間に湧き上がる。
 一方お笑いライブでの感激は、舞台で展開しているネタを直(ちょく)で受信した瞬間と、受信した内容を一瞬で腑分けして、面白いポイントや面白く感じる理由を暫定的に導き出した瞬間(イコール面白さを認識して笑う時)がピークであり、ガワにはさほど意識が向かない。
 やはり自分にとって、お笑いライブはなんだか今までの体験とは明確に一線を画すものに感じられる。このように、先ほどの体験を思い返しながら新宿駅へと足を急がせた。この余韻の中をふたたび歩く日はそう遠くない。人生の楽しみを見つけた日は、句点を打ち、改行して新しい文章を始めるような心地で更けていった。

(了)

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歌舞伎町も歌舞伎町。同じように駅へ向かう人が多いので、夜でも心強い。


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