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ビジネスのプレミアム化は、ブランドにつながるのか?

Voicy「コテツのブランディングと商売の話」 コラム
 読めばブランディングができて、商売が上手くなる。

このコラムは、コテツがVoicyのブランディングと商売の話で
語った内容を文章化し加筆したものです。
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Voicyもお聞きください。

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Voicy No.0027 2021年8月31日収録
ブランドのプレミアム化は、ブランドにつながるか?

希少性でブランドになれるのか?

「なぜ個人のブランディングがうまくいかないのか」という放送を聞いてもらって、ジュンさんからコメントを頂きました。

『何のためにやっているのか?その顧客は何を得られるのか?
顧客は誰なのか?という点ではマーケティングも同じだと思うのですが、
違いはそこに熱狂的支援者がいるか?ビジョンの共有があるか?
という点でしょうか。

 また、マーケティングにおいて各ブランドがプレミアム化を行って
希少性を高め購買順位を上げていると思うのですが、

希少性があると欲しくなるので、あなたじゃなきゃ駄目というものに
近いとは思うのですが、あおりともとれるので、
小哲津さんのいうブランドとはまた違うと思うのですが、
違いを教えていただけないでしょうか』。

続けてジュンさんからコメントを頂いていて、
『質問した後に気付いたのですが、プレミアム化というのは
顧客が常にいる状態にする集客なので、
それで集客した顧客が熱狂的支援者になってもらうのが
ブランドづくりの活動なのかなと思いました』。

ジュンさんは熱心に聞いてくださっていて
知識・知恵が発展しているので、結構高度なコメントです。
複合した内容をまとめて、
ジュンさんの中で勘所を突くような答えを求めていらっしゃると思います。

コメントのレベルが高いので、いくつか要素を整理して、
1つずつお答えしながら、
今回のテーマの「ビジネスにおいてプレミアム化は、
ブランドにつながるのか」について話します。

これは結構大きな会社で、500億、1000億ぐらいやっている会社の
マーケティング部門とかブランド関係をやっている方と話しても、
なかなかこの辺が整理しきれていないこともありますが、

ブランドになったほうが、ビジネス的には間違いなく有利です。

ブランドになることによって、
ファンの方が「あなたじゃなきゃ駄目」という状態で、
無条件に選択をしてくれることになる。

優劣を超えて、相対比較や数値比較を超えて選ばれるようになるのは、
ビジネスとしては有利ですよね。

ここからがとても重要です。

売りたい商品があるので、
売り込むためにブランドにするという考えでいくのか。

これを大事にしたい、こういうことを守り通したいと考えていて、
ファンの方、お客さまと大事にして、その価値観を共有し合うのか。

将来のビジョンとかブランドとしての未来を
共有し合える状況ができているから、
そこのブランドの商品が欲しくなるというのは、

売り込むためにブランドにするのとは、全く逆の状況です。

例えば、これはいいとか悪いとかじゃなくて、それをブランドにしなくていいと俺が思うケースについてお話しします。

「韓国に行ってみたら、このコスメがめっちゃ売れているらしいんです。
これを日本で売ろうと思うので、
マーケティングとかブランディングをやりたいんです」となって、

「その商品は、結構使ってみて、すごくいいと思ったんですか」
という話をすると、
「いやいや、自分はそういうのがほんとわからないので」みたいな。

自分は、わからない商品を売るなとも思っていないです。
全然そういう商売のやり方でいいと思う。
けれどもブランドというのは、そういうものではない。

売れるんじゃないか、売りたいんだというものがあって、
それをめちゃくちゃ露出したり、イメージアップでメッキを付けたりして、化粧をするとブランドになるんじゃないかという時点で、
それはもうブランドではありません。

世の中でブランドといわれているもの、
例えばスターバックスや無印良品、ヴィトン、シャネルというのは、

そもそもお客さまとかファンが「あなたじゃなきゃ駄目」と言ってくれる
何個も前に、ブランドオーナーやブランドの中心で関わっている人が
「これじゃなきゃ駄目」というものがある状態です。

「これじゃなきゃ駄目」というのは、
売るために無理やり置いているのではなくて、

売れても売れなくても、損だろうが得だろうが、
このブランドをやっている上で外したらいけないし、
めちゃくちゃ大事にすることだという価値観・思想・哲学が一番上にある。

それを商品に載せていくから、その価値観・哲学・思想に共感した人が、
結果的に商品を買っているだけです。

これには別に思い入れもないし、
使ってもいいか悪いかの違いは正直わからない。

「広告費をかけてマーケティングをばーんとやれば、
売れると思うんだよね」というのは、それで売れることもあるので、
それでいい。

でも、それを本当にブランドにしていきたいなら、お客さまやファンの方に「あなたじゃなきゃ駄目だ」と思ってもらう状態をつくるために、
売っている中心人物、ブランドオーナーが「これじゃなきゃ駄目だ。
これであるためには、これが大事なんだ」と考えることです。

「大事にしている流儀を変えたほうが儲かりますよ」といったときに、
「じゃあ変えちゃおうよ」という時点でブランドではなくて、
よく売れている商品になる。

「それならそれで、
そういうビジネスをやろうと思ってやったほうがいいですよ」と
俺はいつも言うんです。

ブランドというのは在り方なので、この違いが大きいのです。

実例を挙げたほうがわかりやすいけれど、
こういう多くの方が聴いている放送で言うのはとても難しい。
困るなあ。

そのブランドがいいとか悪いとかじゃないということで聞いてください。
日本で共通に知っているもので、その方の存在がわかりやすいので
例に出すと理解いただければと思います。

矢沢永吉さんというアーティストがいらっしゃいます。
もうカリスマ的な、60を超えて、いまだ武道館を満席にするという
矢沢永吉さん。

当然、昔から「この方じゃなきゃ駄目」というファンの方がいますよね。

その矢沢永吉さんが最近売れている音楽、YOASOBIを聴いて、
「駄目だ。今の矢沢永吉スタイルじゃないんだ。俺もネットでバズりたいからYOASOBIみたいな曲出そうよ」となったら、
ファンの方はどう思いますか。

もちろん、矢沢永吉さんはすごいロングセラーというか、
国民的ブランドの1つだと思うので、
長くミュージシャンとして活動されている中でトレンドを取り入れたり、
時代の要請に乗ったりするところはあると思う。

けれども、矢沢永吉さんが信じる音楽をやっているから
ファンの方が支持をしている。

矢沢さんが長くアーティストをやられていく中で、
サザンがはやったときに「俺、サザンみたいな音楽をやるわ」
ミスチルがはやったら「ミスチルみたいな音楽をやるわ」
AKBが出てきたら「AKBみたいな音楽をやるわ」となっていたら、

矢沢永吉さんをずっと「この人じゃなきゃ駄目だ」と思っていた
ファンの方は、絶対付いてこないじゃないですか。

なので、ビジネスにおけるブランド論を考えるとき、
ビジネスでブランドになるかを考えるときに、
「商品を売るためにブランディングをしなければいけない」というのは、
その言葉自体がズレています。

抽象概念を話してしまったので、
次のチャプターでもう少しかみくだいて説明します。

売るために何でもやる?

実際、自分は今も会社をいくつか経営をしているし、
クライアントさんは20ぐらいで、
プロジェクトも30強ぐらい動いていると思うんです。

毎日商売で真剣勝負しているので、
理想だけ言っても売れなかったら商売が成り立たちません。
会社がつぶれちゃう。
損得超えて、歯を食いしばって売れないことを守り通すことには、
意味がないと思っています。

でも、ブランドというのは、「いくらなんでも、売れるからといって、
それを取り入れたら俺たち終わりじゃん」みたいなことがある。
そこに普通の商売としてやっていくか、ブランドになろうとしてやっていくかの分岐点があります。

話はジュンさんの質問に戻ります。
「マーケティングにおいて各ブランドがプレミア化を行って希少性を高め購買順位を上げていると思うのですが」というところです。

施策として、ほんとはたくさんつくれるんだけど、それをつくらず、
飢餓感をあおって売るというマーケティングとかセールス手法に関しては、需要と供給のバランスの中では「あり」だと思っています。

ただ、それで購入を希望している方に
不幸とか不都合が起こるようなことは、もちろん駄目です。

ただ、これをいくつつくろうかといったときに、
「大体需要がこれぐらいだから、同じぐらいか、この先も長く
売っていきたいので、最初からつくり過ぎないほうがいい」
みたいな議論は、当然あると思う。

マーケティングやセールス手法における「希少性が高いと見せれば
売れるんじゃないか」みたいなことをずっと繰り返しやっていって、
本当にファンの方が付いてくるのかどうかは、
考えたほうがいいと思います。

いま世の中的には、
顧客心理が操作できることになっているでしょう?

恋愛のYouTubeを見ても、「昔アメリカの研究では、
こんなふうになると人は好きになるというデータがあるんです」
みたいなことを言っているけど、
ほんとにテクニックだけでモテるようになるなら、
みんなこんなに苦労しないって。

なので「テクニック的に希少性をうたえば、購買の気持ちは
引っ張れますよね」ということばかりずっとやっているような人から
買いたいかというのはある。

ブランドになるための希少性というのは、
本当に大事にしていることを守り通していった結果です。

ある程度の数で限界が来る事柄に対して、ファンの方が
理解してくれるという関係でないとブランドにはならないのです。

「ビジネスのプレミアム化はブランドにつながるのか」については、
演出としてのプレミアム化がそんなに長く続くとは,、とても思えません。

俺がアドバイザーで入ってプロデュースするのであれば、
最初は話題づくりでそうやってみようというのは当然あってもいい。
けれども、ずっとそれでお客さまやファンの気持ちを
コントロールしようとすると、逆に続かないです。

「ブランドのプレミアム化はビジネスにつながるのか」に関して、もう少し事例を挙げたいのだけど、
企業名とかタレントの活動を元に踏み込んだ意見を言うと、
ご迷惑が掛かったり誤解を生んだりするので、

有料のクローズドのセミナーとか小哲津ゼミという勉強会とかで
話すことはありますが、事例はこのぐらいにしておきます。

ジュンさんから頂いた質問で、
「マーケティングにおいて各ブランドがプレミアム化をやっている。それがブランドにつながっていくものか」に関しては、

単純にプレミアム化をしたからといって、
ブランドになるわけではないということ。

さらに、ジュンさんから追加のコメントで、
「集客した顧客が熱狂的支援者になってもらうのが
ブランドづくりの活動かなと思いました」とあります。

その通りです。

ただやみくもに高いものを買っていただくような購入の動線をつくれば、
それはブランドになるかというと、
うまく買ってもらっているという状況しかつくっていません。

ビジネスモデルとして、お客さまが少しずつ高いものを買うように
設計をするのはありだけど、
単純にそれをやってもブランドにはならないのです。

高いものをご購入いただくプレミアム化をするとともに、
ファンの方に自分たちのブランドの大事にしていることをきちっと伝え、
ビジョンを共有し、クオリティーやプロダクトの品質を
上げていくことをしっかりやったほうがいい。

ただ単純に高く売ること自体で、ブランドになったりはしないのです。

以上、久々野智小哲津でした。


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