【日記】モートン・フェルドマン

 バカみたいな話だが、最近人の名前が覚えられない。昔からそうだったかもしれない。今はもっとひどい。嘆いていても仕方がない。どこかで、モートン・フェルドマンという名前を知った。現代音楽の作曲家らしい。図形による採譜を行い、スローペースな長大な音楽を作ることで知られる。ジョン・ケージと同時代の人で、ジョン・ケージから評価もされいてたとのことだ。
 試しに、ユーチューブに上がっていた一曲を聞いてみた。キング・オブ・デンマーク、デンマークの王、という題名の曲らしい。伝統的な西洋の音楽では聞きなじみのない打楽器で構成されている。これまた西洋の伝統的な音楽では標準的な、遅くてもラルゴで60~80くらいのテンポよりずっと遅い、一つ一つの音が、何秒とかで数えられるくらい、散在しているような曲だった。
 似たような構成で、もっとスローであったような記憶がある、ジョン・ケージの「龍安寺」という曲がある。だから、誰を評価したというよりも、もともと同じ圏内で活動していた作曲家同士だといっていいかもしれない。
 時間の幅が、普段と違う音楽を聞くというのは、是非とも必要な経験だと、僕は思っている。時間の断層というか、流れの違いをあのように表現できるものは、音楽でしかない。音楽は、とりあえず流せば聞き取ることが出来るというメリットもある。当たり前のように聞こえるが、小説だと読み進めるまでのハードルが、音楽を流していることに比べてはるかに高いと思う。
 この動画は、NHK-FMの採録で、しかもかなり古い音声であるらしい。七十年代。音楽が、現代的、と感じていても、それは七十年代の新しさで、今の音楽がそれよりも新しい、いや、新しい古いというだけの軸では足りないのだが、ラディカルに感じられるとか、そういう感触があるのかというと怪しい。名前を憶えて、どんどん聞いていかないといけない。

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