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外国人採用に取り組んでいます(その3)

皆さんこんにちは。経営企画室 能瀬です。

前回の記事からだいぶ間が空いてしまいましたので、内容を忘れてしまったという方は以下の記事からお読みください。

今回は在留資格について、それぞれの特徴をご紹介したいと思います。


1.EPA介護福祉士候補生

クオラで採用した順番でまずはEPA介護福祉士候補生。2019年8月に介護老人保健施設クオリエに2名加わりました。

こちらは前回も書いたように、日本と相手国の経済上の連携を強化することを目的としており、日本の介護施設で就労・研修をしながら、日本の介護福祉士資格の取得を目指します(労働力不足への対応が目的ではありません)。

施設の介護報酬算定要件等の人員基準に算定できるのは、就労開始後6ヶ月勤務後からとなっていますが、JLPT N2以上の場合は就労開始時から可能です。

現在、協定を結んでいるのはフィリピン、インドネシア、ベトナムの3国のみで、日本での入国後研修期間の約3ヶ月を含めた4年が在留期間の上限となっています。

この4年の間に介護福祉士国家試験合格を目指すわけですが、合格すれば後述の在留資格「介護」へ移行が可能。万が一、不合格だった場合でも、国家試験の結果が「合格基準点の5割以上の得点であること」「すべての試験科目で得点があること」であるなどの条件を満たせばに特定技能1号(介護)への移行が可能です。その後、5年以内に介護福祉士国家試験に合格すれば在留資格「介護」へ移行することもできます。

入国時の日本語能力はフィリピン、インドネシア:入国時点でJLPT N4以上
、ベトナム:入国時点でJLPT N3以上とベトナムだけ他国よりも要件が厳しくなっています。

家族を帯同することはできず、原則途中で受入事業所を変更することもできません。

その他に
・介護療養型病床、介護医療院を除き病院は受入ができない。
・目的が介護福祉士国家試験の合格のため、受入事業所は合格に向けた支援(勤務時間内に学習時間を設けるなど)が必要。
・技能実習、特定技能に比べてランニングコストが低い。
といった特徴があります。

国同士の協定に基づいて行われているので、仕組み、人材含め安心して受け入れられるのが一番の特徴と言えるかもしれません。

2.在留資格「医療」

続いて、在留資格「医療」です。こちらは今回の記事で出てくる中で唯一「介護」の仕事ではないため、仲間はずれではありますが、せっかくなので紹介させてください。

こちらは名前の通り「医療」に関する在留資格となります。日本の医師、薬剤師、看護師など医療に関する国家試験に合格することで、申請が可能となります(准看護師のみ都道府県知事発行免許)。「国家試験に合格することで」と書きましたが、いずれの資格も養成課程を修了していないと受験できないので、自ずと日本の大学、短大、専門学校等を卒業した方が対象となります。クオラではクオラリハビリテーション病院にて作業療法士として2020年4月から1名、2021年4月から1名が加わっています。

日本人でも不合格になる試験ですので、日本語を母国語としない方が合格することがいかに難しいかは、お分かりいただけるかと思います。専門用語ばかりの試験をルビ無しで受験しているわけですから、他の在留資格に比べて日本語能力が高いことも当然ですね。

こちらは国籍の指定はなく、在留期限は5年、3年、1年、3ヶ月のいずれかですが、基本的に回数制限なく更新が可能です。

在留資格の要件に日本語能力はないものの、国家試験に合格しなくてはならないため、学校の入学時の要件として最低でもJLPT N3が課されているのではないかと思われます。

人員基準等への算定においては日本人とまったく同じ扱いとなります。逆に労働条件等、日本人と差をつけてはいけません。

この在留資格「医療」においては家族の帯同も可能で、転職も自由にできます。また、転職する際に在留資格変更申請等の手続きも必要ありません。


3.技能実習(介護)

さて、3つ目は最近何かと話題になっている技能実習です。

技能実習制度は「我が国で培われた技能、技術又は知識を開発途上地域等へ移転することによって、当該地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与すること」(引用:外国人技能実習制度とは | 公益財団法人 国際人材協力機構)を目的としています。

つまり、その国にない技能、技術、知識を日本で身につけ、将来本国で活かすことを目的としたものなのですが、
・契約内容とは違う軽作業ばかりさせられ、とても本国で活かせない
・長時間働かされたあげく、残業代の支払いがない
・生活上の自由が制限され、暴力を振るわれる
などといった案件が相次ぎ、世界から「奴隷制度」とまで言われてしまっています。そういった点から制度の見直しに向け、有識者会議の会合が今年度中に開始するものと言われています。

技能実習の対象国は現在、インド、インドネシア、ウズベキスタン、カンボジア、スリランカ、タイ、中国、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、ペルー、ミャンマー、モンゴル、ラオスの16国となっています。

技能実習はその仕事内容によって85職種155作業に分けられていて、介護は「介護」職種の「介護」作業です。介護関係はこちらの1つだけとなっています。

クオラでは2020年の12月からクオラリハビリテーション病院にて2名の技能実習生が働いています。

介護実習と一口に言っても、在留資格上は1号から3号に分かれ、1号=1年目、2号=2~3年目、3号=4~5年目となっており、最大で5年の就労が可能です。

1号から2号、2号から3号に移行するには技能検定に合格する必要があり、また3号に移行するためには監理団体及び実習実施者が一定の明確な条件を充たし、優良であることが認められていなければいけません。

数年前に特定技能の在留資格ができてからは、技能実習2号終了後に特定技能1号へ移行することができるようになったため、3号移行者がだいぶ減っているのではないかと推測しています。

入国時日本語能力について他職種の技能実習に関しては要件自体がない(JLPT受験自体を問わない)ものもありますが、介護に関しては入国時点でN4以上が要件、1号終了時点でN3程度とされており、多職種よりも厳しくなっています。

家族滞在は不可で、2号終了までは転職もできません。

EPA同様、施設の介護報酬算定要件等の人員基準に算定できるのは、就労開始後6ヶ月勤務後からとなっていますが、JLPT N2以上の場合は就労開始時から可能です。ただし、病院においては「介護職種の技能実習生が、看護補助者として病院又は診療所において看護師長及び看護職員の指導の下に療養生活上の世話等の業務を行う場合における看護補助者の配置基準においては、当該技能実習生を員数に含めて算定しても差し支えない」(引用:介護保険最新情報 Vol.711)となっており、就労開始直後からの算定が可能です。

技能実習制度の特徴として、送り出し機関(相手国側)、監理団体(日本側)の2者が本人と受入企業の間に入っています。この送り出し機関と監理団体は、就職の斡旋や入国前研修、入国後の生活指導、相談支援や受入企業の管理、指導を行なっています。受入企業は毎月監理団体へ管理費として技能実習生1名あたり25,000円~5万円(監理団体により変動)を支払っています。


4.特定技能(介護)

さて、続いては特定技能です。特定技能は「国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする制度」で2019年4月に受け入れが可能となったばかりの新しい在留資格になります。

クオラでは2020年6月に1が名クオラリハビリテーション病院、1名がクオラリハビリテーション病院あいらへ、9月に1名がクオラリハビリテーション病院に加わり、全員が1年以内に退職。その後、2022年10月に2名がクオラリハビリテーション病院に入社しました。

現在14分野に分かれており、受け入れ対象国は、ベトナム、フィリピン、カンボジア、中国、インドネシア、タイ、ミャンマー、ネパール、モンゴルの9カ国と技能実習よりは少なくなっています。

在留期間は1年、6ヶ月、4ヶ月のいずれかで、最大で通算5年まで更新することができます。期間満了後は条件を充たすことで「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向け」の資格である在留資格2号に移行することも可能ですが、介護分野はまだ2号が認められていません。そのため、特定技能2号への移行はできず、他在留資格へも移行はできないため帰国する方がほとんどですが、特定技能1号の5年の間に介護福祉士国家試験に合格することで在留資格「介護」への移行も可能です。

特定技能1号の在留資格を得るためには、色々なルートがあります。

1つ目は技能実習(介護)からの移行。この場合、介護職としての経験があり、日本語能力もJLPT N3以上を持っていることがほとんどなので即戦力として採用ができます。

2つ目は介護以外の技能実習からの移行です。この場合、特定技能で定められた「介護」と「日本語」2つの試験に合格する必要があるのですが、この日本語試験はそんなに難しくないため、このルートで特定技能1号の在留資格を得る方々の日本語能力は個人差が非常に激しいです。職種によっては母国語の通じる外国人スタッフがたくさんいる工場など、日本語を使わなくても大丈夫な環境で働いていて、JLPTを未受験の方なんてざらにいますし、一方で自分で勉強を頑張ってN3レベルの方もいます。

特定技能はEPAや技能実習と違い、入社時から施設基準の人員基準等への算定が可能なこともあり、「技能実習と比べて即戦力!」的な語り方をされることが多くありますが、場合によっては技能実習よりも日本語能力が劣ることもありますので注意が必要です。

家族滞在はEPAや技能実習同様、不可となっています。

特定技能の特徴として重要なのが、転職が可能という点です。これも少し誤解をされている気がしますが、確かに3年の間、転職のできない技能実習とは違い特定技能は転職が可能です。ですが、転職時には再度出入国在留管理局への在留資格変更申請が必要となっており、タイミングよくやらないと無職・無収入の期間が発生してしまうのです。しかも、この期間は特定技能の5年間に通算されてしまうので注意が必要です。収入を目的とした転職でも、この点を気にせずに繰り返していると痛い目に合います。

企業側としてはこの「転職が可能」というポイントがかなりネックになってきます。特にクオラのような田舎だと、特定技能外国人の元々の住所が都会だったりした場合に、事前にどれだけ説明していたとしても「こんなに田舎だと思わなかった」ということが発生して、転職に至るということが少なくありません。実際、前述の通り2020年に入社した3名は県外、県内の都市部に転職してしまいました。この点について、現在、応募者の年齢、居住地、説明方法など、長期就労に繋がる方法を模索しています。

もう一つ、重要な特徴として、特定技能は技能実習と同様に外国人スタッフに様々な支援を行なう登録支援業務というものを行う必要があります。技能実習では「監理団体」ですが、特定技能の場合は「登録支援団体」というものになります。

登録支援業務には必ず行わなくてはならない義務的支援と、任意的支援に分かれ義務的支援は以下のものが当たります。

出入国在留管理庁「在留資格「特定技能」について」

この登録支援業務に関して、技能実習においては本国に支社がある会社を除いては、必ず監理団体に委託しなくてはならないのですが、特定技能の場合、特定の条件を満たし自社支援が可能と認められれば登録支援団体に委託せず、自社で支援することが可能となります。

その条件のひとつが、「会社が過去2年間に就労系の在留資格の外国人の受入れ、管理を適正に行った実績がある」というものになります。クオラでは、特定技能スタッフを採用する前にEPAや在留資格「医療」、技能実習スタッフを受け入れていた実績にて、この条件を充たすことができ現在自社支援での採用を行なっています。なお、この登録支援業務では母国語で行なう必要がありますが、2018年にハノイに行った後から勉強をし始めたお陰でこちらもクリアすることができております。

5.在留資格「介護」

最後は在留資格「介護」となります。こちらは介護福祉士の国家試験に合格することで申請することができる在留資格となります。

クオラでは現在こちらの在留資格のスタッフはおりませんが、鹿児島県の「介護施設等外国人留学生支援事業」という補助事業を利用して、来年の4月に1名介護老人保健施設クオリエにて採用する予定となっています。

在留資格「医療」同様に、大学や短大、専門学校等を卒業した方に加え、上述の通りEPA介護福祉士候補生、技能実習、特定技能の方が介護福祉士の国家試験に合格することでも、こちらの「介護」の在留資格を申請することができます。

在留期限や、更新回数の件、日本語能力や人員基準等の算定方法も「医療」と同様になっています。家族の帯同や、転職が自由にできる点も同じとなっています。

まとめ

というわけで介護関係の在留資格を皆さんと一緒に見てきましたがいかがだったでしょうか。それぞれの在留資格の違いや特徴が少しは分かっていただけたのではないかと思います。ちなみにこれだけ様々な在留資格が揃っているところはなかなかないのではないかと自負しておりますが、これも普段現場で外国人スタッフをサポートしてくださっているスタッフの皆さんのお陰でございます。これからさらにグローバルな社会になってくると思いますが、国籍や年齢、その他諸々に関わらずお互いが助け合って認めあって働ける環境づくりにご協力をお願いいたします。


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