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ブランドは「お金たくさん使ってくれる」より「客層」が大事

Voicy「コテツのブランディングと商売の話」コラム
読めばブランディングができて商売が上手くなる

このコラムは、コテツがVoicyのブランディングと商売の話で語った内容を文章化し加筆したものです。
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Voicy No.0045 2021年9月27日収録
ブランドは「お金たくさん使ってくれる」より「客層」が大事


常連のわがままばかり聞いているうちに。

商売では、お客様管理の方法としてベーシックなやり方ですが、購入金額が高い順とか、来店頻度が高い順とか、累積(ライフ・タイム・バリュー)といって、生涯に払っていただく金額が高い方をExcelとかでソートして、一番上がS客、VIP客みたいに言う会社が多いですよね。顧客管理の基本ですので。そしてS客やVIP客にメリットを出していますよね。

スタンプ制度、ポイント制度はあっても全然構わないけれど、ブランドになることを考えたときに、単純に金額をたくさん使ってくれているからいいお客さんとするというのは、考えたほうがいい。

これも「あるある」というか、ちょっと笑い話的な部分を強調して話します。

駅前に小さなおすし屋さんができました。お金をかけて一枚板のきれいなカウンターにして、すし屋の大将がいて、後ろに掛け軸1個。大衆店としてお店を始めたら、近隣の常連のお客様が付いて仲良くなっていく。

最初は大将のこだわりでシンプルな内装でやっているけど、だんだん常連のお客さんが「釣りに行ったのでお魚をさばいてくれ」とか、お客さんが旅行に行って置物を持ってきたりしているうちに、店に置いたりするんです。最初は大将のこだわりでやっていた店が、連さんが持って来てくれるものが置かれていって、当初の方向性や内装から、だんだんずれていくのです。

例えば、常連さんが「おいしいケーキを買ってきたから、カウンターの周りのお客さんにもケーキをふるまって」となっていく。すると、おすし屋さんに初めて入ったお客さんが、カウンターで、なぜかショートケーキをデザートに食べている光景を目にすることになる。

当初はシンプルで、にぎりとおつまみで勝負していたおすし屋さんが、常連の人が好意で持ち込んでくれたさまざまなものによって、だんだん自宅化していきます。

初めて来たお客さんは、常連さんとそういうふうに人間関係ができていて、大将も人がいいからやっていると思わない。全国のお土産があって、木彫りの熊の小さいのが、大将の背中の棚のはじに置いてあると、どういう発想でやっているおすし屋さんだろう、みたいになってくるわけです。

これは、あえて漫画チックにお話ししました。

本当にブランドとして続けていくのであれば、高いお金を払ってくれていて、金額上はSランクとかロイヤルとかいうカテゴリーに入っているけれどブランドのスタイルに合わないお客さまに合わせていくよりも、ファン度が高くて、理想的な関係を保てる人を大事にするほうがいい。

すごく間違いやすいのですが、お金を払ってくれているお客さん、よく来るお客さんを中心にだけ考えて、徐々にブランドとしてずれていくという現象があります。

日本人には、「みんな一緒じゃなきゃダメだ」という考え方がすごくあります。きつい言い方をすると、エセ平等主義みたいなものがある。来てくださるお客様はみんな一緒だ、皆さん全く同じに接するべきだ、みんな同じで当然だという考え方は、商売に関してなら、ここ最近で近代の話です。

江戸時代の商売は、お客様によって出す商品が違うのは当然でした。

反物屋さんなら奥に反物がしまってあるから、お客様が来たときにお客様の好みに合わせて出すという側面もある。けれども、とても高い織の反物で数が少ないものに関しては、このお客様のときに出そう。こういうお客様じゃないと価値もわからないだろうし、買っていただける金額でもないだろうし、正直売りたくないというのもあって、出すものを選ぶわけです。今のようにネットで全部商品が見られるわけではないから。

江戸時代、生産流通が安定せず1点か2点しか入っていないとき、限定商法ではなくて、本当に数が少ないものだったら、あのお客様のときに出そうねというので、ほかのお客様が来て「秋の花柄の反物はないかい?」と言われて、それが該当しているとしても、これはうちの大事なお客様用だと思って、奥の棚の引き出しに入れたものは出さなかったりするわけです。

これは時代が違うから法律も違います。価格に関する法律で今はいろいろなルールがあるし、今は一物一価じゃないですか。一物一価というのは、法律的な問題で、例えばニコンのカメラは、基本的には世界中で公に表示された価格で売られているということです。

昔は情報共有がされる仕組みもなかったし、法律で一物二価でも三価でも罰せられなかった。相対売買といって、買う側と売る側の間で合意した価格でものが流通していくから、価格差と、売るものを出すかどうかは、非常に自由度が高かったんです。

ただ、全世界的な平等性はないから、どっちがいい悪いを自分は言いたいわけではないけれど、ブランドビジネスでいえば、このお客様にこれを売りたい。このお客様には、この価格でこれをご提案したいということが、今もやはりあるのです。

ハイブランドとかデパートの外商は、売る相手を選んで商品を用意します。エルメスのバーキンは普通にお店に行っても並んでいませんよという話をよく聞くと思います。いきなり行って、1個も買わずに、入って5分で「この店にあるバーキン、10種類ぐらい見せてくれよ」と言ったら、出してくる場合もあるけど出してこない場合もあるんです。


理想のファンの方と、理想の関係って?

エルメスのバーキンのように、お店に並べてない状態で買っていただきたい方にものを出すやり方とか、たとえお金をたくさん払ってくれても、自分のビジネスやブランドにそぐわない方に売らないってできますか、と思うはずです。しかし、これは普通のビジネスでも応用することは可能です。ファンづくりをするイベントに、人を選んで呼ぶことはできるでしょう?

俺はある高級時計にマーケティングで関わったときがあります。最初そこのブランドの顧客だったのですが、そのブランドのCEOがスイスから来たときに8名とか6名だけお声が掛かって、小さな料亭で一緒に食事をすることになりました。顧客イベントみたいに何百人を呼んでホテルでやるのとは別に、直接「親愛なる」みたいなかたちで声を掛けて呼んでくださった。

自分が高級時計のCEOと小さな食事を一緒に友達みたいな感じで呼ばれたとき、来ていた方は、決してたくさんそこのブランドの時計を買っている人ではなかったのです。

そんなことをなんで言い切れるのか。

俺が呼ばれたときは、1個か2個しか多分持っていなかったからです。その時計を10個も20個も持っている人は日本にもいます。でも、呼ばれている方もみんな、そこのブランドで高いお金を使ったから特別に個人的な食事会に呼ばれているわけではなかったのです。

それってありなんですよね。ブランドとか商売をされているのであれば、この方はファン度が高く、ファンとして理想だ、大事にしたいという人を大切にしたい。通常オープンでやる企画では「こういう人に来てくれ」というのは、はっきり言えないと思います。

でも、直接ご連絡して「本当に少人数の、個人的なファンの方々への感謝の機会です」とやればもちろんできるし、商品のご案内も表だったところではやらなくても、「これはこういう人しか買ってくれるな」ともできる。

ポイント制度を導入していたり顧客ランクを明確にしたりして、例えばシルバー会員とかプラチナ会員とかやっているところではオープンでもやっているけれど、それは直接ご案内をしたらいいだけです。通常はオープンで手に入らないという限定商法ではない現実的なやり方として、大事にしているファンの方に、大事なものを直接ご提案したらいいだけです。

もちろん今はネット時代というのもあるし、ハイブランドでもネットショップで全部価格を付けて並べているでしょうが、あれには並んでいないものがいくつかあります。大事なファンの方や重要視したい方には、ダイレクトにそういう接し方をしています。

お金をたくさん使ってくれる人をとにかく大事にしていると、「あんな人が、あんな扱いを受けているのか、あのブランドは」ということになる。ブランドにとって理想的ではない人を、お金をいっぱい使ってくれているからといって重要視していると、本当にそのブランドとして理想の関係を保ちたい理想のファンの方々が、離れていくことがあります。お金をいっぱい使っていても理想的ではない人には、ちょっと距離を置いていいんです。

個人のブランドでもそれが言えて、「ああいう人と付き合っているのか」となって、友達やめようかなということがあるでしょう? 

この前YouTubeを見ていたら、あるタレントユーチューバーが、反社と思われる人とのコラボで、その人を持ち上げていました。自分はそれを見て、この人と仕事をやるのってあれだなと思ったんです。そういうのはあるでしょう?

ですから、個人のブランドでも、ものすごく自分にメリットや利益便益があって、いいものとか情報とか関係をつくってくれている人だとしても、その人とつながりを深くしていると、自分を本当に大事に思ってくれている人が愛想を尽かしちゃうなという場合は、個人のブランドでも判断していく必要はありますよね。

いいファンの方、自分が理想とする関係を保てるファンの方を大事にして、いいブランドにしていきましょう。

以上、久々野智小哲津でした。


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