ゆっくり料理をつくる朝・・・なすとトマトの煮込み。
時々、「料理のための料理」をします。
家族のためでも生きるためでもない、作ることをただ楽しむために。
独りきりの午前中にやるのが好きですね。
小さな音で、好きな音楽をかけて。
晴れていればうれしいけれど、雨の日も集中ができて、いい。
何を作るかは、その日の気分まかせ。
でも、種類は「煮込み料理」と決めています。
わたしの料理はレシピを見ながら、少しアレンジする程度。
でも、これで十分なのです。
レシピを編み出す人には、いつも感謝を捧げます。
おかげでわたしも料理の楽しさを、味わうことができるから。
人の才能に助けてもらえる世界で、本当に良かった!
「ゆったり」という贅沢を噛み締めながら、包丁をにぎります。
私もどこかで誰かの役に、少しは立てていたら良いなと思いつつ。
基本せっかちなわたしですが、この日ばかりは「ていねい」を心がけます。
皮剥き、みじん切り、あくとり。
落ち着いて、集中して手を動かしていく。
こんな時は料理人である父が、思い出されます。
父は一つ一つの作業が、本当に本当にていねいなのです。
プロとは手間を惜しまないこと。
決して作業を端折らないこと。
私は父の背中から、言葉にならない教えを学びました。
父には遠く及ばないけれど、今日は私も端折らずに・・・。
そうだ、昨日買ったトマトをお日様に当てなくちゃ!
もう少し赤みが欲しかったんですよね。
今日このトマトは使いませんが、こんなところもていねいに。
すべての材料をお鍋に入れて、火にかけること20分。
この待ち時間がまた、いいんですよね。
本当は長く煮込む料理が好きですが、今日は時間が取れず短めにしました。
ふとベランダに目をやると、小さな来客が。
うちのオリーブの木で、鳥がおしゃべりをしていました。
これはよくある光景で、密かに光栄に思っていることでもあります。
今日はすずめが3羽。
そのさえずりを聞くために、音楽を止めました。
レースのカーテン越しに、乳白色の光が差し込む中で。
耳は鳥の声を聞き、肌には陽の温もり。
できあがりつつある料理の香りが、鼻をくすぐります。
そして心は、たとえようもない幸せを感じていました。
ごく平凡なわたしの人生。足りないものを数え始めたら、キリがない。
それは何も変わっていないのに。
今、充分に満ち足りています、怖いぐらいに。
これ以上望むのもは何もない。
明日には忘れてしまうかもしれないけど、この幸福こそが本物だとわかる。
生きることそのものだと、わかる。
谷川俊太郎の詩を急に思い出しました。
いま生きているということ。
それはミニスカート。
それは鳥の歌。
それは日の光。
それは・・・完成を告げるタイマーの音!
キッチンに戻って、お鍋のふたを開けました。
小皿にとって味見をひとくち。
うん、いい感じ!
火を消す時にポフって小さい音がするのが、とても好きです。
「はい、できあがり」と、言われている気がするから。
やっぱり火を使って作るのがいいな。火の力を見ていたい。
さあ、料理の時間はおしまいです。
ここからは、お食事の時間。
もう一度音楽をかけて、食器をセッティングして。
ゆっくり味わいながらいただきます。
これがわたしの料理の日。
ささやかな幸せのひとときです。
ご興味あれば、参考に・・・
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