4月4日◆本物のミニマリストに出会った話(中編)
バリ島の旅で、本物のミニマリストに出会った話(前編)はこちら
彼女はナチュラルなメイクをして、カジュアルだけれどスポーティーすぎない服装・つまり”きちんと”していたので、まさか最小限の荷物で旅をする人だとは微塵も思っていなかった。けれど、よく見たら前日に着ていたと思しき服が一式、手洗いされて干されていた。5日間でバリと日本を往復し、バリ島の中で2エリアを巡る旅だとしたら、自分はきっと面倒くさがって日数分の着替えと下着を持っていくだろう。けれど彼女のリュックには、着替えはせいぜい1セットしか入らないはずだ。
実は荷物の少なさそのものよりも、海外に普段使いのリュック1つで飛び立てる覚悟がすごいと思った。コロナ禍で家中のものをたくさん手放した時期に読んだミニマリストの本の中にあった、”荷物の量=不安の量”というフレーズを思い出した。彼女の中に全く不安がないかはわからないが、少なくとも、まだ起こっていないことをあれこれ心配するタイプではないだろう。
私は彼女に昔から身軽に暮らしているのか聞いてみたら、少し考えてから「そうかもしれないですね。持ち物はずっと少ないです」と言った。ただ、ミニマリストブームで独り歩きしている「ミニマリスト=必要最低限のものだけで暮らす」という概念には賛同していないし、自分のことを特にミニマリストとも思ってないとか。しかし、私に言わせてみれば、彼女こそが本物のミニマリストなのではないかと思うのだ。まだ20代という若さにおいて既に、自分にとって本当に必要なものや持っていて心地よいものを知り尽くしているし、なによりもそのスタイルを長年貫いているのである。
渡航の前日に「旅行の前日なのにワクワクできない理由」でも書いたことなのだが、私は荷造りがとても苦手だ。それは、現地で間に合わせの物を無駄に買いたくないという気持ちと、身軽に旅をしたいという気持ちの折り合いがつかず、荷物の取捨選択に時間がかかるからだ。まさか同じ部屋に滞在している女性が、これほどのミニマリストだったとは!その宿がエコホテルだったこともあり、日々の生活における志が近いことは、既にそれまでの会話中で確認済みだった。
私は彼女がどのように旅の荷物を選別しているのか、思い切って質問してみることにした。(後編につづく)