見出し画像

4月2日◆本物のミニマリストに出会った話(前編)

先日旅をしてきたバリ島では基本的にグループで動いていたのだが、途中一人で行動する日程が何日かあったので、前々からぜひ行きたいと思っていたホテルに宿泊することにした。個室は予算オーバーだったのでドミトリールームを選んだところ、定員が8人の部屋にその日は2人だけだという。もう1人がたまたま日本人同士だったのですぐに会話がはずみ、結果的に彼女とは2度の食事とヨガを共にすることになった。

もちろん直感的にヤバいと思ったら近寄らないようにするが、一人旅の途中で日本人に出会うと、光の速さで距離が縮まる場合が多い。お互いにしがらみがないのと、知らず知らずのうちに緊張していたのが緩むからか、人には言えないようなことがサラッと口から出てくることもある。彼女とは歳が20近く離れていたが、出会って30分と経たないうちに割と深い話まで発展した。自立していて心がキレイな、美しい女性だった。

そんな彼女が使うベッドの方を何気なく向いてみたとき、一瞬「あれ?」っと思った。スーツケースらしきものが見当たらないのだ。最初はただ自分の位置から見えなかっただけかと思って深く気にとめていなかったのだが、何度目を向けてもそれらしきものがないことに気づいた。彼女の旅程は5日間だと聞いていたので、スーツケースじゃなかったとしても、バックパッカーが背負うくらいの大型リュックがあるだろうと思っていたのだ。私は盛大に広げたスーツケースの中身を整理しながら、思い切って聞いてみた。

「あの〜、もしかして荷物って、あそこにかかっているリュックだけですか?」

「あ、そうです。普段使っているリュック1つで来ました」

衝撃だった。その小さなリュックは、20代の女性が5日間の海外旅行をするキャパとは到底思えなかったからだ。(中編つづく)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?