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栗のはなし

渋皮煮

毎年作るのは、栗の渋皮煮です。
あの、脳天が痺れる甘さ、渋皮に守られた栗の風味と食感が口の中に広がる幸せ、堪りません。たくさん作って冷凍した年もあったけれど、結局食べたいのは栗が出回っている時期。食べきれる分、作業できる分だけを作るようにしています。

だいたい1キロが丁度よい

鬼皮剥きは楽しい時間

硬い鬼皮のふやかし方は、一晩水に漬ける方法と、剥く直前に沸かさない程度に茹でて(栗に火が入らない用に注意しながら)ふやかす方法がありますが、皮むき作業が遅く、何度も茹でなおした経験があるので、私は気長に一晩水に漬けて待っています。

皮むきは、翌日も手の傷みが取れない程の力作業ですが、私はこの鬼皮剥きが大好きです。ペリペリと剥がれていく感覚、渋皮を傷つけずに剥けた時の達成感。なんとも心が満たされていく瞬間です。どうせ急いでも、失敗するだけなので、一日仕事だと割り切って休憩しながら取り組めば、渋皮煮も気負わずに作ることができます。皮むき作業で疲れてしまったら、冷蔵庫にしまって続きは翌日、、、という年も。

貝印の栗剥きカッター(愛用中)

包丁での皮むきは、失敗率が高いので、私はいつも栗剥き専用のハサミを使っています。刃の部分で鬼皮に切り込みを入れて掴んで剥いていくと、余計な力も加わらず、怪我もしづらいのでオススメ。

渋皮を傷つけずに剥くのは本当に至難の業。
1ミリ程度の穴で致命傷。
初めて渋皮煮を作った時、細かな傷をたくさんつけてしまって、それでもこの位なら大丈夫でしょう。と高を括って煮たら、グッズグズに煮あがってしまい、やはりレシピ本に書いてあることは本当なのねと落胆したものです。
味は美味しいけれども、あれは渋皮煮ではなく渋皮煮味の栗ペースト。
恐るべし、渋皮。のちっちゃい傷。

そういう訳で、少しでも傷をつけてしまった場合には、その栗には渋皮煮を諦めて栗ごはんになってもらっています。

果てしなきアク抜き

アク抜きは重曹を加えて計3回。(たっぷりの湯に重曹小さじ1)
1回目の後で、余分な筋と繊維を取り除いて、追加で2回。そして重曹抜きのために最後に茹でこぼし1回。
アク抜きはキリが無くて、3回やっても、まだまだ出てきそうな雰囲気を漂わせるのが栗です。もっとやった方が良いのでは?と思わされても、そこは3回で十分。またまた、初めての渋皮煮体験話ですが、どんどん出てくるアクに、3回では気が済まず、合計5回ほどアク抜きをして、重曹臭さが抜けなくなったことがあります。結局5回やっても、アクは出てくるのです。栗ってきっとそういうものなのです。

アク抜き1回目の写真

大変なのはアク抜きまでで、あとは自分好みの甘さで煮るだけ。
これでもか、こんなにもか。というほどの砂糖を投入して煮込み、粗熱が冷めたら甘さの確認をして、一晩置いて完成です。

水800ml・きび糖400g(甘さ控えめ)ちょっとアサリに見える
落し蓋をして20分ほどコトコト 仕上げにラム酒も少々

大変だけれども、毎年作りたくなってしまう渋皮煮。
子どもたちも喜んでくれる、秋の楽しみのひとつです。

きちんと煮汁に使って冷蔵すれば1か月くらいきっと大丈夫(食べる前に要確認)       心配なら冷凍がオススメ

 栗と言えば『天津甘栗』で育ってきました。栗ごはん、甘露煮、渋皮煮。栗を使った手料理を実家で食べた記憶はありません。味なのか、作業工程なのか、はたまたその両方か、季節感は大事にする人なので、おそらく母は栗が苦手だったのではなかろうか。とは言え、栗の季節になれば、おやつに天津甘栗をよく買ってきてくれました。広げたティッシュの上に置かれていく、母が剝いてくれた甘栗を妹と取り合って、あっという間に一袋を空にして叱られる。あの頃のことは、すぐに情景を思い浮かべることが出来るのに、もう20年以上経ってしまったなんて。用意して与えて貰うことが当たり前で、母の好みを実はあまり知らないという事に、近頃ようやく気付いた四十路の娘です。ずいぶん遅くなりましたが、とりあえず、渋皮煮は食べられるのか。聞いてみようと思います。


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