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探偵事務所(的ななにか)をかまえたい

探偵になりたい。

などといえば、コナンくんや金田一少年、あるいはシャーロック・ホームズ師匠&ワトソンくんや明智小五郎さんに憧れているのかと思われそうですが、別に類稀なる観察眼とか、親族から受け継いだ明晰な頭脳とかが欲しいわけではありません。

だって、めんどくさそうだし。

「じっちゃんの名にかけて」と人前で言えるくらいにじっちゃんが尊敬できる人物だったらば良い。

しかし、そのじっちゃんが、とてつもなく意地が悪く、家族じゅうから嫌われている人で、後に孫がエッセイ漫画を描くときには彼の存在だけ消されて、心の俳句を詠むのが趣味の、友蔵とかいうめちゃくちゃ孫に甘い架空のおじいちゃんを代わりに出すくらいの荒れた家族関係だったらば、どうするんだと。これはさくらももこさん宅のじっちゃんのことだが。

だいたい、じっちゃんが有名探偵であることが世に知られている時点で、親の七光りとか言われがちだろうし、現実的に考えれば、はじめちゃんみたいに真っ直ぐな青年には育たない。

しかも、それなりに親しい同級生が絡む殺人事件をいくつも見てきており、まともな神経ならズルズルと擦り減って、もうどんな凄惨なニュースを見ても何も思わなくなり、いっそ誰か殺してくれという精神状態に陥ってしまいそうでこわい。

たとえとてもかわいい幼馴染みの美雪ちゃんがいようが、彼女もまた死体に見慣れすぎてサイコパスになっている可能性が大である。そうなるともう誰も信じられない。

なので、そういう、凶悪な事件に近づいたり、死体や血をよく見たりするような種類の探偵になりたいわけではない。

だいたい、あんな探偵はあくまでフィクションのものである。今どき、子供だってそんなことは知っている。

むしろ、今の子供のほうがよっぽどよく知っているはずである。コナンくんは高校生探偵の工藤新一が黒ずくめの男たちに薬を飲まされた果ての姿であるという事の顛末を、毎週のようにWANDSの曲とともに聞かされて育っているのだから。

探偵は危険な職業であるし、世界が終るまでは離れることもない。あ、これは違うアニメだったし、30代以上じゃないとわかんないやつだ。

ちなみに説明しておくと、世は令和だというのに、今のコナンの主題歌はWANDSなのですよ。ボーカルは昔と違う若い人だけど。

それはさておき、実際のところ、探偵になりたいというのは方便である。正確にいえば、探偵事務所的ななにか、を構えたいのである。できれば、郊外の古ぼけたビルの一室が良い。看板などは一切なく、端から見れば、ただの空き部屋にしか見えないような。

電話番号は非公開、宣伝も事務所側からすることは全くなく、ホームページや公式SNSなんてもちろん皆無。過去の依頼者からの口コミのみ。知る人ぞ知る、そんな探偵事務所(的ななにか)。

殺人事件とか浮気調査とかの依頼はいりません。だって、リスク高そうだし、犯人に逆恨みされたらこわいし。

そういうのは毛利探偵事務所か、ジョディさんとか赤井さんとかいう人のところに行って交渉してみてください。現役のFBI捜査官の方なので、きっとなんとかしてくれますよ。たぶん。

難しそうな依頼はすべてお断りします。そうですね、落とし物さがしの手伝いとかがいいですね。あと、部屋の掃除の手伝いとか、引っ越しの手伝いとか。……それはもはや便利屋稼業ですな。

便利屋という職業は実在するし、アルバイトも募集していたりします。以前にたまたま貼り紙を見た時にはびっくりした。フィクションの世界にしかないと思っていたので……。

実際の便利屋になるには、いくつもの資格を持っていないと難しいらしく、それだけ資格があるのなら他の職業に就いたほうが稼げるのでは?というパターンがほとんどのようです。

普通自動車免許、書道2段、漢検2級、英検準2級が私のすべての資格ですが、免許はオートマ限定でペーパードライバーだし、英語は読み書きはそれなりだが、会話は全くできんので、便利屋に於いてもしょぼいことしかできない。

しかし、それで良いのです。しょぼい便利屋でしょぼい起業を始めよう。ほとんど趣味なので、やる気のある日だけ開ける。やる気のない日はやらない。

といっても、あらゆる物事に対して、私のやる気が漲っている日なんて月の半分にも満たないので、たぶん月の半分以上は事務所は閉まっているでしょう。

当然ながら儲かりはしない、それどころが利益が出ないでしょうが、依頼料は依頼主が出すと言えばもらうけど、こちらからあえて請求することはしない方式にしようと思います。

依頼の重さごとに料金の設定を考えるなんてのはめんどくさいし、客に高すぎるとか文句を言われるのもだるいですからね。

でも、依頼をこなしたらそれなりに疲れるだろうし、ボランティアでやるわけではないので、それなりのご褒美は欲しいかな……。

そうだなあ、ごはんに連れていってもらうのはどうだろうか。なにかを解決してあげる代わりに、メシを奢られる……。あれ?それどこかで見たことがあるような気がする……。プロの奢られヤー……?

でも、あの方みたいにホームを持たない生活がしたいわけではなく、事務所は欲しいんですよね。どうすれば探偵っぽい事務所がかまえられるのだろうか。どうすれば探偵にならずに探偵っぽいことができるだろうか。誰か解決してほしい。

たぶんそれはコナンくんにも無理……、「バーロー」とだけ言われて終わりそう。

でも、金田一少年は言っている。

そうして無様に生きるほうが、カッコつけて死ぬより100倍カッコ良く見える時だってあるんだぜ?

今日も無様に妄想しながら、職場のクーラーのフィルターを掃除しました。いつか探偵事務所をかまえたら、クーラーも自費で買わないとなあ。

サウナはたのしい。