彼女いない歴=年齢の童貞が精神科に行ったらパーソナリティ障害だった話―なぜ私は出会い系に貯金を全額使ってしまったのか―
この記事を読む前に以下の記事を読むことをお勧めします。
私は、大学2年生の冬頃から大学生活を苦痛に感じるようになり、心療内科に通院した。そこではMSPA(「発達障害の特性別評価法(Multi-dimensional Scale for PDD and ADHD」)に基づき、ADHD(不注意型)とASDの傾向があると診断された。
以下が実際の診断結果である。
この記事を読んでいる方の中には、ADHDやASDがどのようなものなのか詳しく知らない方もいるかもしれないので、ここでADHDとASDについて軽く紹介していきたいと思う。
ADHDとはどのようなものなのかについては、以下のNCNP病院(国立精神・神経医療研究センター)の記述を参照したい。
これがADHDという発達障害の特徴である。確かに小学生の頃は、授業中に立ち歩くこともあり、落ち着きが無かったような気もするが、それが現在まで続いているとは思えない。私が本当にADHDなのか少し疑問が残る。
以下は、ADHDの主な症状である。以下の9つの症状がそれぞれ(不注意と多動・衝動性)6項目以上みられて、それらが6か月以上継続し、家庭や学校など二つ以上の環境で、生活や学業に悪影響をきたしているときにはADHDの可能性がある。
この中で、私に当てはまっているように感じるものは以下のものである。
不注意
・課題や遊びの活動中に、注意を持続することが出来ない
・直接話しかけると聞いていないように見える。
・課題や活動を順序立てることがむずかしい
・精神的努力の持続を要する課題を避ける、いやいや行う
・なくし物が多い
・他の刺激によって気が散りやすい
・日々の活動の中で忘れっぽい
多動性
・手足をそわそわ動かしたり、いすの上でもじもじする
ADHDの中の不注意の症状が多く該当したため、ADHDの不注意型と診断されたのだろうが、多動性についてはほとんどの症状は該当しなかった。
続いてASDについてである。ASDとはどのようなものなのかについても、以下のNCNP病院(国立精神・神経医療研究センター)の記述を参照したい。
これがASDという発達障害の特徴である。社会的なコミュニケーションや他の人とのやりとりが上手く出来ない、興味や活動が偏るという点については自分に当てはまっているように感じる。
以下は、ASDの主な症状である。
この中で、私に当てはまっているように感じるものは以下のものである。
・会議などの場所で空気を読まずに発言してしまい、ひんしゅくを買う(ただし、この症状を自覚していたのは小学生の時のみである)
・視線があいにくく、表情が乏しい
・予想していないことが起きると何も考えられなくなり、パニックを起こす
・感覚の過敏さ、鈍感さがある(うるさい場所にいるとイライラしやすい、 洋服のタグはチクチクするから切ってしまう)
・過去の嫌な場面のことを再体験してイライラしやすい
・おもちゃを並べる、タイヤや扇風機など回転するものが好き、一人での遊びに没頭する。
・切り替えが苦手、決まったパターンと違うと癇癪を起こす、集団での活動・遊びが苦手。
確かに当てはまっているように感じる症状もいくつか該当するので、ASDの傾向があると言えるのかもしれない。
さて、大学3年生になり、私は大学生活をさらに苦痛に感じるようになり、大学を半期休学した。さらに、出会い系で知り合った女性に、新宿のバーに連れて行かれて、貯金を出会い系に使い果たしていた私は両親と支払いに行くことになってしまった。
ここで、私の精神状態を本気で心配した両親は、心療内科から大学病院の精神科に通う病院を変更するように勧めてきた。
そちらの病院ではWAISと呼ばれる主に大人の発達障害を診断する検査を受けた。以下がWAISでの検査結果である。
長々と書いてあるが、端的に言うと「発達障害の傾向は、顕著に見られない」という結果であった。
一方では、発達障害であると言われ、他方では、発達障害ではないという結果が出たのである。同様の結果が得られず、私は困惑した。
とはいえ、発達障害ではないという検査結果を受けた私は、健常者枠として今年の3月から就職活動を始めた。しかし、結果は内定ゼロであった。恋愛経験ゼロ内定ゼロの22歳男性の誕生である。
自暴自棄になった私は、5月中旬から就活を止め、趣味や食事にも気が向かず、一日中寝たきりのような生活になっていった。
そんな中、知人からQEEG検査という発達障害の診断を行う検査があるという情報を得た。QEEG検査は、アルファ波やベータ波、シータ波、デルタ波など、周波数ごとの脳波を測定し、得られたデータを、ディープラーニングを用いた人工知能によって解析し、脳の状態を統計学的に把握することにより、症状を客観的に診断するという検査法である。主に「グレーゾーン」と呼ばれる発達障害の特性がありながら正式な診断には至らない患者に用いられるような検査のようである。しかし、この検査は「怪しい」や「医学的根拠が薄い」などの批判もあるようだ。
半信半疑ではあったが、私は藁をもすがる思いでQEEG検査を受けることにした。QEEG検査は20分程度で終了し、その日のうちに検査結果が出た。以下がその検査結果である。
正直、図の見方は全く分からないが、端的に言うとASDであるという結果だった。
ここで、3つの診断結果をまとめてみよう。
MSPA→ADHD(不注意型)、ASD
WAIS→ADHDでもASDでもない
QEEG検査→ASD
いわゆるクリニックで受けた検査(MSPA、QEEG検査)では発達障害という結果だったが、大学病院の精神科で受けたWAISのみが、発達障害ではないという結果であった。
これらの結果から、私はやはり何かしらの発達障害ではないのかという疑念が生まれ、健常者枠での就職は難しいのではないかと感じるようになった。
これらの検査結果を持って、大学病院の精神科を訪ねた。そこで「私は、やはり発達障害なのではないか、健常者枠での就職は難しいのではないか」と担当の医師に訴えた。
すると医師にこう返されたのであった。
「あなたは、発達障害の可能性は少ないと思います。あなたに診断名を出すとしたら回避性パーソナリティ障害です」
なぜ今まで教えてくれなかったのか疑問が残るが、その医師曰く、私は回避性パーソナリティ障害らしい。発達障害ではなく、パーソナリティ障害だったのだ。
さて、「回避性パーソナリティ障害」という障害は初めて聞く方がほとんどではないだろうか。回避性パーソナリティ障害とはどのようなものなのか、以下を参照して解説していきたい。
そもそも、回避性パーソナリティ障害とはパーソナリティ障害の一種である。つまり、まずはパーソナリティ障害が何なのかについて知らないといけない。
また、パーソナリティ障害は10つに分類でき、分類によって「〇〇性パーソナリティ障害」と診断される。
私はC群の回避性パーソナリティ障害であると診断された。回避性パーソナリティ障害については、以下を参照して解説していきたい。
私は、初めて「自分はこれに違いない」という確信を持った。書かれている症状全てに私が当てはまっていると感じたのである。ADHDやASDにも自分に当てはまると感じる点はあったが、全てが当てはまっていたわけではない。だが、回避性パーソナリティ障害はまるで自分のことが書かれているかのように感じたのだ。
私が出会い系に貯金を全額投じた奇行も、回避性パーソナリティ障害特有の行動原理で説明できる。回避性パーソナリティ障害の患者は、恋愛における人とつながりたいという欲求が人一倍強いが、好意を持たれているという確信がないと行動できないという特徴がある。この特徴を持った回避性パーソナリティ障害の患者にとって、出会い系は絶好のツールなのである。
そもそも出会い系に登録している人は、出会いを求めて登録しているのだから「出会い目的」でのコミュニケーションが前提になっている。なので、「出会い目的」でのコミュニケーションを拒絶されるリスクがない。さらに、異性から「いいね」がもらえれば、「この人は自分に好意がある」という確信を得られる。好意を持たれているという確信が得られるので、回避性パーソナリティ障害の患者は、現実世界よりもスムーズにコミュニケーションができる。そして、出会い系は現実世界でのコミュニケーションではないため、たとえ失敗したとしても現実世界への影響はない(現実世界の知人に嫌われるよりは、出会い系の見知らぬ人間に嫌われる方がまだマシということである)。出会い系にはこのような特徴があることから、回避性パーソナリティ障害の自分は出会い系の沼にはまってしまったのではないかと考えられる。
これらの経験を通して、私が感じたのは「いい歳して恋愛経験が無くて苦しんでいる童貞は、風俗に行く前に、精神科に行ってみるのも手ではないか」ということである。それは、恋愛経験のない人間が感じている世界と、恋愛をしている人間が感じている世界が違っているせいで、恋愛が上手くいっていない可能性があるのではないかと感じるからである。それは発達障害によるものかもしれないし、パーソナリティ障害によるものかもしれない。はたまた、うつ病などの精神疾患によるものかもしれない(事実、精神科を受診するパーソナリティ障害の人は、他の精神障害を併発している場合が多い)。また、パーソナリティ障害は10代後半から20代前半の時期に発症し、10人に1人の割合でパーソナリティ障害があると見られている。決して珍しい障害ではないし、苦しんでいる若者も多い。
以上のことから、私は「童貞の中には何かしらの精神の問題で恋愛が上手くいっていない者が少なからずいるのではないか」という仮説を立て、「いい歳して恋愛経験が無くて苦しんでいる童貞は、風俗に行く前に、精神科に行ってみるのも手ではないか」と提言するのである。童貞の精神疾患の有病率を調べたデータなどおそらく存在しないので、以上で私が述べたことは仮説でしかないが、恋愛がうまくいかずに悩んでいる童貞の方は精神科を受診してみて、自分の精神を専門医に客観的に診断してもらうのもいいのではないだろうか。
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