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【第3回】漫画家・赤信号わたるさんインタビュー〜漫画の描き方〜

こんにちは、Minto編集部の三島です。
漫画家・赤信号わたるさんのインタビューの第3回をお届けします。
特にクリエイターの皆さん、これからクリエイターになりたいと思っている方に必見の内容となっています!

今回はSNSに漫画を投稿する上で気をつけていること、漫画に読者が求めていることを伺いました。
SNSはスキマ時間に見られることが多いからこそ、多くの人を瞬時に引き付ける必要があります。
たくさんの人に作品を見てもらうために、赤信号わたるさんがどんな工夫をされているのか、ぜひご覧ください。

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Twitterに漫画を投稿する時のルール

編集部三島(以下「三」)Twitterに投稿される漫画を描く時はどういうことを意識されますか?タイムラインでの見え方なども気にされているんでしょうか?

赤信号わたる(以下「赤」)まずTwitterは1投稿に画像を4枚までしか投稿できないので、4ページ単位で漫画の構成を考えています。漫画の内容がしっかりできていたら、タイムラインでの見え方はそこまで気にしなくてもいいかなと思っています。

三)投稿文はどうでしょう。

赤)大事ですね。SNSは電車移動などの空いた時間にパっと目に留まったものを開くじゃないですか。だからより内容を直接的に表してるタイトルの方が開いてもらえると思っています。

三)なるほど。どんな話が読めるのかを簡潔に書くということですか?

赤)そうですね。かっこいい詩みたいなタイトルにも憧れるんですけど、それはSNSだとわかりにくいのかなと思いますね。

三)タイトルのわかりやすさは具体的にどう作っていますか?

赤)主語と述語、誰が何をしたっていうのがはっきりわかるようにするのが一番大事だと思います。それさえわかれば短縮しててもいいかって感じです。例えば『無職転生』のようにタイトルだけで誰が何をしたっていうのがわかるのが大事だなと。このルールを守った上で、もっといいものはないかなって考えます。「オヤジと美少女」のようにギャップがある単語を組み合わせたら言葉が強くなるということもあるので。

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赤信号わたるさんの作業場

SNS漫画で共感してもらうために必要なこと

三)SNSでは特に読者のどのような感情を刺激するのが大事だと思いますか?

赤)やっぱり「共感」が大事だと思います。全く初めてのものだと感情移入しづらいし、とはいえ完全に知っているものだとつまらない。だから知っていることから始まって、「知っていると思ったら、予想外の展開に!」という形式がいいのかなと思います。

三)逆に反応が得られにくい作品もあるんでしょうか?

赤)世界観にこだわりすぎるような作品はSNSでは少し厳しいと思っています。以前ウイルスバスターを擬人化した漫画を作ったことがあるんですが、全然ダメでしたね。世界観を説明するだけで1ページ使ってて(笑)。

三)身近にないものだと読者が見てくれないんですかね。

赤)スキマ時間にパッと読もうと思った時に、説明的なナレーションが多いと読むことへのハードルが上がっちゃうと思います。

三)なるほど。SNSに限らず、説明的なものや難解なものは近年好かれない傾向があると感じるのですが、どうですか?

赤)よく議論になるやつですね(笑)。漫画を描く時は基本的に説明的なナレーションはできるだけ入れず、削れるなら削っています。でも、そんなに説明を悪者にしすぎなくてもいいと個人的には思います。例えば『鬼滅の刃』って説明がたくさん入ってますよね。あれは説明がないと子どもたちには難しいと思うんです。つまり大人向けの作品なら説明を省いて、子どもたちに向けた作品なら説明的なシーンを増やすなど、見てくれる年齢層によって変えればいいと思っています。

三)普段は読者の年齢層を意識して作ってますか?

赤)そうですね。どういった方が喜んでくれるかというのはある程度想定して作っています。作者としては「このセリフかっこよくできた!」と思うこともあるんですが、ふと我にかえってこのセリフ自体は良くても、説明が足りず、読む人にストレスになるんじゃないか、どちらを優先すべきなのか考えます。

三)なるほど。

赤)ひょっとしたら説明しすぎなところもあるかもしれないけど、そうすることで読者が増えるならと思いますね。

三)塩梅が難しいですよね。考える時は一旦原稿を寝かせますか?

赤) 寝かせますね。思いついた時のテンションで描くと深夜のラブレターみたいなもので、その時はそこは良いと思ってるんですけど、次の日見たら本当に恥ずかしいことも結構あるので(笑)。

読者はどんな話を読みたがっているのか?

三)SNSは読者の反応がすぐに来るというのが良い面でもありますが、ネガティブな感想も見えてしまいますよね。いろんな意見があって当たり前ですが、全ての人に配慮した作品は難しいといいますか...

赤)もちろんなるべく人を傷つけないに越したことはないとは思っていますが、それでも言われちゃうのはしょうがないなっていう気持ちでやらないと、やっぱり譲れない部分もありますからね。

三)最近の読者が漫画に求めてるものはなんだと思いますか?

赤)あくまで僕の漫画の読者さんの傾向ですが、昔に比べてキャラの好感度をすごく重要視する方が増えているのかなと思います。特にモラルに厳しい。演出次第ですが、盗んだバイクで走り出したらそれだけで読んでくれなくなるかもしれません(笑)。特にweb漫画は読者のコメントが可視化されている場合も多いので、そういった非難があると作品全体の雰囲気が悪くなることもあります。

三)それは漫画を作る時にどう反映させていますか?

赤)奇をてらったり衝撃を与えるためだけに悪ぶったキャラを作らないように気を付けてますね。もちろんそもそも悪がテーマの作品だったり、ストーリー上敵にあえて悪印象を持たせたいなら別ですが。

三)悪者の悪さ加減も難しいですよね。展開を考えると、最初に意地悪なことをしてくれた方が、後から実はいいやつだったみたいなギャップが出ると思うんです。でも、悪者が最初から意地悪すぎると読者が嫌な気持ちになって、離脱しちゃうのかなと。

赤)ありますね。ギャップを出したい場合も、最初に悪人キャラとして読者に与えるストレスより最終的に「なんだ!いい奴じゃん!」と分かった時の“喜び〟が上回らないといけないし、救いようのない悪党の場合も前半に受けた仕打ちを覆すぐらいのリベンジがないと、読者にモヤモヤが残ってストーリーのノイズになっちゃうと思うので。悪を出したい時はその近くに優しいキャラを置いてバランスをとったりするのも有効だと思います。バランスが大事ですね。

赤信号わたるさん、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

赤信号わたる

手塚賞佳作受賞後に漫画家デビュー。
2020年には『オヤジが美少女になってた話』がTwitterで話題となり単行本化。
現在、SNSを中心に精力的に作品を執筆中。

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