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ブランディングにおける、ファンと顧客の違い

Voicy「コテツのブランディングと商売の話」コラム
読めばブランディングができて商売が上手くなる

このコラムは、コテツがVoicyのブランディングと商売の話で語った内容を文章化し加筆したものです。
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Voicy No.0041 2021年9月21日収録
ブランディングにおける、ファンと顧客の違い

お金をたくさん使うお客さんを大事に

ブランドになることは「あなたじゃなきゃダメ」というファンがいる状態。ブランドになるとビジネスは相当楽しくなります。PRや集客や広告がブランドではなくて、それはブランドをつくる中の一部なのです。

ブランドづくりをしていく中で、「ファンや顧客を大事にしよう」となりますよね。俺がアドバイス、プロデュース、コンサルで入ったときも、大きな会社ほど「お客さんやファンの方との接点をどうしていますか」と言うと、決まって「お金をたくさん使ってくれているお客さんを大事にする」というやり方を採っていることが多いです。

それは当然だろう、何が悪いんだと思いますよね。

データを活用して、購入いただいているお客様を、商売の在庫管理でも使われる手法のABC分析で、購入金額とか購入回数とか、購入いただいている履歴上で長く買い続けてくれているとかをデータで分析して、重要度管理します。

ですから年間で買ってくれているお客様が一番上にそろっていくし、購入回数は多いほうがそろっていくし、長く買ってくれているお客様がそろっていきます。

上のほうからS客とか、ロイヤル客とか名前を付けて、「そこを大事にします」とやっているところがほとんどです。これは顧客管理で、ファンづくりとは全く別なのです。顧客とファンは全く違う。

今の顧客をS客、A客、B客のようにランク分けするのが悪いわけでもないし、もちろんやるほうが全然いい。けれども、それは、お金をいっぱい払ってくれている人に対して、どういう施策を取るかという顧客管理です。顧客メリットを出すという軸で話すときは、そうやって話します。

もう一個、ファン視点でご購入いただいている方を見る必要があります。それはどういう見方かというと、ファンの方というのは熱さですよね。ロイヤリティ、「あなたじゃなきゃダメ」度合いが高いというのが、ファンの方です。

「あなたじゃなきゃダメ」という、ファン度合いが高いけどあまりお金を使ってくれていない方もいるし、お金はたくさん使い続けて長く買ってくれているけど、ファンではない人がいるのです。

とある化粧品ブランドの話をします。

ここはブランドになりたいわけではないと思ったので結局お断りしました。何回かコミュニケーションを取って、仕事の相性確認をして、お受けできるかどうか検討していたんです。

ちょうど重要顧客イベントというのがありました。コロナ前です。ホテルの小さめの会場を借りて、ご購入いただいている方を集めて、商品発表プラス、ちょっとしたお食事を立食型でやって、そこにスーパーロイヤルに当たる方々をお呼びしました。100人はいなかったと思うけど、80人から100人ぐらいになると、お一人お一人と話すのはなかなか難しいわけです。

カスタマー担当の方がパーティーに入っていて接しますが、その途中で商品の説明的なことも、小高いステージがあり食事もあり、立食型で皆さん動きながら、ちょっと歓談をしながらだったんです。

もちろん段取りにも改善の余地在りでしたが、新しい商品の話をしていても、ご飯だけ食べていて友達同士の会話をして、半分以上の人は聞いてない。これは「聞いていないのがよくないですよね」ということではなくて、「なぜか」ということです。

購入金額と購入回数と購入歴の長さで集めても、決してその方たちのファン度が高いわけではないから、ほかでも同じぐらい買っていたりするわけです。ヴィトンで1000万使っています。すごいじゃん、これは重要顧客だねとなると思うんだけど、ヴィトンで1000万使って、グッチでも1000万使って、エルメスでも1000万使っているかもしれない。

例えばバッグを買うお客様を、顧客データ上の管理においてはヴィトンのバッグを毎年1000万買っていて、グッチでバッグを1000万買っていて、エルメスで鞄を1000万買っているお客様は、ヴィトンの特別な会に呼ばれても、いいバッグがあればグッチでもエルメスでも買おうと思っている。そういうお客様は、ヴィトンの「あなたじゃなきゃダメ度」が低いわけです。

そこを軽く見るのではなくて、「ファンと顧客を分ける」ことです。先ほどの化粧品ブランドの重要顧客イベントで、購入金額や購入歴が長い高い方を集めるのであれば、そういうふうな尺度に合わせたイベントをやればいいだけです。

それとは別に、高い金額をお支払いいただいてるわけでも購入歴が長いわけでもないけれど、ファン度が高くて、「このブランドじゃなきゃダメだ」というロイヤルティの高さがある方は、もっと少人数で呼んで、しっかりコミュニケーションを取らないといけないのです。

顧客はデータ上でわかるけれど、ファンはどうやってわかるの? という話になります。

ここで明確に言っておくのは、お金はあまり使わないけど、ファン度が高い人はいるかに対しては、明確にイエスです。ファンと顧客、顧客リストとファンリストがあって、顧客の場合はデータ上における抽出で済むので、SABCでやるのでもよし。そこにはクーポンを付けるのか、先行発売をお知らせするとか、メリットはいろいろあると思います。

それとは別に、ファンの方を大事にしたいとき、どうやって抽出するんですかと必ずなるのです。

抽出する方法は、販売員とかスタッフに聞いて、その人が感覚的に、これはうちにものじゃなきゃダメ、うちのブランドじゃなきゃダメというふうに熱い温度を感じた人たちを集めて、ファンの方を大事にするイベントを別に設けたほうがいい。そういう話を企業ですると、「ええーっ、そんなことやるんですか」となる。

アメリカの、コマーシャルをいっぱい打って露出をとにかく増やして、手に取ってもらう回数を増やせばいいという、分母を増やす型勝負のマーケティング的な話と、もうひとつ、熱いブランドをつくっていくときに、本当にブランドを愛している方をきちっと肌感で確認をした上で、そういうファン度の高い方に特別な体験をしてもらうために、手間と時間と愛情をかけて接していく方法があります。この両面をやったほうがいいということです。

ロイヤリティが高い人を大事に

こういう話をクライアントとか企業さんとお話をして、すごく強く感じることがあります。ブランドづくりは、効率を上げるだけではできません。効率化と真逆といっていい。「どれぐらいの規模まで、そんなことをするのですか」みたいな質問もあるけれど、数千億売っていても、やっているブランドは、それをきちっとやっています。

これもコロナの前ですけど、高級時計ブランドはファンを大事にすることが企業の生き残りで最重要。高級時計はすごく強くブランドの在り方を打ち出して「これじゃなきゃダメ」という方を抱えておかないといけない。今はスマホで時間が見られるから、時計は実用性で買われるものではないからです。そうなったときに、「こんな考えでつくっています。こういう歴史があります」と伝え続けることが、とても大事です。

コロナ前に、ある高級時計ブランドが、六本木のミッドタウンの横にある公園で、ポップアップストア、プラスちょっとしたミュージアムみたいなものを期間限定で建ててやっていたんです。

そこには奥に小さな20坪か30坪ぐらいの部屋があって、高級時計のCEOが来ていました。その時計のファン度が高い方と、そこでカウンターみたいなテーブルを挟んでお話をしているのです。

ガラス張りで少し見えるので、自分はその行為がとても興味深いから見ていたんですが、決してめちゃくちゃお金を使っているようではない方に、そのCEOが接していると、何人か見るたびにわかってきました。

見た目だけの決めつけはとても難しいところではあるものの、持っているものとか靴やメイクや着ているものから推察できると思います。おそらくそのブランドの時計を1個か2個しか持っていないかなという方にも、同じように時間を取って、お話ししているんです。めちゃ効率悪くないですか。

その時計ブランドは世界的なブランドだから、日本でポップ・アップ・ショップをやったときにも、もちろん顧客イベントでホテルとか別会場を借りてやっています。ただ、それとは別に、とてもその時計が好きなファン度の高い方、ロイヤルティの高い方に対応しているのです。

CEOは海外からそのポップアップのために来て、期間中ずっといるわけではないと思うのですが、その日本に滞在するわずか数日のうち、ほぼ個別ですよね。2~4人で入って、そのCEOがしゃべっています。効率悪いどころか、これって経済的インパクトはどれぐらいあるの、そこで時計がいくつ売れるのみたいな話になったら、ほぼ0です。


なぜこんなことを言うかというと、自分はその時計を1個しか持っていないのにインビテーションが来たからです。コテツ的な本音を言いますと、自分はロイヤリティが高かったのではありません。ブランディングの仕事をやっているから、お店に行ったらめちゃくちゃ質問するというのを、店員が「この人、めちゃくちゃこのブランドが好きなんだ」と察知した。自分はそこの時計は1個しか持っていなくて最近していませんが、率直に自分は研究で行っています。

1個しか買っていない自分が、おそらく数十個持っている人を押しのけて、そのCEOとおしゃべりした。もちろんブランドのことを自分は高めていきたいから、質問もすごくしたので、多分ロイヤリティ度評価がさらに上がったと思います。

だから顧客データ上におけるたくさん買っていただいている方に接する「顧客喜ばせイベント」とか企画と、ファンの方、ロイヤリティが高い方と接して、なおロイヤリティを高めていく、少数だけど熱狂的支援者をつくるという活動の両面が必要です。

こうなってくると、意地悪な人はこの質問をしたいと思う。
「今まで買ったことがないけど、
めちゃくちゃそのブランドにほれ込んでいる人はどう扱いますか」。

憧れ度が高い、これじゃなきゃダメと思っているけど、まだ買えていない人が多いブランドほどブランドの足場が固まるので、買っていなくてもファン度が高い方は、ファンづくりのイベントとかに呼ぶのは「あり」です。ただ、これはどういう頻度で、どういう規模感でやるかにもよります。

例えばエルメスのバーキンとか高級ホテル、リッツカールトン、ペニンシュラ、コンラッド、星野やとか、フェラーリ、ハーレーダビッドソン。今言っているのは、聞いたことはあるけど、手に入れて体験している人は、ものすごく人口比率的には少ないでしょう。でも、なぜこんなふうにブランドとしてステータスを保てているのか。

星野やとかこの数年、ほんとによく聞きますよね。1泊10万とか20万とか30万とか、日本であまりなかった高級路線における宿泊ビジネスです。星野やに泊まっている人は年間で20万~30万人もいないけど、星野や行ってみたいなとか、友達が行ったときの写真を見ていると、「もっと安いホテルでここがあるよ」と言っても、「一回、星野やに行ってみたいんだ」という人は、ロイヤルティが高いじゃないですか。

そこがめちゃくちゃ買ってくれている人より重要かというと、いろいろな捉え方があるので比較はできないです。けれども、お金はほとんど使ったことがないけど、「これじゃなきゃダメ、あなたじゃなきゃダメ」と言ってくれているファンを増やすというのはとても大事なことだし、それに対して、細やかに接していくのもとても大事。スイッチしないということです。浮気しないファン度の高い方ということです。

その温度感は人じゃないとわからない。まだ個人事業主の方とか、100億までは中小企業だと思っているんですが、中小企業で顧客の中でファン度の高い方のリストをつくりましょうと思ったら、できることが多いと思う。

まずファン度が高い方をきちっと抽出して、ファン度が高い方には、ブランドの深い部分とか考え方とか在り方をお伝えするイベントを、手間暇かけて、お金だけをかけるだけではなくやると、ファンの方が中心となって、ものすごく熱くて良いブランドができるんだよというお話でした。

以上、久々野智小哲津でした。


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