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幽霊さん
恥ずかしながら、生粋のビビリ体質なもので、怖いものがたくさんあります。
まず死が怖い。生活習慣病が怖い。この間の健康診断の結果が怖い。ここ数週間マンションにたまに来るカラスが怖い。
お金が怖い。株が怖い。某宗教団体の勧誘が怖い。アム○ェイの勧誘が怖い。女の人が怖い。まんじゅう怖い。サウナが怖い。水風呂が怖い。寝るのが怖い。まんじゅう怖い。Twitterのタイムラインに流れてくるちょっとエッチなイラストが怖い。ビールが怖い。まんじゅう……。
途中からなぜか好きなものリストに切り替わってしまった気がしますが、とにかくいろんなものに恐れをなしているのです。
かといって、多く人が怖がるものなのに、自分はわりと平気、というものもあります。
たとえば、世界で最も恐れられている爬虫類として名高いGキブリさんに出会っても、表情ひとつ変えずに静かに向き合える。別に仲良くなりたいわけではないので、即刻Dieしていただきますけれど。
あと、遊園地の絶叫系アトラクションも平気で、初めてディズニーランドのスプラッシュマウンテンに乗った時も、最初から最後まで菩薩のように落ち着いていました。同行していた後輩に「ちょっとはリアクションしてください」と怒られた。
紫の鏡という言葉を18歳くらいの頃から覚えているのにもかからわず、20歳で死ななかったので、家の鏡がある日いきなり紫になっても怖くない。たぶん。
自分がある日いきなり毒虫になっても、ちょっとイヤではあるけど、まあ自分なんぞグレゴール・ザムザさんと同じ果て方をするのがお似合いだと受け入れる。たぶん。
自分がある日いきなり虎になっても、日頃から臆病な自尊心と尊大な羞恥心に侵されているのだから仕方がないと受け入れる。たぶん。むしろ、毒虫はイヤだけど、虎はつえーしかっけーので喜ぶかも。マインドが14歳なので。
きっと、恐怖にも自分の中での区分けがあって、リアルな現象は怖いものの、エンターテインメント性が高かったり、そのもの自体はイヤではあるけどよく考えたら怖いと思う対象ではなかったり、そもそも何が怖いのかわからないのに他人が恐れるので合わせているだけだったりするものは、脳内の怖いものフォルダに入らないのです。
だから、怪談なんかもボーッと聞き流してしまい、まあどうせ都市伝説だろ、くらいにしか感じません。ネットで有名な、きさらぎ駅の話も、面白いとは思うけど恐怖はない。
別に俺はオカルト耐性つえーぜ自慢ではなく、本当に特になんの感想も持たないのです。損をしている気さえする。
昔、ネットで心霊スポットについてググッたことがありますが、不気味ではあったけど、それだけで終わり。
よく云われる、梅田の泉の広場や千日前のビックカメラがある場所にも、平気で何度も行っていて、もちろん幽霊さんに会ったことは一度もない。
一度でもうっかり姿をお見かけしてしまったら怖いのかもしれませんが、人のいない夜にしか出てこないのなら、実はあちらもなかなかの小心者で、物凄い人見知りなのでは?という疑問も浮かびます。
スーパーマリオのテレサみたいに、こっちが振り向いた瞬間に、慌てて顔を隠しているのかも……。
そして、こっちが背を向けた途端に、テレサのごとくイキった表情で後ろからプレッシャーをかけてくる。
そういう、ちょっとコミュニケーションがめんどくさいタイプのかまってちゃんの可能性もあります。職場では暗いけど、意外とプライベートではヒトカラとか好きだったりして。
そういう相手なら、自分と気が合ったりするかもしれない。でも問題は、どう声をかけたらいいかわからんということだな。
初対面で「幽霊の仕事ってどうすか?やっぱ自粛やらなんやらで夏休みに肝試しとかしなくなって業績キツいんすか?」とか訊くのも踏み込み過ぎだろうし、「ぷらーなです。ドラえもんと銭湯が好きです。普段は世を忍ぶ仮の姿ですが14歳です。見た目は大人、頭脳は中学生」などと自己紹介してガン無視されてスベったら凹むので、やっぱり会っても見ないふりしよう。
という妄想をいつものようにしていた昼下がり、駅のトイレに駆け込んだところ、個室しか見当たりませんでした。そう、間違えて女子トイレに入ってしまったのです。
それはもう恐れ慄きました。花子さんに怒られる。いや、花子さんだけじゃなくて生きている人たちにも怒られる。こういう、日常に潜んでいる罠こそがいちばん怖い。ただ単に不注意なだけだが。
サウナはたのしい。