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素材にしない

こんにちは。今回は被災地を取材してきて、ずっと考えてきたことを文章にしてみようと思います。
現在進行中で考えてることでもあるので、今回は少しまとまりがないかもしれませんがよろしくお願いします。ではいきましょう!

こころに残ってる言葉

僕らは2019年の夏から何度か福島県の南相馬に訪れてきました。
その中でずっと考え続けてきたことがあります。
僕らが最初に現地を訪れたときに、現地の方から聞いた言葉があります。

あなたたちみたいなアーティストは時々来るんだけど、みんなここへ来たら涙ぐんで、こころを打ったような感じで東京へ帰ってくれる。でも、この土地に何かを残して帰ってくれる人はいないんだよ。まぁ、少しでも東京とかで現状を伝えてくれればそれだけでいいんだけどね。

僕は辛い体験を語ってくれることは当たり前なことではなく、とても感謝すべきことだと思います。でも、その時思ったことはこの感謝をどうやって伝えよう? おこがましいですが、どうすればこの人たちに還元できるのだろう? と思いました。
もちろん最初は作品を制作するために現地を取材するつもりでした。しかし、いろんな方のお話を聞くたびに、「今語ってくれているこの話は、ただ作品の素材にして終わりでいいのか?」という気持ちが芽生えてきました。
いただいたお話は、辛い体験や思い出したくない記憶を、心のネジを少しずつ緩めながら語ってくれたものでした。僕らが簡単に消費していいようなものではありませんでした。


活動で語る

とは言え、僕らは来年3月に取材で聞いてきた話をもとに芝居を打つ予定です。その中で僕はどうすれば、現地の人のお話を消費するだけでなく有意義なものにできるのかを考え続けてきました。
考えてきた中で行動に移せたことが2つあるので、紹介しようと思います。

1、作品の外で福島と繋がる。
2、作品のクオリティを上げる。

一つ目は、自分たちがお話を聞いたり、与えてもらってきた現地からのギフト(愛)を、自分たちの知り合いへ波及するということです。
具体的に、ツアーを組み交通費宿泊費等をこちらが持ち、知り合いを福島へ連れていきました。
最初の一回はもちろん僕らにとってかなりの赤字です。なので大勢の人数は連れて行けませんでした。しかし、大学の先輩一人と舞台の共演者数名を福島へ招待しました。
なぜ、僕らが他人を招待したのかというと、最初のきっかけが必要だと思ったからです。逆に言えば最初のきっかけさえ作ってあげれば、彼、彼女らの中で福島はどこか遠い土地のことではなく、自分の知ってる土地のこととして興味を持てると思ったからです。
興味を持つ人が増えることが回り回って、現地へ何か還元できるものがあるのではないかなと思ったのです。

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また、現地に行くのはちょっと気が重いという方へ向けて、レクチャー型のワークショップなども開きました。

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二つ目は一つ目ともかぶるのですが、共演者の原発や被災地への理解をより深めることです。
現地へ一緒に取材へ行ったり、勉強会を開いたりビデオ鑑賞会を開いたりして、今年の夏コロナ禍で公演を延期せざるを得なかったときに、徹底的に基礎固めをしました。今思えば俳優を数ヶ月間拘束し、演技のことではなく震災のリテラシーを高めることを要求したのは、良くやったな思います。また、真剣に着いてきてくれた役者陣に感謝ですし、今後稽古を始めていく上で信頼感が増し、とても心強い存在です。

出演者一人一人が原発や被災地へのリテラシーをつけ、芯ができることで作品のクオリティが上がり、お客さんの体験としてより深く残すことができたら、結果として現地に還元できると思います。


横に広げる

この1年半考えてきたこととして、僕らにはまだ現地で作品を作ったり、お金を寄付したりはできません。柳美里さんというアーティストの方みたいに被災地に住み地域を活性化することも理想として考えてきましたが、そこまでできません。今の僕らには何か大きなことをする力はありません。
そこで考え続けて気づいたことは「大切なことは、派手なことをする必要はない」ということです。
大きな花火を打ち上げる必要はないのです。小さな蝋燭の火でいい。その小さな蝋燭の火を自分の手の届く範囲でいいので、隣の人へ灯してあげる。そうやって少しずつ広がって行けば、いつか花火よりも明るい火が光輝いている状況になると思います。
終わりはないですが、精一杯自分のできる形で現地と向き合っていく。それは、横のつながりを作っていくことでした。

僕らはたまたま、知り合いを現地に連れて行くことができました。そこまで出来ない人もいると思います。そう言った方は現地や原発のことに興味を持って調べることから広めていってもいいかもしれません。幸い震災から10年経ち書店には様々な種類の本が並んでいます。本を買うのは大変という人は、図書館やスマホでも調べることもできます。
あなたにできる最大限を探してみてください。

また、今回は僕らが被災地の方々から受けてきた愛を、どういう形で返していくかということを軸に話しましたが、人に恩返しをしたいと思うことはいろんな場面であると思います。そのときに真剣に自分のできる最大限を考え行動することが大切になってくると思うので、この記事を思い出してくれると幸いです。

相手に与えるギブ(恩返し)で大切なものは【大きさ】や【派手さ】ではなく【誠実さ】である

ではまた。
QoiQoi 吉次匠生



QoiQoiプロフィール
2018年2月9日に大橋悠太と吉次匠生によって結成されたアートユニット。 当初はano(アノ)として活動していたが、2020年10月1日より団体名を改めQoiQoi(コイコイ)として新たな活動を始めている。

また、「想像力を創造する」を信念に演劇、映像、インスタレーションなどさざまな分野を飛び越え作品制作を行う。団体名のQoiQoiもquality of imaginationが由来である。 また、社会問題から個人の体験まで幅広い事象を可視化し、常に観客に「当事者性」を提示する作品作りが特徴である。

このnoteでは作品制作のことを中心に、被災地のことや原発のこと、その他考えたことなど、読んでくれている方へなるべく為になるような記事や僕らをより知っていただける記事を書いていくことを目指しています。
もしも気に入った記事や活動の参考にして頂けたら、スキやQoiQoiをフォローをしてもらえたら嬉しいです。
また、僕たちの活動を応援・サポートしてくれる方を募集しています。
サポートして頂いた資金は現地取材や稽古など全て作品作りに使用させていただきます。
今後とも我々QoiQoi(コイコイ)をよろしくお願いいたします。

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