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左腕が疼いた夜

例のアレのワクチンを接種してきました。これで2回め。

1回めの接種ではミリも副作用がなく、残念ながら5G回線が体内に流れることもなく、注射された左腕が「力」を持ってエグリゴリの本部に乗り込む運命にもならず、拍子抜けするくらいになんともなかったので、2回めもまあそうだろうと思っていました。

実際、当日の夜までなんともなかったし、翌朝もなんか身体が重いかなあ、程度。

……はっきりいってナメていた。

昼になって唐突に倦怠感が襲ってきて、熱を測ると37.8度。

中には39度や40度まで上がる人もいるみたいなので、数値で見ればたいしたことはないのですが、ここ数年は風邪も特にひいたことがなかったので、人間が高熱になるとどういう状態になるのかを完全に忘れた身体にいきなりの灼熱。

なにこれ。熱が出るってこんなしんどいことなの?しかも風邪と違って、咳やくしゃみは全く出ない。

咳やくしゃみは身体から菌を追い払うために出てくる現象なわけですが、それがないので治る時間が来るまで重い怠い身体のまま、何もしないでじっと待っているしかありません。

そんなわけで、この日はただただ布団の上で横たわっているしかなく、なんとか冷蔵庫から取り出した岐阜の天然水2リットルボトルを脇に置いて、できるだけ楽しいことを考えようと、邪眼を使って今までに訪れた銭湯の水風呂をひたすら脳内再生して乗り切りました。いいユメ見れたかよ。

夕方になってきてからは少しマシになってきたのですが、今度はなんか左腕がすげえ痛てえ。

今度こそARMSを移植されたか?あるいはスネークジェノサイドが使えるようになったか?とちょっと期待したものの、どうやらそうではないらしく、2回めの接種の後は多くの人がこうなるらしい。

そういえばそんな話をどこかで聞いたけど、自分には関係ないと思っていました。そういうのがいちばん良くないですね。

つーかマジで痛てえ。まあこれはあくまで抗体を体内で作っているということなので、ARMSの一種なのだと無理やり思い込んで再び布団へ……。

あ、さっきから誰しもが知っている前提で書いていますが、『ARMS』というのはむかし少年サンデーで連載されていた漫画です。秘密組織に左腕を改造されます。

その後はなんだか寝たり起きたりを繰り返し、夜なんだか朝なんだかわからない時間が延々と流れ、やはり邪眼で水風呂を映し出して心を落ち着かせていました。

えー、さっきから誰しもが知っている前提で書いていますが、邪眼というのはかつて少年マガジンで連載されていた『Get Backers-奪還屋-』という漫画の主人公の能力です。1分間だけ幻影(ユメ)を見せることができます。

永遠のような時間を過ごし、起きたらなんかとても心地良い感覚がしました。

これはアレだ……。水風呂から上がって浴槽の縁で呆けているときの感覚……。「ととのい」である。単に平熱に戻っただけなのですが。

もう邪眼を使う必要もなく、汗まみれの身体を2日ぶりのシャワーで洗い流し、恐ろしく臭くなった布団を干して、ああ健康って実にいいなあと思いました。

これからワクチンを打つという方は副作用に対する不安もあると思いますが、少なくとも自分および周りの人はみんな1〜2日で自然に治っています。

そうなると今度は、あの左腕の疼きが懐かしくなってくるのですが……。ああ特殊能力が欲しい。俺はまだ諦めていない。

サウナはたのしい。