ケチの遺伝子【忘れ去られた自己肯定感】 1
美鈴1
私は美鈴。
私は自分で言うのもなんだが、
かなりケチだ。
だって節約しなきゃ生きていけないもん。
派手にするのは嫌い。
化粧なんて絶対したくない。
洋服は割引のものを探す。
地味な色が一番いい。
だって合わせるのを悩まなくて済むでしょ。地味な色はたくさん作ってるから、
売れ残る事が多い気がしてる。
だから私には丁度いいんだ。
助かるー。
最近半額で買ったグレーのブラウス。
ボタンの回りが金色なのよねー。
少し派手。
この前会社に着て行ったら、
チラチラ見られたから、
やっぱりまずかったかなー。
でも、これくらいいいよね。
なんか言われたら、
着ていくのをやめようかな。
私のルーティンは、
毎晩8時ごろ近所のスーパーを回るのが日課。明日の弁当のおかずを買うためだ。
でも、散歩も兼ねている。まぁ、自転車のことが多いけど……
食べ盛りの息子と、彩りを気にする娘、
そして仮契約しかしてくれない会社で食べる私の弁当だ。
【お惣菜安くなってるかな?割引シールついてる…けど、3割引か……もう少し待つか……】
【あートマト高いなぁー。人参じゃだめかな?人参でいいよね!】
【イチゴとか誰が買うんだろう、イチゴの旬は冬じゃないよ。旬のものを食べなさい。みかんにしよう、みかんみかん!】
【うーん、肉高っ!割引の肉はもう無くなってるか……来るのが遅かった、失敗失敗】
【あっ、あの人のカゴの中に、半額の肉が入ってた……しまったー、タッチの差だったなぁー。今度は負けないぞ!】
毎回私の頭の中で、
こんな独り言が繰り返されている。
この夜のスーパー巡りと頭の中の独り言は、結構気に入っていて、私一人だけの楽しみになっている。
今の悩みは、何度も申し込んでいる公団に当たらないということ。
母子家庭なんだから、優遇されてもいいはずでしょ。
もうムカつくなぁー。
だいたいこの給料でどうやって生きていけっていうのっていうのよ。
もうすぐ、下の子が受験。
はーぁ、どこでもいいから公立に受かってよ!!
私立は制服が高いからね。
入学金だって、最初は払わなくちゃいけないんだから。
はーぁ、そんなお金がどこにあるのよ。
とりあえず早く終わって欲しいなぁー。
塾も冬休みだけ行かせる事にした。
それでもちょー高い。
難しいところを目指さなくていい。
受かるところを受験してくれたら、
それでいい。
そう3者面談の時も先生に言った。
そしたら泣かれた。
悪いとは思ったけで、
今言わなくちゃ、と思って、
先生に家庭の事情も伝えておかなくちゃと思って言った。
でも、悪いことしたなーと思ってる。
下の子を見てると虚しい。
昔の自分を見てるような気持ちになるから。
あの灰色の時代をやっと抜け出して大人になったはずなのに、下の子を見てると思い出してしまう。
つづく
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