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MOVIE OF THE YEAR 2021 邦画編

もう2022年も早くも1ヶ月経ってしまいましたが、2021年の映画振り返りを書きたいと思います。
2021年は映画館での年間視聴本数が322本(!)と過去最高本数を記録しました。
1年は365日しかないはずなんですが、自分でもどうやって見たのやらと思ってしまう数字ですね。
ただこれはやはり新型コロナウィルス感染症の影響で旅行など他のイベントごとが軒並みなくなってしまったことが要因でしょうねえ。
前記事でもそれが明らかになっています。

でもまあ映画に関しては充実の1年だったとも言えるのではないでしょうか?
ということで、まずはMOVIE OF THE YEAR 2021 邦画編をお送りします!
(なお、自分が見たタイミングで2021年だった作品としていますので、製作、公開年が異なる場合があります。ご容赦ください。)


「映画大好きポンポさん」

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杉谷庄吾【人間プラモ】のWebコミックのアニメ映画版。映画プロデューサーのポンポさんによって抜擢された新人映画監督ジーンが、念願の映画製作に乗り出す姿を描く。
映画業界の裏側、とまでは行かなくても映画製作の産みの苦しみのようなものはしっかり描かれている。何より主人公の成長譚として成立しているし、大好きなものへの、大好きだからこそのこだわりが感じられる。平凡で退屈な日常でも映画があったから救われた、そんな気持ちを抱いたことのある人全てに捧げられる作品だと思います。


「君は永遠にそいつらより若い」

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芥川賞作家・津村記久子のデビュー小説の映画化。就職も決まり卒論こそあれどどこか手持ち無沙汰のような状態の女子大生が、葛藤を抱えながらも成長していく姿を描く。まずは今どきの大学生の描き方に非常にリアリティーを感じさせられる。全体としては日常系の青春物語といった風情なのだが、"気づくこと"の大切さを訴えてくる作品でもある。主人公のホリガイが児童福祉の仕事を選んだきっかけや、ホミネくんがしたかったことも、その気づきの基づいている。タイトルは主人公のセリフとして出てくるのだが、とっちらかって不器用だからこそ伝わる言葉もあるのだと思います。


「アイの歌声を聴かせて」

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「イヴの時間」「サカサマのパテマ」の吉浦康裕が原作・脚本・監督を務めた長編アニメ映画。近未来、地方都市の高校を舞台に、孤独な少女サトミのクラスに転入してきたAIのシオンが巻き起こす騒動を描く。テーマがいかにも現代的で、地方都市における大企業の光と影、AIのAIたるゆえん、などなどを高校生の青春ストーリーにうまく飽和させている印象。シオンの声を務めた土屋太鳳はいかにもなキャラクター作りで好感。


「サマーフィルムにのって」

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勝新の時代劇をこよなく愛するハダシが、自分が所属する映画研究会で念願の時代劇の撮影を実現するべく奔走する姿を描く。映画内で映画を作る映画はハズレ無しと個人的に思っているんですが本作もそれに該当する出色の出来です。主人公だけでなくそれぞれのキャラクターの描き方も丁寧で、青春のすべてを捧げる何かを持っている人はやはりキラキラして見えます。随所に映画作りのこだわりも感じられるし、ラストのまとめ方もいかにも青春物語で爽やか。


「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」

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吾峠呼世晴の同名コミックのアニメ映画版。家族を鬼に殺され妹も鬼にされてしまった少年・竈門炭治郎が、鬼殺隊として指令を受け、数十人の人が行方不明になっているという無限列車に乗り込み、鬼たちと対峙する。記録的大ヒットを遂げついには「千と千尋の神隠し」の興行収入を超えた作品として、2020年公開ながら2021年までのロングランとなったというのもうなずけます。原作のイメージそのものでシリアスとデフォルメの使い分けも良く、王道的なストーリーながら大人でも存分に楽しめます。家族や仲間を思う主人公の姿を見て、今の子どもたちがどのように成長していくの方が楽しみですね。


「ドライブ・マイ・カー」

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「ハッピーアワー」「寝ても覚めても」の濱口竜介監督が村上春樹の同名短編小説を映画化。急死した妻の喪失感を抱えながら、舞台の公演のためにやってきた広島で、専属のドライバーとして紹介された若い女性とともに徐々に喪失感から立ち直っていく姿を描く。独特の間のとり方、劇中劇として展開される「ワーニャ伯父さん」、広島の風景もうまくマッチしていて、3時間近い長尺ながら全く飽きさせないのは素晴らしい。世界中で称賛されているのも頷ける傑作。アカデミー外国語映画賞なるか?


「ヤクザと家族 The Family」

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「新聞記者」「宇宙でいちばんあかるい屋根」の藤井道人監督によるヤクザ映画。ヤクザの親分に拾われ裏社会で頭角を現していく主人公と、時代の流れと暴対法によって居場所がなくなっていくヤクザの悲哀を描いています。主人公の綾野剛はもちろん、ヒロインとなる尾野真千子、組長役の舘ひろしなどキャストが軒並み素晴らしい。藤井監督作品はとにかく夜の描写が印象的。本作では工場の排煙ともあいまってその構図を眺めるだけでも美しい。


「そして、バトンは渡された」

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2019年の本屋大賞を受賞した瀬尾まいこの同名小説の映画化。
血のつながっていない2組の親子を中心に、複雑な境遇にめげずに成長していく主人公の姿を描く。叙述トリックを煽るかのような宣伝はともかく、そういう仕掛けがあろうとなかろうと家族の、人間のドラマとして完成度が高い。アンサンブルキャストが軒並み好演で、とりわけ自由奔放な"母親"の石原さとみが圧巻。彼女の存在だからこそキャラクターの設定がより活きた印象。素直に感動できる一作。


「花束みたいな恋をした」

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「東京ラブストーリー」「カルテット」の坂元裕二のオリジナル脚本の映画化。終電を逃したことで出会った2人の男女の5年間にわたる恋愛模様を描いた作品。菅田将暉と有村架純の自然体な姿が印象的で、肩肘張らずに見られるラブストーリーとして仕上がっている。衣装、小道具、そして音楽、本、映画といったサブカルチャーにまでも気を配っているのがわかる緻密さも素晴らしい。スマッシュヒットもうなずける共感性の高い作品。


「空白」

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「ヒメアノ~ル」の吉田恵輔監督が実際の万引き事件を元に書き上げた脚本を映画化。万引きと疑われてお店を飛び出して交通事故死してしまった少女の父親が、その原因となったスーパーの店長を追い詰めていく・・・。誰が被害者で誰が加害者か、親とは、子とは、そんな様々な良くも悪くも人間らしい要素が渦巻いている作品。アンサンブルキャストが素晴らしく、重厚ながらも説得力のある作品に仕上がっている。


以上、10本を選びました。

 惜しくも選外となった作品も含めて、今年の傾向としては、
まずは、アニメ作品強し!ですね。

 上記の3本の他にも、圧倒的な世界観、ビジュアル体験、音楽の素晴らしさが伝わってくる細田守監督の「竜とそばかすの姫」、ついに完全完結となり、これまでの謎に対するアンサーにもなっている「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」、小品ながら地方都市のひと夏の爽やかな青春を描ききった「サイダーのように言葉が湧き上がる」「サマーゴースト」などが印象的でした。

 漫画原作で言えば、ついに実写映画版も完結となった「るろうに剣心 最終章 The Final」はこれまでのキャストがオールスターで勢揃いしていてまさにラストにふさわしい作品になっていましたし、「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」はとっちらかっていた前作と比較すると本作のほうが作品としてもアクションでもクオリティーが高くなっていた印象です。「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜 ファイナル」は前作以上に若干悪ノリが増えていた気もするけれど安定して楽しめる作品でした。「劇場版 きのう何食べた?」はドラマシリーズとしても人気ですが、とにかく主演の2人のやりとりや関係性、そしてなんと言っても料理がどれも魅力的。
そして2021年の顔の一つと言っても過言ではないのが「東京リベンジャーズ」。原作、アニメ人気を経ての実写映画化ですが、キャラがどれもハマっていて原作ファンでも違和感なく楽しめる作品になっていました。

 漫画家、出版業界をテーマにした作品では、SEKAI NO OWARIのヴォーカルFukaseが猟奇殺人犯を文字通りインパクトのあるキャラクターで演じきった「キャラクター」、夫の不倫を疑う女性漫画家の新作が、自分の浮気を描いているような作品だったという漫画家夫婦のブラック・コメディ「先生、私の隣に座っていただけませんか?」、廃刊寸前の雑誌を立て直そうとする編集長と彼のもとで働く新米編集者の姿を描いた「騙し絵の牙」、そしてある小説家が語る不可解な事件は現実かフィクションか?という印象的な構成で見るものを惹きつけた「鳩の撃退法」など、こちらも傑作揃いでした。

 TVドラマからの映画化で言うと、脇役として活躍する俳優たちを集めた「バイプレイヤーズ」の映画版、「バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~」ではこれでもかというぐらいのオールスター作品として完成されています。
「マスカレード・ナイト」は前作に引き続き、ホテルで起こる殺人事件を題材に、ホテルマンと警察という2つの立場の違いを描きながら仕事というものの本質を捉えています。
0.1%の壁に挑む型破りな刑事専門弁護士を描いた「99.9 刑事専門弁護士 THE MOVIE」もシリーズファンは必見の作品となっています。

 2021年はヤクザ映画復権?とでも言わんばかりに傑作が多かった気もします。
上記の「ヤクザと家族 The Family」以外でも井筒和幸監督の8年ぶりの作品で昭和から平成への激動の時代を1人のヤクザを中心に描いた「無頼」、西川美和監督が懲役を終えて出所してきた元ヤクザと彼に注目する映像作家の姿を描いた「すばらしき世界」などがありました。白石和彌監督の「孤狼の血」の続編、「孤狼の血 LEVEL2」では、役所広司にかわり主演となった松坂桃李とその敵役となる鈴木亮平がとにかく圧巻!

 サスペンス系の作品も見応えが多いものが多かった印象です。
1人は会社経営者、もう1人は裏社会の交渉人として対照的な人生を送ってきた2人の幼馴染が実行するとある計画を描いた「名も無き世界のエンドロール」、ただ幸せになりたいの一心で初めた新しい生活が思いもよらぬ方向へと進んでいく「哀愁しんでれら」では、土屋太鳳が新境地とも言えるインパクトのある役柄をこなしていました。そして、女子校生の自殺の真相を追うフリーのディレクターが家族でのトラブルに巻き込まれる「由宇子の天秤」では、真実と嘘、主観と客観の間で揺れ動くという構成が素晴らしかったです。

 時代劇では、葛飾北斎の生涯を柳楽優弥と田中泯が演じ分けた「HOKUSAI」、そして新選組の土方歳三の半生を描いた司馬遼太郎原作の「燃えよ剣」などが印象的でした。

 こじらせ系や日陰モノを主人公に置いた作品も目立っていて、綿矢りさ原作、のん主演の「私をくいとめて」では、脳内にいるAと会話して過ごすおひとり様女子の姿を描いています。ハロプロアイドルにはまった青年たちの姿を描いた「あの頃」や、同性愛の男子とBL大好き腐女子の一風変わった青春模様を描いた「彼女が好きなものは」など、個性的な作品が揃いました。

 社会の端っこで生きる人たちを描いた作品としては、ひょんなことから出会った空き巣と虐待されていた少女が不器用ながらもお互いを思って生きるさまを描いた「ひとくず」、面倒見は良いが負けてばかりのボクサーを主人公に据えた「BLUE ブルー」、華々しいはずの映像業界でほそぼそとテロップ作成の仕事をしている主人公の日々を時系列を逆転させて描いた「ボクたちはみんな大人になれなかった」では森山未來が20代~40代までを一人で演じきっています。

 地方都市を舞台にした作品では、かつての恩師のお願いで、福島県に実際にある映画館を立て直そうとする高畑充希主演の「浜の朝日の嘘つきどもと」、そして北海道室蘭市を舞台に7つの短編から構成されている「モルエラニの霧の中」などが出色の出来でした。

 他では、すっかり売れっ子脚本家の仲間入りをしているバカリズム脚本の「地獄の花園」、そして笑福亭鶴瓶に密着したドキュメンタリー「バケモン」も上げておきたいと思います。

以上、100%個人的な趣味嗜好で選んだ2021年を彩った名作映画たちのご紹介でした。次の記事では洋画編をお送りします。

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