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高年齢者雇用~地域とのつながりを活かした採用活動 その2~

今回は高年齢者雇用の第3弾『高年齢者雇用~地域とのつながりを活かした採用活動 その2~』です。

読まれていない方はぜひ第1、2弾も読んでみてください。

今回は、地域とのつながりを活かした採用活動の2つ目『オレンジカフェ参加者からクオラ職員へ ~マッチングジョイのはじまり~』についてクオラの在宅介護支援センター責任者である堀課長のお話を交えながらご紹介します。

まずは今回の話の発端となるオレンジカフェの運営を行なっている在宅介護支援センターについて簡単にご紹介します。

在宅介護支援センターとは

『さつま町社会福祉協議会』という組織があり、その中に『地域包括支援センター』があります。

地域包括支援センターとは、地域で暮らす高齢の皆さんを、介護や福祉、保健などさまざまな面から総合的に支えます。

●介護予防マネジメント:要介護状態等になるおそれがある高齢者に対して、適切な予防事業が提供されるよう、本人やその他の状況に応じて、ケアプランの作成等の支援を行ないます。
●総合相談事業:高齢者・家族の介護や保健・福祉に関する相談に幅広く対応します。地域包括支援センター職員には守秘義務があります。また、来所相談の際は地域包括支援センター内に相談室も準備してございますので、安心してご相談ください。
●権利擁護事業:高齢者に対する虐待防止、成年後見制度の活用促進、権利擁護のための支援を行ないます。マイライフノート(エンディングノート)活用講座を実施しています。
●包括的・継続的ケアマネジメント:地域における医療・介護関係者間の連携体制の構築やケアマネジャーに対する支援、支援困難事例等への支援・助言を行ないます。
●認知症の総合支援事業:認知症の方やそのご家族が、地域で生活するための支援を行ないます。認知症の理解を目的としたサポーター養成講座など実施しています。

さつま町ホームページ さつま町地域包括支援センターより 一部抜粋

その地域包括支援センターの地域窓口として『在宅介護支援センター(以下、在介)』が設置されています。さつま町内には4箇所あり、クオラの在介は町から委託される形で「屋地・船木・山崎・二渡・久富木」地区を担当しています。

【具体的な仕事内容】
・在宅での介護の相談対応
・保健福祉サービス、介護保険サービスに関する相談窓口、代行申請(介護保険認定の申請、福祉給食の申請、緊急通報装置の申請、介護用品支給事業の申請など)
・地域包括支援センターと居宅介護支援事業所と連携を取り合い、地域の住民の生活支援

母体と窓口の5団体で区分けして地域の方のお困りごとに対応しているイメージです。
地域の方っていうのは高齢者の方限定ではなく、老若男女対象なんですよ。ただ相談してくる方の年齢層は高年齢者の方が多いのが現状です。さつま町の地域性もあると思います。定年を迎えられた方の相談が多く偏っているように感じるかもしれませんが決してそういうわけではないです。
若い方も対象なので、クオラキッズの子育て支援に一緒に付いていって悩み等を聞いたりもしていました。
                            (堀課長談)

その在介の仕事の一つとして、『認知症カフェ(通称:オレンジカフェ)』が実施されています。

認知度カフェ(オレンジカフェ)

認知症カフェとは、もの忘れが気になる方、日常生活に不安がある高齢者とその家族、地域住民、専門職など、誰でも参加できる集いの場です。

認知症の当事者の方が通うことで認知症の当事者や家族の方が孤立してしまうリスクを減らせます。また、認知症の当事者、家族にサービスを提供することで、普段の介護で感じている負担やストレスなどを減らせることもメリットです。さらに、地域の人に認知症のことを理解してもらうことにより、地域全体で住みよい街づくりができることにも繋がります。

さつま町内でも各地区で開催されており、それぞれ趣向も違います。クオラが主催となっている認知症カフェは『喫茶 きんぎょの家』という名称で行なわれています。

実際の広報用ポスター

まずオレンジカフェ運営にあたり場所をどこにしようかなってときに、クオラの敷地内に作っちゃうと病院や施設にくる感じになってしまう、かつ場所的に地域から少し遠かったので、もっと家庭的な雰囲気で気軽に入れるところにしたいなって思いから民間の飲み屋さんに場所を提供してもらう形で実施することになりました。そこに金魚がいたので、『きんぎょの家』になりました。

どうしても認知症になってから「そこに行きなさい」って言っても来ないんですよね。認知症になってからは来ないというか続かないんですよ。
物忘れが進んでも元気なうちから行き慣れたところには行けるんです。「あそこには行きたくないけど、いつも行っていた『きんぎょの家』には行きたい」って場所になればいいなと思っています。

元気な方も混じっているので、誰が認知症かも分かりませんし、さりげなくサポートしてくれるのでみんなで同じ作業ができて楽しむことができる効果があります。そういう中で自分の居場所を見つけていってもらえればと思っています。
                            (堀課長談)

オレンジカフェ参加者からクオラ職員へ

マッチングジョイのはじまり

オレンジカフェでは、認知症の方やその家族の方が相談することが多かったりするのですが、ある時オレンジカフェの参加者の方からこんな相談をされたそうです。

「定年退職しました。地域の行事の係とかあるから決して暇ではないです。でも隙間時間があるんですよ。だけど、わざわざ川内とか少し遠いところにパートとして働きに行くのは年齢的にも交通の便的にも大変。だから、すぐに近くにあるクオラで私たちの隙間時間に働けるような環境を作ってもらえたりしませんかね。」

地域の方の声がこんな感じで直接聞けるのっていいですよね。ただこの相談、しっかりとした条件付きでの相談だったみたいです。

だけど、条件がありますって言われて。まず、全然暇じゃないんですよっていう大前提があって、①定年まで一生懸命働いてきたから最低賃金よりもちょっと上がいい、②責任が重くなくて、いつ物忘れが出てくるか分からなくて迷惑かけるといけないから、いつも同じような作業を繰り返す仕事、③急に若い人達の中に一人で入っていっても続かないかもしれないから友達と一緒に働きたい、そんな職場を作ってもらえませんか?と相談されたんです。

相談されたからには、どうにかしたいと思ったので、施設長と杉浦次長に相談してみたら、「面白そうですね、やってみましょうか」と乗ってくださって、クオラもちょうど人手不足の時期だったからいいタイミングだったのかもしれません。賃金だったり、業務内容も上手く調整がついて、やりたい人を集めてみたら友人同士で一挙に5人来てくれました。

業務として野菜切りと昼の食器洗いで、5人で回してシフトを組んで働いてもらっています。慣れてきたら自分たちで勤務調整してくれるようになったんですよ!急な休みにも、対応してくれてその列だけは抜けが出ることがなくなったんですよ。
                            (堀課長談)

地域の方のニーズに応えた結果、スタートから5人の採用に繋がり、自分たちで勤務調整までしてくれるという人手不足に大きな一手となりました。人手不足解消だけでなく、その他にも効果が出ているようで、、、

1ヶ月経って、コミュニケーションが大事なので「どうですか、働いてみて」と聞いてみると、「人によって教え方が違う」という課題が出てきました。実際に現場で働いている人たちに確認してみると、「私はこうしているけど他の人はどうしているか分からない」となっていたんですよ。

課題に対して、採用した5名の方の中から「写真を張ってこれはココに置くとか、誰が来ても分かるようにしている会社もあるらしいから、クオラもそうしてみたらどうですか?」と提案をいただきました。実際に写真を使った手順等を張ってみました。その結果、正社員もちゃんとできるようになり業務手順が統一されて正社員もパートも働きやすくなりました。

業務改善までやってくれたうえに、実際の業務も主婦歴の長さが活きてきて正社員の若い子よりもパートの高年齢者の方が上手だったりすることもあります。現場でもパートさんスゴイ!!って風になっていて。前職を退職した後に地域の役に立っているという経験ができていないと感じていた方も、クオラに仕事で来るたびに「助かります」「ありがとうございます」って言われてすごく幸福感を持っていつも帰るって言われています。

さらに、この方たちの良いところは土日が時間があって仕事に入ってくれるんですよ。だから子育て世代の方が休みたいときに仕事入ってくれるっていう効果もあって本当にみんな助かっています。
                            (堀課長談)

業務改善にもつながる意見を言ってくださったり、土日等人が少ないタイミングで勤務を組むことができたりとクオラと働き手がまさにWinWinの関係になっているように感じました。

最初は5名から始まったのが口コミで広まり、トータルで33名の紹介・応募で、現在20名(取材日:R4.12.20 時点)がグループの各事業所で働いています。

運用するうえで、普通のパートさんと同じように「あれもしてください。これもしてください。」というと長続きしないケースがあります。この人たちは、できることをできる時間だけって希望されているので、向こう側の希望を聞いたうえで、それに合う職種、仕事を選んで提案する必要があります。なので入職前に申込用紙を利用して“希望の就業日時・日数・活動等”を聞いています。あとは、働きたいってあちらからの要望にすぐに対応できるスピードも大事です。時間が空いてしまうと他のところにいってしまいます。

最初は「私も暇じゃないから」と言って、週2回とか少ない日数で希望されるんですが、大体3か月くらいすると仕事にも慣れて、周りに感謝されたり、対価として賃金がもらえることが嬉しくて私たちが言わなくても週4日に増やすことを希望されたりします。「最初は週1日とかしか働けないって言ってたじゃないですか」というと「これだったら働ける」っておっしゃるんですよ。

皆さん、最初は様子見されている感じです。だからこそ最初は「週1日でも大丈夫ですよ」ってみんなに伝えています。数か月後には必ずと言っていいほど日数を増やされますからね。中には「月4万円稼ぎたいから、4万円を稼げるように入らせてほしい」と希望される方もいました。ですから『働き方改革』というより、『働かせ方改革』という意識でやっています。
                            (堀課長談)

この『働かせ方改革』に名前を付けて『マッチングジョイ』として取り組んでいます。

マッチングジョイの概要

マッチングジョイの利点

①平均年齢70歳で、特に高齢者に対してのコミュニケーション能力が高い
②退職者が少ない(ストレスを感じるほど仕事を与えない。何か困ったことがあればすぐに相談できる体制ができている。何かあってもクオラグループにいるからどうにかなるという安心感も持っている)
③勤務時間帯が自由であり、職員数が少ない時間帯に抵抗が少ない。
⇒職員からの感謝により社会から必要とされることによる満足感を感じる

“「ここで働くのが楽しい」⇒クオラのことを友達や地域の人たちに話す
⇒口コミを聞いて、働いてみたいと相談が来る”
の繰り返しだそうです。

さらに、この世代の方々の日常生活に欠かせないのが『健康』情報。困った人がいたら、「私がクオラで働いているから聞いてみる」と相談が来る。平均年齢70歳の知人の相談はすぐにサービスに繋がるという効果もあるようです。

結果、職員雇用だけでなく、患者・利用者の獲得にもつながっています

マッチングジョイの位置づけ

「雇用というカテゴリーではなく、クオラグループへの入り口の1つとして位置づけるのがふさわしい」と堀課長は言います。グループ内に新たな利用者が入るパイプは、外来や入院、グループ内のサービス利用です。しかし、そこから集客が見込まれない場合、どれだけ営業をかけても、利用につながることは少ないと言います。

そうなった場合、医療・介護のパイプからだけでなく、もっと違うパイプが必要となります。そのひとつが雇用というパイプなのではないかと思います。クオラで働くことが楽しいと思うと、必ず友達や地域の人たちに話をします。これほどの宣伝効果はないでのはないでしょうか。

マッチングジョイで雇用した方たちがクオラの広告塔の役割を担ってくれているのです。

実際に働いてみると小銭ができて友達と外食や旅行に行ったりしているそうです。稼いだお金で旅行に行ったり、孫に何かを買ってあげたりなど、これまでは年金を削ってやっていたことを自分の稼いだお金でできるようになって、自分の生活が潤う、楽しくなってきていると言っています。
                            (堀課長談)

地域の中でこういった思いを感じながら働いている高年齢者の方々がたくさんいます。これぞまさにクオラのグループ理念の『地域貢献』なのではないかと思います。

マッチングジョイの今後

現在働いている方々の声を定期的に聞くことを忘れないことはもちろんのこと、高年齢者だけでなく、子育て世代や障害者雇用に拡大することができる取り組みだと感じています。

今後は、ターゲット層を広げて展開していくことができるといいのではないでしょうか。

皆さんへのお願い

皆さんのご家族や友人、知人に興味がありそうな方がいたら、ぜひ声掛け、ご紹介ください(年齢や性別、障害の有無等は問いません)。

事業所としてもっと力を入れて取り組みたいと感じましたら、社会福祉法人の堀課長もしくはグループ採用担当までご連絡いただければより詳細にお話しを進めていくことができると思います。

このマッチングジョイで大切なことは来た人の条件を受け入れる姿勢が大事ということです。「週1日だけでの勤務じゃちょっとね~」となりがちかもしれませんが、そこを受け入れてみる価値は存分にあるのではないかとお話を聞いて感じました。

以上、高年齢者雇用~地域とのつながりを活かした採用活動 その2~でした。

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