夏の夜にgkbrさんを憐れむ

夏も深しという感じでして、地域によっては日中の気温が40℃に達するところもあるそうで、水中、それは苦しいの『ヘイ!40℃』を口ずさみたくなってくる今日この頃。

水中、それは苦しいというのは3ピースバンドです。代表曲は『安めぐみのテーマ』であり、タイトルのとおりに、タレントの安めぐみさんについて歌った曲です。

1981年12月22日生まれ、東京都出身、山羊座のA型。身長158センチ、体重はナイショ。スリーサイズは上から85・58・85。夏休みは安めぐみ……。

なら良かったのですが、残念ながら我が夏休みは7月の初頭に有給休暇をいただいてしまったせいでもうないし、安めぐみさんも安田美沙子さんも安田大サーカスも来ません。

その代わりにやってくる素敵なゲストの方はというと、ですね。

あのね、皆様のお家にもすでに来られているかもしれませんよ?

うちだけは大丈夫だなんてことはないのです。あんたの家の米は腐っている。テレビの前の良い子のみんな、おまえを○す。……これは、かつてROLLYさんが『笑っていいとも!』に出演された際に披露してスベってしまったブラックジョークですね。

夏場の米は早めに消費した方がいいのは確かでしょうが、そう簡単に腐りはせんだろうし、今時の良い子は、テレビではなくスマホでキッズラインのユーチューブ動画とかを視ているでしょう、たぶん。

ただ、あいつにだけは気をつけなければならない。あいつはどなたの家庭にも現れる。黒く光るグラマラスボディと、激しく床や壁面で揺れるビウィッチングプレイで、我々のピュアなハートを奪ってくるあいつ。主に台所で奪ってくるあいつ。

意味もなくめちゃくちゃもったいぶってみましたが、うちにその、有翅虫のあいつが来ました。イキってゆうしちゅうなどという理系な言い方をしましたが、正式名称はもっとキャッチーです。

しかし、この正式名称を文字で見るのも嫌だという方も多いと思うので、あえて書きません。ただ、有翅虫は他にもいっぱいいて紛らわしいので、そうですね、gkbrという表記としましょうか。

こう書くと、ひとむかし前のインターネットスラングっぽいですね。ガクブル。そのgkbrさんが本日のお客様です。テケーッテッテッテーテテン。あ、なんですか?来月に公開予定の主演映画のポスターですか?ディレクターくんこれ後ろに貼っといて。

んなこたぁない。gkbrさんは無言で来られました。んなこたぁないがタモリさんのネタなのはもう現代の若者には伝わらないだろうか。そもそも、あのネタはほとんどいいともでしか言わなかったんじゃなかろうか。

Mステやトリビアの泉で、タモリさんがんなこたぁないって言っているのを見た記憶がないもんなあ。

あ、トリビアの泉ももう20年くらい前になっちゃうのか。いや今回フィーチャーしたいのはあくまでゲストのgkbrさんなので、タモリさんにはいつもどおりにミュージシャンと温度の低いトークをしていただくとして、gkbrさんについて話します。

といっても自分はそこまで苦手というほどでもなく、素手ではちょっと抵抗があるものの、タオルやティッシュ越しでならフツーに触れますし、見かけた瞬間に悲鳴を上げるようなこともない。

ただ淡々とブラックキャップを撒いて、とりあえずベッドに入って、明朝までにはどこかに旅立ってくださいなとひっそりと願うのみである。それでダメだったら、次に薬局に行った時にもっと強力なやつを買えばいいだけ。

しかし、このような冷静な態度を取れるのは、現代に駆除剤や殺虫剤があり、gkbrさんがそのうち消えていくことが、ある程度は確約されているからである。

これがもし、戦国時代の城だったらどうか。

旅行などで城を見るたびに、ああ、あんなクソデカ建造物を自分の家にしてみたいものだと思うのですが、考えてみれば、堀で囲っているので水気が強いし、周囲は基本的に草叢だしで、虫が入り放題である。

昔はブラックキャップもアースジェットもないし、ひっぱたくための新聞紙もない。なおかつ、今ほど人々が衛生管理に気をつけていたとは思えず、トイレも汲み取り式で、うっかり便器の下に落ちてしまえば糞尿まみれという修羅の時代であろう。

銭湯が普及する江戸時代までは、風呂は毎日のように入るものではなく、主に水浴びなどで身体を流して汚れを落としていたのだそうですが、これに使う水だって、川から汲んできたもので、今みたいに濾過された浄水ではなかろうし、雑な性格の人だったら川に飛び込んで洗ったりもしていたのではなかろうか。

少なくとも、今よりはみんな汚いはず。織田さんも豊臣さんも、家康さんも慶喜さんもみんな汚い。乱太郎もきり丸もしんべヱも土井先生も汚い。なんかあんまり考えたくない話になってきたな……。きたな……。

そんな環境下では、gkbrさんなんか入り放題であろう。

忍術学園の学園長が夏休みボケで袴の履き方を忘れてしまったというギャグがあったが、そんな不潔な爺さんが住み着いているのだからなおのことである。ヘムヘムも頷いている。

余談だけど、アニメではあれだけマスコットキャラクターっぽい扱いでありながら、原作にはヘムヘムは出てきません。ゼニの花は白い号というヘムヘムのモデルになった犬はいるが、ヘムヘムとは鳴かない。

ここでひとつ思い付いたのですが、もしかして、ヘムヘムがgkbrを退治しているのでは?という想像に行き着いた。

猫ならたまにあるけど、犬が虫退治なんてするのか?とも思うが、ヘムヘムは一般的な犬ではなく、忍犬である。忍犬とは、忍者が従わせている犬のことであり、主の忍者と同様に忍の心得を持っており、訓練されている。ちなみにナメクジの場合は忍ナメという。

普段から学園長に細かく躾けられていて、ふつうの犬ではできないようなこともやってのけてしまうヘムヘムのことである。gkbr退治など、寝ながらでもできるのかもしれない。

まあヘムヘムはフィクションの存在ですが、江戸時代の徳川家にもそういう訓練された番犬のような存在がいて、そいつがgkbrを追っ払っていたという知られざる歴史も、もしかしたら、……?だから綱吉さんは犬を大事にし、生類憐れみの令を出したのではなかろうか。

しかし、ちょっと調べてみたところ、生類憐れみの令は最終的には昆虫類にまで適応されたらしい。ハエや蚊を殺して罰せられた事例もあったというので、たぶんgkbrさんも対象でしょう。

そのような不毛なことばかりを考えながら、暑い夜は更けていく。明日にはgkbrさんたちがいなくなっていることを願って。

私は綱吉さんをわりと推しているので、できるだけ生類を憐れみたいのです。だからさっさとどっか行って。頼むからどっか行って。

サウナはたのしい。