エンタメの勝利、学問の敗北？【東大院生とのディズニーデート】

この前、女心は分からないが勉強だけはできる東大院生の彼と、東京ディズニーシーに行ってきた。

私の乗りたいアトラクションに散々付き合わされたあげく、ジェ◯トーニのぬいぐるみまで買わされて、だいぶ疲れていたんだろう。

レストランで休んでいると、当然何を思ったか、「今の時代、学問よりもエンタメの方が強い」と言い放った。

また何か始まったなと思い「どしたん」と耳を傾けると、こんな風に語り始めた。

「俺の周りの大学院生は、大半が奨学金という名の借金をしている。人々は、決して安くないディズニーの入園料は喜んで払っても、自分の生活にどう還元されるかよく分からない研究者の活動には金を払わない。仕方のないことだが、学問は資本主義と相性が悪すぎる。」

彼の良いところは、感情的にならず事実をたんたんと述べるので、聞いていて不快感がないところだ。

フライドチキンを齧りながらふむふむと聞いていた私は、「そうだね」と相槌を打った。

ディズニーの実情はくわしく知らないけれど、人を楽しませる場所は儲かり、学問の現場は研究費が足りないというのは、確かにシビアだ。

でも彼の言うとおり、それは仕方ないことのようにも思えてしまう。
だって人は、自分を楽しませてくれるものにお金を払うのだから。

エンタメが充実しているこの時代に、学問の地位は（多数の一般人から見ると、）やはり低いかもしれない。

とはいえ、少なくとも私は、センターオブジアースの長い待ち時間に、

「地上よりも地下のほうが圧力が高いから、温度が高いよ。圧力をかけると熱が発生するから。足で雪を踏んだら、溶けていくでしょ？」

と話す彼が好きだし、それでディズニーの夢の国気分が台無しだなんてまったく思わない。

学問を土台にしたエンタメも沢山あると思うし、アトラクションなんてその最たるものだろう。

そもそも、世の中を便利に&楽しくしているあらゆるものにはロジックがあって、そのロジックを支えているのは学問だ。

私達からはそのロジックは見えず、その上澄みを享受させてもらっているだけ。

この世界の根本を作っている学問を、とことん突き詰める。
それはすごく素敵なことだ。
ビリーブを見ながらそう思った。

まぁでも確かに、「不特定多数の人にどれだけ応援してもらえるか」が、現代においてはかなり大きな成功要因になっているのは間違いない。

昔は、その領域の有識者や、一人のパトロンに認められて援助してもらえれば成功できたかもしれない。

だけど今は、いかに広く発信して、多くの人に応援してもらえるか。
金銭的にも自己肯定の意味でも、それがかなり重要だと日々実感する。

ゲーテの名言に、こんなものがある。

「才能は孤独の中で作られ、性格は世の激流の中で作られる」

私はこの言葉が大好きだけれど、孤独の中で作られた才能も、それを活かすには夜の激流の中に投げ込まないといけないと思う。

私自身、高校まではSNSに全く触れず、ひたすらお勉強ばかりやってきた。
世の中に自分を晒すより、一人孤独に勉強している方が好きだった。

もちろんそんな自分が嫌いではなかったけれど、インスタにきれいな写真を載せて、フォロワーを増やしていたクラスメイトが、まったく羨ましくなかったとは言えない。

だって今こうしてnoteを書いているのは、言ってしまえば、顔も知らないあなたに読んでもらって、いいなも思ってもらうためなのだから。

結局私も、ずっと孤独を好きなままではいられなかった。

エンタメを提供して、不特定多数の人々に応援されることが「成功に至るための定石」になりつつある今、その潮流に乗りたいと思ってしまった。

楽しいことをして、周りの人に応援してもらう。そんな自分の姿を、多少の差はあれど、皆いつも思い描いているんじゃないだろうか。

そして彼は、まんまと1日ディズニーの世界を楽しんでしまったようで、帰る頃には「ディズニーをなめていた」とうなだれていた。

そうだ。
結局、普段学問に生きている人も、エンタメに触れると楽しいんだ。
ただその逆は、残念ながら成り立たないことが多い。

だから、楽しめる人の数でいうと恐らく圧倒的にエンタメ＞学問で、そのうえ不特定多数の人に指示される領域が目立ちやすい現代では、エンテメが強いように見えやすいんだ。

とはいえ、エンタメに夢中になりがちな今の世の中でも、それを支えている学問があることは忘れてはいけないと思う。

ソアリンの映像技術も、プロジェクションマッピングも、おいしく作られたポップコーンも、かわいいミント色に染められたジェラトーニも、きっと学問がなければ成り立たなかった。

あらゆるものは、広い意味で学問から端を発しているから、学問は決して滅びない。

むしろこれからもっと、学問の間口が広がっていけばいいな。
色んなことに興味を持つ人たちが出てきたらいいな。
それもきっとエンタメの目的の一つなんじゃないのかな。

そんなことを考えた、良い一日でした。

【おまけ　昼と夜のディズニーシー散歩】

読んでくださってありがとうございました。